忘れられた小部屋
目を覚ますと、
寝室にはルル―シカとレーラはいなかった。
タクはベッドから起き上がり、窓の外を見ると、
まず目に飛び込んできたのは、針のような鋭利な山だった。
いくつもいくつもそのような山がそびえ立っており、
そのふもとに広がる、濃い緑色を称える樹海には、
昨日、目にした漆黒の闇が、
こちら側とむこう側をわける川のように走っている。
目を凝らすと、薄い闇のカーテンが空にまで、
いや、空の遥か彼方まで広がっているように見えた。
「今日の天気は晴天か・・・」
窓から射し込む陽の光が年代物のタンスを照らし出していた。
ふと、その脇の壁がチカリとひかる。
星のような瞬き。
あれ、この光はどこかで・・・。
指先でそっと壁の煌めきに触れる。
と。
スゥ~とそこにあった壁は消え去り、
小部屋が現れた。
その小部屋には窓はない。
机と椅子が小部屋の中心に置かれ、
壁全面に、写真が何枚も何枚も飾られている。
タクはその中の一枚に目を奪われた。
その写真に映った人物には心当たりがあった。
一昨日、レーラを見つめた時に、突然、見えた少女。
写真にうつった少女は、青いドレスをまとい、椅子に座り、微笑んでいた。
ドレスには宝石がちりばめられ、長い髪は丁寧に編み込まれている。
座り方一つをとっても、品の良さが滲み出ており、
ルルーシカとは月とスッポンだなと、タクは思った。
「この写真は・・・」
「その写真に見覚えがあるの?」
いつの間にか、レーラが後ろに立っていた。
「レーラ・・・いや、レーラの親戚かなって思って」
「親戚?ああ、親戚ではないわ。もっとずっと近しい人よ」
「なら、お姉さんか誰か?」
「いいえ、家族ではないの」
家族ではない?
なのに、近しい人?
「彼女はずいぶんと前に亡くなった人なの。でも、彼女の魂はこの世界にずっと彷徨い続けている。私はね、彼女の魂を浄化してあげたいのよ」
レーラは壁に飾られた少女の写真を見上げながら呟く。
「彷徨い続けている?浄化?」
大広間から「早くしなさいよ!!」というルル―シカの声が聞こえてきた。
「これ、あなたの服」
タクに制服を渡すと、
レーラは小部屋から出ていこうとした。
「ごめん、勝手に入っちゃって」
「いいわよ。私もこの部屋のことは、長いこと忘れていたから」
レーラは小部屋から出て行った。
続いて、タクも小部屋から出て行こうとした時、
机の上に置かれた写真立てが目に飛び込んできた。
先ほど見た少女と、幼い男の子が仲よさげに微笑んでいた。
お互いの手を重ね合い、体を寄せ合い、幸せそうに。
二人はどこか似ていた。
目元などそっくりだった。
弟なのかな?
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