グミグミの物体にゴクリ
「あ、あ、あ、あ、あ・・・」
ギョロリとした目を持った、黒色の物体がタクを見つめていた。
以前見た時よりも、はるかに巨大になっている。
その物体はぶよぶよした体を震わせ、
蜘蛛のようなグロテスクでかつ鋭利な脚を体からはやし、
地面にグサリとつきさした。
「あいつだ!!」
グミ状の物体は、カサカサカサと脚を動かし、這うように近づいてくる。
奈落の底から響いてくるような低く重たい声を発していた。
「レーラ、何をしているんだ。逃げるんだ!!」
ルーラは立ち尽くしたまま動かない。
「おい、どうしたってんだよ。レーラ!!」
タクはレーラの手を引っ張る。
が、
まるで動かない。
地面に根でも張っているかのようにピクリともしない。
「わたしは・・・大丈夫だから・・・は、はやく・・・に、逃げて・・・」
グミグミの物体は、突如、地面に体を叩きつけた。
ぶよぶよした体であるがゆえにバランスがとれず、こけたのかと思ったが、そうではなかった。
体を収縮させ、次の瞬間、
縮んだバネが蓄えたエネルギーを解放するかのように、
高々と飛びあがった。
漆黒の影がレーラめがけて落ちてくる。
巨大な口を広げ、レーラを飲み込まんといわんばかりに・・・。
タクは逃げることもできた。
しかし、
レーラが何度となく言ったあの言葉が、
タクの脳裏に何度も何度も何度も反響する。
大丈夫よ。
大丈夫。
大丈夫だから。
「―――――――――」
・・・・・・、
・・・、
全然、大丈夫なんかじゃねえじゃね~かよ。
レーラの表情を見ると、そこには微塵の恐怖も刻まれていなかった。
穏やかに、
そして、タクに心配をかけまいと、
微笑んですらいる。
その時、
プツリと音をたて、
タクの中で何かが切れた。
「うああああああああああああああ!!!!」
気がつくと、あらん限りの力をこめて、タクはレーラに体をぶつけていた。
ありえないことだが、
金属質の高らかな音が鳴り響いた。
地面に倒れ、タクは顔を上げると、
レーラが離れた場所で、体を起こしている姿が確認できた。
どうやら、金縛りはとけたらしい。
けれど、
あ~あ、俺、何をしているんだろ。
タクは頭上を見上げる。
風を切り、ヒュオオオオオという音を響かせ、
闇にも似た漆黒のグミグミな物体が、巨大な口を広げ、タクへと迫ってくる。
迫ってくる。
迫ってくる。
巨大な牙を思わせる、いかつい歯を蓄えた口を広げ、
粘つく粘液を垂らしながら、
急接近。
もう、逃れられない。
「―――――ーあっ」
タクは、なすすべなく、グミグミの物体に丸呑みされた。
グミグミの物体に飲み込まれる瞬間、タクが思ったことは、
ドロドロに溶かさないでくれよということと、
そして、
もう一つ。
ルルの奴、大丈夫かな。
タクの意識は漆黒の闇に包まれた。




