あんたは、私の〇〇よ
タクは、胸の奥にじんわりとした苦々しさを感じながらも、ルルーシカに訊いた。
「俺たち、どこかで会ったことある?」
「ん? ど、どこかで会ったことあるですって!! 何を寝ぼけたこと言ってるのよ!!」ルルーシカの口から唾が飛ぶ。「あんたね、自分のご主人様を忘れてしまったというの?」
「ご、ご主人・・・様? お、俺が・・・君の?」
まさか、俺はこの女のメイドでもしていたのか?
いや、いや、男の場合は執事だろ。
「ええ、そうよ。そして、あんたは私のチート奴隷でしょうが・・・思い出した?」
ピキピキピキ、
ルルーシカの言葉にタクの抱いた美しい執事像は、
音を立てて砕け散った。
「チ、チーズ奴隷? な、なんだよ、それ」
「チーズ奴隷じゃなくて、チート奴隷よ。つまりは、とんでもなくヤバイ奴隷ってことよ。チートでかつ、奴隷。やばすぎるでしょ」
な、何を言っているんだ、この女は。
頭の中に青カビでも繁殖させているんじゃないのか?
「あの~、言っている意味がちょっと、というか、かなり意味不明なのだが」
「ちょっと、ふざけるのもいいかげんにしてよね。私たち、長いでしょ~が」
「な、長いって・・・な、何が?」
「あんたがチート奴隷として、私に仕えてからよ」
「・・・・・・」
俺がチート奴隷?
そして、こいつが俺のご主人様?
一体、何を言ってるんだこの女は・・・。
「何よ? 何よ? そんな死んだ魚のような顔をして。ほんとうに記憶を失っちゃたっていうの? よく一緒にお風呂に入ったじゃない。それによく一緒に寝たでしょ」
「え? そんなこともしたのか?」
タクは、ぐぐぐとうなり、記憶を探ろうとした。
しかし、どんなにうなっても、
頭の中に浮かぶイメージは真っ暗闇。
ルルーシカのピンクの使用済みパンツ――綿の質感だとか、皺の形だとか、クロッチのシミだとか――の記憶は引き出せても、
幼児期の、今よりももっとぺったんこのルルーシカの胸など出てきやしない。
もちろん、つるっつるの草原も。
ぺったんこ、ぺったんこ、ぺったんこ、
ぺったんこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
タクはルルーシカに聞こえないように、何度も小さく呟いた。