ロケットスタート、顔面強打、そして、
ドッスーーーーン!
青年は、華麗にロケットスタートを決めるも、
床に盛大に顔面をぶつけてしまった。
「くっそ~、痛て~な・・・」青年はロケットスタートを阻んだ憎き敵を見る。「・・・・・・、な、な、なんじゃこりゃ~!!」
青年は驚愕のあまり叫んでしまうも、
すぐさま両手で口を押えた。
それは、鼻から流れ出る血をどうにかするよりも、
今は重要なことだった。
耳をすますと、
まだ、へたな鼻歌とシャワー音は続いていた。
(よ、よかった・・・、でも、どうして鎖なんかが足に絡まっているんだよ。うぎぎぎぎ・・・い、痛い。は、外れない)
青年は鎖をはずそうと何度も試みるも、
足首にぴったりと絡まっているようで、
抜こうにも抜くことができない。
(くそ~無理じゃね~かよ。くそ!! くそ!! くそ!!)
シャワー音と女の鼻歌が聞こえなくなった。
ガチャリ、と浴室のドアの開く音が聞こえてきた。
(くそ~出たのかよ・・・ぐぎぎぎぎぎ、鎖がはずれねぇ。あぁ~あ、俺の人生、短かったな。というか、いつ始まったのかもわかんね~し)
青年はあきらめに似た気持ちを抱くと同時に、
本当に、俺は何者なんだ?と思った。
この部屋に入るドアの向こう側で、女は冷蔵庫から何かを出していた。
すりガラスからわかる女の情報は、
灰色の髪、小ぶりな胸、曲線美豊かなお尻のライン、
極限まで脂肪をそぎ落とした腕と足くらいなものだった。
顔はまだ確認してはいないが、スタイルはかなりいいらしい。
ただ、小さな胸は残念だよなと思いながら、青年はクククと笑った。
かなりヤバイ状況なのに、冷静に女を分析している、自分がおかしかったのだ。
女は、落ち着いた手つきでドアを開け、
青年がいる部屋に入ってきた。
青年はすでに、この危機的状況に対する決意を決めていた。
人は追い詰められれば、何でもできる!!