ジャイアントイエローゴリラ
タクが 「どちらさまでしたっけ?」と訊くと、
「もう、また忘れちゃったの?」と灰色の髪をした女は呆れたように言った。
「あん? また?」
タクは記憶を辿ると、
ろくでもないことがこの女との間であったような気がした。
「ねえ、私の名前・・・憶えてる?」
誰だったけ?
え~と・・・。
ある言葉が、タクの記憶の底から湧き上がってきた。
その言葉はタクの中で印象深かった言葉だったのだろう。
「ジャイアント・・・イエロー・・・ゴリラ」タクの声には自信があふれていた。「そうだ、お前の名前は、ジャイアントイエローゴリラだ!!」
タクはその名前を言うと、
女はニコリと微笑んだ。
次の瞬間、タクは吹き飛ばされた。
超高速で使用済みパンツが飛んできたのだ。
とんでもない重さをもった使用済みパンツだった。
「やり直しよ」女は険しい顔をして言う。「私の名前を憶えている?」
「お、おう」
タクは目をつぶり、ぐぐぐとうなった。
今度は苦々しさを伴いながらも、ある名前が出てきた。
「・・・ルルー・・・シカ」タクはその名前を口に出すと、昨日の出来事をはっきりと思い出した。そして、叫んだ。「あぁ~~~~!! お前は、昨日の!!」
「そう、やっと思い出したわけね。そうよ。私はあなたのご主人様」
「な、何で、俺、ここで寝ていたんだよ」
「何でって、あんたが勝手に出ていこうとするからよ」
ルルーシカは伸びをしながら起き上がる。
ピンク地のパジャマには、
不細工なカエルが何匹も描かれていた。
「・・・何を言ってんだよ。出ていくのは当たり前じゃね~かよ。ここ、俺の家じゃね~し」
「・・・本当に、記憶をなくしてしまったのね。厄介なんだから、もう!!」
ルルーシカはベッドから降りる。
「なに、ひき笑いトーテムポールみたいに突っ立ているのよ」
「な、なんだよ」
「ほら、早く自分の部屋に戻りなさいってことよ。遅刻するわよ」
「遅刻?」
「そう遅刻・・・うあっ!!」
ルルーシカは壁にかかった時計を見て大声を出した。
そこにはゴキブリが描かれていた。




