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146話 黒い死神

「嘘、でしょ……」


 誰かが唖然と呟いたその声がやけに大きく響く。

 一際豪華な王国軍の天幕、そこにいるのは王国の広告塔(プロパガンダ)としての役目も担う若き17人の勇者達。


 王国軍にとって一大戦力と言える彼らがこの様な後方にいるのは開戦前の状況によるところが大きく。

 敵の5倍の戦力、王国軍の上層部が態々勇者達を前線に置く必要は無いと判断したのは至って当然の成り行きだった。


 5倍もの戦力差があれば多少の犠牲は免れないが、その圧倒的な戦力差に絶望して多くの敵兵が降伏する事だろう。

 ただし、それは本当に()()に5倍もの差があればの話。


 王国軍の将校達は見誤ったのだ。

 世界最強の軍事力持つ帝国が誇る最高戦力を、ネルウァクス帝国の頂点に立つ10人の実力を。


 そして、その誤りは如実な事実となってのしかかる。

 即ち、1万と言う1師団の消滅と言う信じ難い現実が……


「あんなの、俺たちでも対抗出来ないんじゃ……」


 あまりの出来事に勇者達でさえも、ただ唖然と見つめる。

 しかし、現実は非常。

 戦場で愕然とする彼らを待ってはくれずに、戦況は動き始める。


 最前線にて1万の王国兵を文字通り消滅させた十剣の2人が踵を返し、自陣の中に戻って行ったのだ。

 その事実に、王国兵達が安堵と共に疑問を抱く。


『何故、十剣は引いたのか?』


 あれ程までに圧倒的な力があるのならば、そのまま王国軍を蹂躙すればいい。

 それにも関わらず、十剣の2人が引いたのは何故なのか。

 普通に考えれば答えは1つ……


「恐れる事はない!

 あれ程の攻撃を放ったのだ、奴ら十剣は既に限界だろう。

 数の優位は未だ我らにある、全軍をもって帝国の者共を蹂躙するのだっ!!」


 勇者達の天幕と隣接している立派な天幕。

 5万と言う一軍を率い、帝国との戦いの先鋒を任せられた将軍が、浮き足立つ全軍に向かって檄を飛ばす。


 若く烈火の如き勢いを誇る若き将軍の檄を受け、折れかけていた王国軍の士気が大きく跳ね上がる。

 1師団クラス、1万の軍勢を失ったが、それでもまだ4倍の差。

 十剣を欠いた帝国軍1万などに負けるはずが無いと。


「4つの師団による波状攻撃を開始せよ!

 我らには勇者殿方がついている、神の加護は我らにある。

 我らの力を奴らに見せつけてやろうではないか!」


 将軍の言葉に王国兵が沸き立ち、沈み切っていた士気のボルテージが上昇する。


「アレサレム王国に勝利をっ!

 ネルウァクス帝国軍を蹂躙せよっ!!」


 地面を揺るがすような怒号が戦場に響き渡る。

 全軍を奮い立たせる、5万の軍勢を率い帝国戦との先鋒を務めるに値する実績と才能に溢れた若き将、彼は紛れも無いカリスマと言えるだろう。


 士気は限りなく高く更には4倍もの兵力差を持って王国軍の波状攻撃が開始される。

 王国軍の勢いは凄まじく、王国軍の将校達はこのまま帝国軍を蹂躙するだろうと、心に余裕が生まれて笑みが浮かぶ。


 勇者達も同様であり。

 十剣によって1万もの死者が出た今、既に帝国兵の多くを殺さずに捕虜にする事は不可能だと理解している。


 王国軍の勢いは既に止められるはずもなく。

 十剣を欠いた帝国軍は蹂躙され、多くの死傷者が出るだろう事実に、顔色は優れない。

















 しかし、アレサレム王国は知る事になる。

 ネルウァクス帝国軍が各国から〝黒い死神〟と恐れられている理由を。


「バカ、な……」


 唖然とそう呟くのは王国軍を率いる若き将。

 彼の視界に映る光景。

 圧倒的な数と勢いで帝国軍を蹂躙すると思われた王国軍が堰き止められ、地に倒れ伏す王国軍の姿だった。


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