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〈14-1〉

 

 逃げ遅れた者たちが呆然と見守る中、同じものが三台投棄されたところでまた停止した。

「なん、だ……?」

 誰となく口にした疑問に答えるものはない。一瞬起きた混乱は、驚きと戸惑いに変わっていた。


 落ちて来たのは、基盤がむき出しのままの立方体に、移動を可能にする四本の足のようなものが取り付けられたものだった。側面にはつるりとしたレンズが見え、こちらを見返しているかに錯覚する。

 誰もが動けないでいる中、じりじりとぜんまいが巻かれているような音だけが聞こえてきた。恐る恐る、音の原因が危険物かどうか確かめようと、近くに取り残されていた者から一人、また一人と様子を伺いながら近づいていく。

 その不審物に、男たちが見合わせて首を傾げたところで、それに動きがあった。

 箱についた黄色のランプが一つ光り、だらりと垂れ下がっていた四足がわさわさと動き出した。

「ぐっ」

「うわっ!」

 近くにいた者たちは、突然動き出した四足に弾き飛ばされて、地に落ちた。慌てて身体を起こした姿は皆驚き、自分の身に何が起きたのか解りかねているようだ。

「おい、全員そこを離れろ! 踏みつぶされるぞ!」

 誰が怒鳴ったのかなんて、最早解らない。箱を支えるように、ゆっくりと四足は踏ん張り立ち上がった。機械のその様子に、男たちの野太い悲鳴が上がる。


 機械は逃げ出す彼らを観察しているのだろうか。レンズの焦点を調整し、上に、下に、あるいは左右斜めに本体を動かした。三つの機械がわらわらと広場に散って、二台は採掘場の方へと向かって行った。

 残った一台は、まるでこの場に集う男たちを値踏みするかのように、小刻みにレンズを向けては制止する。初めて見るものを観察する動きに、気味の悪さを感じたとしても不思議ではない。

「ひぃっ!」

 故に、身震いして踵を返し、誰かが逃げ出したくなったところで、咎められる者はいなかった。

 途端、黄色のランプが緑に変わる。一台が飛び跳ねてその者の前へと回り込み、逃げ出した者を押さえつけた。男は上から降って来た重みに腰を抜かし、力の入らない手足を必死に動かし逃れようともがく。

「う、あ……助けてくれっ……」

 うわごとの様に、恐怖にかすれた声で囁くが、無機質なレンズは、はくはくと口を開閉する男を覗き込むばかりだ。びくりと身体を強張らせ、真っ青な表情に、誰もが動く事が出来ずにいた。

 その時だ。


「伏せろ」


 採掘場で働く男たちのものとは違う、どこか落ち着きを伴った若い男の声が注意を促した。


 同時に、腰を抜かしていた男の上で、バキッという音と共に、四角い機械がバランスを崩した。音を立てていた足は、上から力を加えられたせいで拉げて折れてしまい、残った三本の足で危なっかしく箱を支えようとよろめいていた。

 足を断ち切り着地した姿は、すぐにまた軽やかに地を蹴ると、とんぼ返りして箱に飛び乗った。振り払おうとするかのように、機械は右に左によろけるが、上に乗ったマント姿が落ちる事はない。それどころか、手をついただけで器用に身体を支え、飛び降りる反動を利用してレンズもろとも機械の中心を蹴り破った。

 恐らく操作性を失ったのだろう。危なっかしくもがいた箱状の機械は、やがて力なく資源の山に突っ込んで停止した。ガラガラと一際大きな音を立てて、資源はゴミへと成り果てる。


 襲われた男は、目の前で起きた事に思考回路が追いつく事なく、ただ呆けてしまう。

「立てるか」

 いつの間にか降り立っていたマント姿のイードは、自分が破壊した機械を気に留めることなく、腰を抜かしていた男に手を貸した。

「あ、ああ……助かった。あんたは一体……?」

 戸惑いながらも手を伸ばした男に、イードが答えるよりも先に、誰もが一度は聞いた事のある声が告げる。

「全員聞け!」

 遠方の街からカラカスに出稼ぎとして来る際に搭乗した、移動船で聞いた声だ。移動船の主は、ガラクタの排出口に姿を現した。

 

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