表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下剋上少女  作者: 不思議な蓮
3/25

魔法紹介

熟睡していた後に目覚めた時のような、そんな感覚。


「おぎゃー、おぎゃー」

産声ってこんな感じでいいのかな? 恥ずかしいけど、これしないと怪しまれるし、生きるためにも必要なんじゃないっけ? 知らんけど。


「やったぞ! 無事に生まれた! 女の子だぞ、ソーニャ!」

「あなた…興奮しすぎよ、でもよかったわ」

興奮しすぎっていうのには賛成、親バカなんだろうなー。

あと、異世界言語理解はちゃんと発動してるみたいだね。これなら特に不自由なく暮らせそう。

あっ、両親?が慌ただしく動き始めた。産湯だの何だのをやってんのかな? さっきは聞こえなかった女の人の声が聞こえる、助産師さんだろうな、きっと。

まぁ、今は何もすることはないだろう。大人しくなされるままにしておくか。




一年経った。こっちでの一年も地球と変わらないらしい。

最近ようやく自分の周りの情報が掴めたのだ、やったぜ!


まず、父親。ランジ=クリムゾンとかいうらしい。貴族とかではないが、そこそこ稼いでいる商人らしく、いつも忙しそうにしている。


次に母親。ソーニャ=クリムゾン。どこぞの殺し屋みたいだ。高校時代に友人を桜の木の下に埋めたりしていないだろうな。こっちはランジの手伝いをする程度、だけど簡単な魔法を使えるため、必要不可欠な存在みたいだ。あと、クリムゾン姓は母親のもの、つまりはランジは入婿らしい。


最後に私。アカネ=クリムゾン。二人のひとり娘らしい。

・・・何故アカネ?急に日本語っぽく、しかも、どっちも赤にまつわる感じだし。うーん、不吉。


まぁ、一回置いておこう。そう、これは大切ではない。母親が魔法を使え、しかも重宝されている。こっちの方が重要だ。

つまり、私の魔法つかい計画は成功しそう!っていうこと。上手く行けば、魔法少女を名乗ることもできる。きっと、いずれ魔女になったりするような魔法少女じゃない、純粋な魔法少女だ。

よーし、頑張って魔法を使えるようになるぞ!




二年経った、私は3歳だ。前世の記憶や体の動かし方を頼りに、かなりしっかり走れるようにまでなった。言語の方も、読みは完璧、話すのも不自由なく、というふうになった。

親は、「天才だ!」と騒いでいる。まぁ、確かにおかしいよね。3歳でしっかり話せるのは。そのおかげで自室が既にもらえたのだから、有難い限りではあるが。


だけど、問題も見つかった、文字が書けない。本当に書けないのではなく、怪しまれないために書けないのだ。

この世界の文字はアルファベットに似ていて、せいぜい30種類しかない。なので、英語と同じような使い方をするのだが、異世界言語理解のおかげで書きたい内容は全て書けてしまう。

そんな人間がどう見られるか、親バカ抜きで、本当の天才に見られてしまう。私の学力は中3程度、天才でも何でもない。それなのにそうやって見られてしまったら、今後行動しづらい。


また、それだけならいい。もう一つの問題に直接繋がってくるから、手に負えない。

もう一つの問題というのが、魔法の詠唱が物凄く長い、ということだ。



2歳半ぐらいになった時のこと、そろそろ魔法の勉強でも始めるか、とソーニャに相談した。


「お母しゃん、アカネもまほうがつかえるようになりたい」

「アカネちゃん、少し早いんじゃないかな?それより、この絵本を読みましょう?」

「やだー!アカネもまほうつかうのー!」


もちろんわざとこの口調でやっている。一人称が自分の名前であるのはなかなか拒否感があったが、幼児っぽいだろう、ということで仕方なくしている。


「仕方ないわね、アカネちゃんは真面目なんだから。じゃあ、まずお母さんが使う魔法を見といてね」

「分かった、お母しゃんありがとう!」

「じゃあ、いくわよ。

『我らに恵をもたらす森の精霊よ! 生命の母たる大いなる海の精霊よ! 雄々しくも優しき炎の精霊よ! 道を照らし、正しきものを救う光の精霊よ! 悪しきものを滅し、死の安寧を届ける闇の精霊よ! どうか私の願いを聞き届けください! 渇きを癒し、生命を支えし水を欲します! 対価は私の魔力! いでよ、アクアボール!』」

「おおっ!」


ぐぐぐぐ! ぴちゃ!

あれ?直径1cmぐらいの水玉が出てきて、落ちてった。


「お母しゃん、今の何?」

「魔法よ、アカネちゃん使いたかったんでしょ?」

「でも、お母しゃんがいつも使ってるのもっとすごいよ?」


そう、ソーニャが普段使っている魔法だと、水は木桶1杯分は出てくる。これとは規模が違いすぎる。


「今回のは誰でも使えるような簡単なヤツだからね。お母さんがいつも使ってるやつは、あれに加えてそれぞれの精霊様に日頃の感謝を3分ずつ言わないとできないのよ。」

「適当な事言っていいの?」

「お礼のこと? だめよ、定型文を一言一句間違えないで言って、ようやく発動できるの。ね、難しいでしょ? 大人しく絵本読みましょう?」

「うーん、でも1回やってみる。

『我らに恵をもたらす森の精霊よ! 生命の母たる大いなる海の精霊よ! 雄々しくも優しき炎の精霊よ! 道を照らし、正しきものを救う光の精霊よ! 悪しきものを滅し、死の安寧を届ける闇の精霊よ! どうか私の願いを聞き届けください! 渇きを癒し、生命を支えし水を欲します! 対価は私の魔力! いでよ、アクアボール!』」


あれ? 海の精霊のとこだけ対話してる気がしたけど、ほかの精霊のところは何も無い? あと、気になったのは、アクアボールのところだけか。

「ねぇ、お母しゃん、どうして水の魔法なのに、森の精霊さんとかにもお願いしてるの?」

「それはね、精霊様達は支えあってるから、皆様に挨拶する必要があるの。」

「じゃあ、火の魔法でも皆様に話しかけるの?」

「そうよ、分かった?」

「分かった! ありがとう、お母しゃん!」




というわけだ。未だに他の精霊に話しかける意味が分からない。この前、海の精霊にだけ呼びかけてみたら成功しそうだったし。まぁ、その時は直前ではじけ飛んで失敗しちゃったんだけど。


話をまとめると、文字を書けない、詠唱はすごい長いから覚えづらい、っていうこと。魔法の習得にかしこさポイントが必要なゲームが多いのも納得できた気がする。


さて、どうしよう?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ