表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/133

レイセン=ボアールの絵

 教室を出る時、クラスメートが無感動な目でタクを見つめていた。


 ピエロは顔の半分を血に染まった包帯で覆い、

 タクを殺したくて殺したくてしょうがないような憎しみに歪んだ顔で

 睨んでいる。


 けれど、今のタクにとって、そんな小さなことはどうでもよかった。


 ミアの胸にもう一度、顔をうずめたい。

 ミアの胸を吸いたい。

 ミアのパンツを脱がせたい。

 ミアのあそこにアレを沈めたい。

 そして、

 ミアをイカセタイ。


 タクはミアに引っ張られるままついて行った。

 その間、タクはずっと、足元を見つめていた。


 俺の足ってこういう風に歩くんだ。

 右、左、右、左、

 なんて、おかしいんだ。

 

「へへへへへへへへへ」


 タクは笑わずにいられなかった。

 廊下をしばらく歩き、階段を上り下りし、

 どこかの扉を入った。

 そして、ミアはある壁の前で立ち止まる。


「ああ・・・、どうしたんだい?ミア・・・俺の体液で汚させてくれるのかい?」

「それはもう少し後ね。ねえ、これを見て」


 目の前には絵が飾ってあった。

 そこには部屋が描かれている。

 コンクリートの部屋。

 中心には木の椅子が一脚だけ、ぽつりと寂しそうに置かれていた。

 子供の、落書きのような絵だった。


 部屋に飾られている他の絵に比べると、

 目の前に飾られている絵は明らかに貧相であり、異質でもあった。


「この絵はね。レイセン=ボアールが描いた絵なの。彼は生きている間にたくさんの作品を描いたけど、時代のせいで全く売れなかった。それでもね、彼は描き続けたの。これを見て」


 ミアは絵の中心に描かれた椅子を指す。


「彼はね。ずっと待ていたのよ。この椅子に座ってくれる誰かをね。だけど、そんな人は現れなかった。この作品は彼が死の間際に描いた作品なの。私はこの作品を見るたびに、彼の声が聞こえるの『懸命に生きてきたが、自分の人生は結局のところ空っぽだった・・・孤独だった』とね」

「そう、なんだ」

「でね、たまにあるのよ。魂を捧げた作品に意思が宿るってことが。この作品には、レイセン=ボアールの魔力が滲み出ているの。だからね・・・」


 ミアのイヤリングが不気味に輝く。


「タク、しばらくあなたはこの中でいい子にしていてちょうだい」


 ミアはタクの両肩をつかみ、絵に押し付けた。


「え?なんだ、なんだよ、これ!!」


 絵から何本もの手が伸び、タクの体を掴む。

 

「ふふふ、その中で、少しだけ待っていて欲しいの。そうすればあなたは、あなたを縛る呪縛から自由になれるのよ」

「お、おい!!ミ、ミア!!」

「大丈夫よ。ほんの少しだけだから」


 ミアはタクの頬を優しく撫でる。

 タクの体は、絵の中に吸い込まれてゆく。


「ミア!!」

「また、あとでね」


 ミアはタクの唇にそっと口づけした。

 甘くうっとりとするほどの口づけに、タクが気をとられた次の瞬間、

 タクは絵の中に吸い込まれていった。


 ミアは絵の中にタクが描かれたのを確認すると、その場を後にしようとした。


 グラリ。


 突然、ミアはよろめき、膝をついた。


「はあ、はあ、はあ、・・・ふふふふふ、ルルーシカ待っていなさい。あなただけは絶対に許さないんだから・・・ぐっ!!」


 ミアはこめかみを押さえながら、

 ゆっくり立ち上がり、再び歩き出した


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ