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タクなのだが、タクではない誰か

 ザザザザザザザザ―――――ー。

 冷たい雨が降りつけていた。


「タク!!しっかりして!!タク!!」


 ルルーシカが目の前で叫んでいた。


 ルル・・・。

 ここは、どこなんだ?


 タクは深い深い森の奥にいた。

 樹齢何千年を思わせる木がそこかしことはえている。

 空は分厚い雲に覆われており、

 辺りは夕暮れ時のように薄暗かった。


「うっ、うっ、うっ、うっ・・・」


 ルルーシカの背後でかなえが嗚咽をこぼしていた。

 よく見ると、ルルーシカも目をはらし、涙を流していた。

 ただ、雨が二人の顔を伝い、それが本当に涙であったのかは自信がない。


 どうして、二人とも泣いているんだ?

 それに、ルルって、黒髪だったけ?

 灰色だったはずじゃあ・・・。


 タクは体を動かそうとするも動かなかった。

 地面に横たわり、仰ぐことしかできない。

 

「タク!!駄目よ!!意識をちゃんともって」


 ルルーシカはタクのお腹を押さえていた。

 よく見ると、ルルーシカもかなえも血で汚れ、

 白い制服が赤く染まっていた。


 どうして、二人とも血だらけなんだ?

 あれ?し、視界が曇ってきた。

 耳も聞こえなくなってきたし。


「タク!!タク!!死んじゃダメ。お願い。死なないで、私を・・・私を一人にしないで」


 ははは、大げさな、とタクは思った。

 と同時に、

 何か言わなきゃとも思った。

 ・・・・・・、

 だけど、何を言えばいい?


 ふと、手が動いた。

 タクの意思とは関係なく手が動き、ルルーシカの頬を優しく撫でる。


「ルル・・・」


 口から、タクの意思とは関係なく言葉が零れた。

 その言葉は、ルルーシカへの別れの言葉だった。


 おいおい、俺、何を言っているんだよ。

 縁起でもねえ。

 どうして、俺の意思とは関係なく言葉をしゃべっているんだよ。


 さらに、不思議なことに、タクは自分の声が普段よりも高い気がした。

 まるで、他人の声を聞いているような違和感を抱いた。


 そして、

 タクではあるがタクではない青年は最後に、


「―――――ーありがとう、ルル」とルルーシカに告げた。


 その言葉は、青年が最後に伝えたかった言葉ではない、とタクにはなんとなく分かった。

 なら、何を伝えたかったのかというと、それが分かった瞬間、

 タクは顔から火を噴き出しそうになった。


「嫌だ、タク!!ダメ!!タク!!死んじゃ、死んじゃ、ダメェ!!」


 青年は微笑んだ。

 次の瞬間、青年の手がルルーシカの頬を離れ、地面に落ちた。

 それと同時――――タクの視界は闇に覆われた。


 遠くのほうで、ルルーシカの悲鳴が聞こえてきたような――――気がした。



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