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意識、渦の中へ

 チャイムが鳴り、皆、自分の席に戻っていった。


「何を読んでいるんだ?」


 タクは、前の席で本を読んでいるレーラに訊く。

 黒縁眼鏡をかけていた。


「これよ」

 

 レーラは本を見せてくれた。

 黒く分厚い本だった。


 なになに・・・『魔法史の始祖たちのその後』。

 レイモンド、アイアリス著。


 表紙には金色の刺繍がされていた。

 不気味な紋様が描かれていた。


 大きな目。

 それも、一つではない。

 七つの目が、重なり合っている。

 一つ、

 二つ、

 三つ、

 四つ、

 五つ、

 六つ、

 七つ、

 と重なり合い、

 それは、まるで、真上から、14枚の花弁を持つ

 グロテスクな花を見ているかのようだった。


 タクは、その魔法文字とも、何かを表す象徴ともとれる、

 不思議な紋様を見ていると、頭がくらくらしてきた。


「どうしたの?」

「いや、別に・・・」

「そう」


 レーラは眼鏡を外す。


「・・・なあ。決闘ってどんなことをするんだ?」


 レーラは本を机の中にしまう。


「ただ、喧嘩するだけよ」

「喧嘩?殴り合いのか?」

「殴り合いの時もあるわね。大抵は武器や魔法を使っての喧嘩よ」

「それって、危険じゃないのか?」

「危険よ。けれど、それをわかったうえで、決闘をするのでしょ」

「まあ、そうだろうけど」


 大丈夫なのかよ。

 武器や魔法をつかった喧嘩?

 それって、やばいんじゃあ。


 タクはレーラの横顔を見つめた。

 白い肌に水色の髪。不揃いな前髪が、

 憂いを滲ませる目に落ちている。


 ・・・・・・え!?


 突然、タクの視界がぼやけ、レーラの横顔がグニャリと歪む。

 レーラの顔の中心にいびつな亀裂が入り、

 その亀裂を中心とする反時計回りの渦が生じる。

 その渦はまるで空間を飲み込むように広がってゆき、レーラの体を飲み込んでゆく。


「ど、う・・・し・・・・・・た・・・・・・・・・の?」


 タクの耳にノイズがかったレーラの声が聞こえる。

 タクは必死に声を出そうとした。

 しかし、

 声が出ていない。いや、タクの耳に自分の声が届いていない。

 そして、

 タクの意識は、広がりつつあるその漆黒の渦に吸い込まれていった。


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