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前を見ると奴がいる

「大丈夫?」


 レーラはタクに手を差し出していた。


「あ、ああ、大丈夫だ」


 レーラの手をにぎり、タクは立ち上がる。


「さあ、私たちも急ぎましょ」


 タクとレーラも、ルルーシカ同様、螺旋階段を上る。

 床に描かれていた、ドラゴンの紋章が小さく見えるほどの高さとなったとき、

 レーラは、壁にぽっかりと開いた穴に入って行った。

 

 ルル・・・大丈夫かな。


 穴の中は湿った空気が充満していた。

 カビの臭いすらする。

 空気の流れがないためか、どこかひんやりとし、重々しかった。


「なあ、ルルの奴、大丈夫だと思うか?」

「大丈夫」

「そう思いたいけどさ・・・」


 レーラは立ち止まり、ゆっくりと振り向く。

 緑色の薄明かりのもとでは、顔をはっきりとは確認できなかったが、

 微笑んでいるように思えた。


「ついたわ」


 レーラが言葉を発すると突如、あたり一面が白い光で満たされた。

 タクはあまりにまぶしくて、目をつぶった。


 サアアアアア、という風が梢を揺らす音が聞こえる。

 ゆっくりと目を開けると、目の前にヘッドリッジ魔法学園の校舎が見えた。


「ここは、どこかで・・・」


 タクの脇には、

 巨木と、根が絡まった古い井戸が、

 存在していた。


 ああ、登下校の時、毎回通る巨木のところに今いるのか。


「さあ、行きましょう」


 レーラは歩き出した。


 いつの間にか空は重々しい黒い雲で覆われていた。

 時刻は昼前だというのに夕方のように薄暗い。

 校舎は薄明かりのもと、不気味に鎮座していた。

 校舎からは人の気配がまるで感じられない。


 タクとレーラは校舎へ向かう、普段通る道ではなく、

 違う道を歩いていた。


「どこに行くんだよ」

「旧校舎。そこにレゲイラの扉がある」


 レーラは確かな足取りで歩いていく。

 迷いを微塵も感じさせない。


 木々のアーチで覆われた道を通った。

 白色のコンクリートの道から、土の道に変わった。

 空気はじめじめしており、ブーンブーンと蚊のような、

 不愉快な羽音を響かす虫が飛び交っていた。


 鳥の音が聞こえない。

 馬のいななきも聞こえない。

 聞こえるのは、不愉快な虫の音と、

 心をざわつかせる葉擦りの音ばかり。


 タクとレーラは言葉を交わすことなく歩きつづけた。

 やがて、

 木々の梢の間から、ボロボロの木造校舎が見えてきた。


 まじかよ。こりゅあ、かなり古いな。

 嵐でもきたら今にも壊れそうだし。

 それに、めちゃくちゃ不気味なんだけど。


 タクは校舎を見上げながらそう思った――まさに、その時、

 ドン!!

 前を歩いていたレーラにぶつかった。


「いって・・・どうしたんだよ、急に立ち止まって・・・」


 タクは鼻をさする。


「に、に、に、に、に・・・・・・」

「あん?に?『に』がどうしたんだ?」


 わずかばかりの空白。

 そして、

 


「に、逃げて・・・・・・」



 レーラは苦しそうに呟く。


「逃げて?どうして?」


 と、タクは前方を見ると、そこには――――。

 ギョロリ。

 奴がいたのだ。

 

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