レディンクロスの戦い
三限目の魔法史の教師は、極めて高齢のよぼよぼのおじいちゃんだった。
何度も同じ箇所の説明を繰り返しているので、
授業中に昇天してしまうのでは、とタクは心配になったほどだった。
「ほれ、2341年に我々は他次元にある文明から独立した地位を得たのじゃ。ごほごほ、でどこをやっていたかの~、あ~入れ歯が、入れ歯が・・・ちょっとすまんの~ハムハム」
おいおい大丈夫かよ、昇天するなよ、とタクは思った。
「おお、そうじゃ大切なことを言い忘れておった。我々の歴史では、おおよそ2400年頃に大きな時代の転換があったのじゃ。あれは何だったかの。え~とそうじゃ、誰かわかるものはおるか? 最近年じゃからのう、物忘れがはげしくてのう」
おじいちゃん先生は生徒に尋ねる。
「はい、はい、はい、僕、分かります。それ、僕、分かります」
ピエロが大きく手をあげていた。
誰も手をあげないので、おじいちゃん先生は仕方がなく、ピエロを当てた。
「はい、僕、これには自信があります。あのですね、2411年、魔法ネットにある悪質サイト『小魔法使いになろう』というサイトが、善良な人々を騙し、多額の詐欺を働いたということで、なくなりました」
「ほほう、かなりマイナーな出来事を知っておるのじゃな。そのサイトは、魔法使いになりたい人々に適切な情報を渡さずに、騙しに騙しまくって、利益をむさぼっておったそうじゃな。
うううむ、でもわしが訊きたいのはそんなクソみたいな話じゃないわい。そんなゴミクズサイトは時代に影響を与えやせん。ブームが去れば消えていくだけで、たまたま詐欺が見つかり、予定よりもはやく消えただけじゃ。はい、次!!」
もちろん誰も手を上げなかった。ピエロも、自分の発言が間違っていると指摘され、落ち込んでいるのかもう一度手をあげることはなかった。
それから、しばらくすると、前の席のレーラが小さく手を上げた。
「おや、レーラや、お主はわかるのかな。なら、答えてみい」
「2444年、レディンクロスの戦い」
レーラは聞こえるか聞こえないかわからないような、小さな声で言う。
「おお、そうじゃ、それじゃ、それじゃ。で、どんな戦いだったかのう。レーラや、わかるかのう」
「闇による支配と封印」
「うむ? そうだったかのう。うむむ・・・」
「その戦いでは、7人の闇の皇帝が、世界の支配しようと試み、7人の光の魔法使いが彼らを封印しようと試みました。
その結果、世界は分裂し、彼らの戦いの余波を受けた大陸や島々などは、私たちの世界から届かない次元に行ってしまいました」
「おう、おう、おう、それはまことか? 作り話ではないのかのう。わしはそんなことまで知らんぞ。おうおうおう」
レーラは静かに着席をした。
おじいちゃん教師はその後、おうおうおうと頭を悩ませ、魔法で取り出した資料をうむうむうむと読みふけっていた。
レーラの話は、作り話だったのだろうか?




