表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/55

〈8-2〉

 

 ベルの余韻が、あとに残された狭い店の中にもの寂しく響く。

「……はあ」

 肩を落として崩れるようにふわりと椅子に座ったリウミュに、店主の男は苦笑した。

「あの言い方じゃ、喧嘩にしかならないって解ってただろうに」

「解ってるよヤヌスさん……。でもどうしても引き留めないとって思ったら、あんなこと言ってたの」

 仕方ないじゃないと、崩れるように座り込み、カウンターに額をつける姿からは、舞台に立った時の堂々とした様子は微塵もない。珍しくも弱気になってまた溜息をこぼした姿に、ヤヌスは首を傾げた。

「何か気になる事でもあったのかい?」

「うん……」

 あった事には違いないけど詳細は言えないのだろう。再びこぼした溜息が雄弁に語る。


 不意にぱっと身体を起こした。腕の時計を確認して、かわいらしい顏で眉を顰める。

「ああ、もう行かなくちゃ」

 椅子から降りて身を返すだけで、ふわりとショールと飾り紐が広がった。


 店主はその紐がゆっくりと落ちる様を眺めて、ふと尋ねた。

「リウミュ、歌と踊りは楽しいかい?」

「ええ。……私、シェヘラが思っている程、嫌々踊っている訳じゃないもの」

「知っているよ。君の踊りは皆に元気を分け与え、君の柔らかな歌声は心地よい。それはシェヘラとて知っている筈さ。ただちょっと熱心に打ち込んでいるせいで、見えなくなっているだけさ」

 そうだろう? と聞かれて、リウミュが答えるまでもなかった。困ったように眉を落として、口元をほころばせる。

「行ってきます」

 凛とした声が告げた。扉へ向かうその後ろ姿からは、もう先程の様子は微塵も感じさせなかった。

「ああ、いってらっしゃい」

 ベルは、小さく鳴った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ