〈16-4〉
「この場所、この街そのものが、全部仮初なんだって、俺はドラクロアに言われたよ」
「仮初? どういう事だ?」
眉間に皺を寄せたロドは尋ね、リズは言葉のままだと首肯した。
「この街が〈工場の木〉によって管理されているように、〈工場の木〉すらも管理されているものに過ぎないって言って、解るか?」
「ん? そりゃ、当たり前の事なんじゃないのか? 〈木〉の運営は〈木〉にあるもんだろ?」
「そうじゃない。……ここは、この街も他の街もすべて、上にある街の為に造られた場所だそうだ」
「は?」
「え?」
「ジアーズは、地下に作られた国だ」
周りが呆気に取られてしまったのは仕方がない。それは先程から難しい表情を浮かべ、顔をくしゃくしゃにしていたシェヘラでさえも、同じ思いだったらしい。ぽかんと間抜けにも口を開けてこちらを伺うばかりだった。
「〈工場の木〉に皆が依存するように資源を一切断たれ、意図的に作り上げられた仮初の場所。あの赤い月すらも消して見せようかって、あの野郎は言っていた」
リズは淡々と事実を紡ぐ。
混乱したせいで誰も、即座に口を挟める訳がなかった。それを良い事に、リズはふと吐息をこぼして肩を竦めた。ぐっと掴んだゴーグルを引き下ろし、金縛りにあったかのように動けないでいる三つの表情を睨みつけた。
「この場所が意図的に作られていて、俺らは皆、あの〈工場の木〉に騙されていた。それを街の奴ら全員に証明すれば、どうする事がいいのかって答えは、おのずと答えは見えるんじゃないかって、俺は考えているけれど、どうだろう? それでも無謀だって、やっぱりあんたたちは思うのか」
漆黒の瞳を細めて、不可能な事なんてないと言わんばかりに、愉快そうに笑う。
自虐にも、自信に満ち溢れているようにも見えるその表情に、誰というまでもなくごくりと生唾を呑んだ音が、やけに響いて聞こえた。
「一体何をしようって言うんだい?」
恐る恐る尋ねたヤヌスに、リズははっきりと答えた。
「緑の場所を、皆に見せる」




