寝相の悪い女神様
朝の強い陽ざしが顔に当り、
タクはまぶしくて、目を覚ました。
頭が鉛のように重く、
肌のところどころがビリビリっと痺れる感じがした。
「クッソ~なんだよ、このざわつく感じ」
タクが上体を起こすと、体から毛布がハラリと落ちた。
毛布には不細工な恐竜の描かれていた。
なんだこの子供の落書きみたいな絵は。
毛布をかぶって寝ていたらしいのだが、体は冷えていた。
どうやら、床で寝ていたらしい。
「ん、ん、んんん~~~ん」
かわいらしい声がベッドから聞こえてきた。
灰色の髪をした女がベッドですやすやと眠っていた。
掛布団を足蹴りし、パジャマからはおへそが出ている。
「げげ・・・」
タクは後ろにのけぞると、壁に頭をもろにぶつけた。
ありえないことだが、鐘の音が響いた。
その音にも負けず、
タクは、「ぐおおおおおお」と頭を押さえてうめいていた。
なんだよ、ちくしょう。いて~な、おい。
誰だよこんなとこに、壁を置いたやつは。
いやいや、壁はもとからそこにあるのか。
なら、誰だよ、俺を壁の近くで寝せたのは。
「ふふふふふ、おはよう」
タクの耳に女の声が聞こえてきた。
女神様の声のように、慈愛に満ちた声だった。
タクは頭を押さえながら声の主を見ると、
ベッドで寝ていた女がタクを見つめていた。
愛らしい大きな二重の目、
柔らかそうな唇、
顔のパーツすべてが完璧なバランスで配置されており、
寝起きで多少は崩れてはいるはずなのに、見とれてしまうほどの美人がタクを見つめていた
ただ、その美人を見ていると、
なんか、いや~~~な感じを抱いた。
「どうしたの? タク」
女神様は首をかしげる。
「あの~、ぶしつけで失礼ですが・・・ど、どちらさまでしたっけ?」
タクは言葉を発してすぐに、前にも同じようなことを言ったような気がした。