突然の死
久しぶりに投稿しました。
今回はすごく短いです。
読んでくださり有難うございます。
三人は急いで支度をし、家から出て一生懸命走った。
辺りを見回すと早朝にもかかわらず多くの人々が走り、逃げている。
泣き叫ぶ声が耳から流れてくる。子供、女、老人まで皆生きようと必死に走っていた。悠太たちの家もふりかえった時には、もう崩れていて原形もがわからない状態だった。
あの家にずっと住んでいたのにもう思い出も何もかもが心の中だけになってしまった。
たった一つの出来事によって……
崩落が多くなりガレキの下敷きになる人が多くなった。
下敷きになった人は、皆潰れていた。
見るも無惨な光景だった。骨が皮膚からでていた人や、頭が潰れている人がいた。とても耐えられるものではない。
人によっては、この光景がたえられなかったのか嘔吐をしている人もいる。
走る道にも瓦礫があり塞ごうとしている。
走っていく途中伶奈たちが通っていた高校もあった。まだ崩壊はしていないが危ない状態だった。
グラウンドには朝練をしていた部員もいて逃げている。
もう平和な日々には戻れない。そう思うと無力感が一層重くなる。
伶奈は、こんなの耐えられないといった表情で目をつむった。
今まで目にしたことのない光景が広がっている。
その瞬間、近くで物凄い音がした。
すぐふりかえると父が瓦礫の下敷きになっていた。伶奈が
「お父さん。早く!早く!」
と泣き叫んでいた。父は痛みを堪えているようだった。
「もう父さんは助からない。二人だけでも生き延びてくれ。早く」
と最後の力を振り絞って言った。自分の子供だけは生き延びて欲しい。そんな親心だったのかもしれない。しかし、もう疲れているようだった。
「さっき父さんいってただろ!もう助からないって。早く逃げよう。想いを無駄にだけはしたくない」
泣きながらいっていた。そう言いながらも顔は悲しみに溢れていた。堪えきれない涙がどんどん溢れてくる。今は生きなきゃいけない。感情より体が動いた。
悠太が伶奈の細い腕を引っ張った。伶奈はびっくりした様子でそのまま引っ張り上げられた。
腕が震えているのがわかる。足も走っているのがやっとだ。腕から伝わる震えが今の伶奈を表しているそれほど精神的にも肉体的にもくるものがあるのだろう。
悠太は顔には出づらいが不安が募っている。
何もかもを飲み込んでしまうような墨色の雲が辺りを埋め尽くしている。
ただ足音だけが響く。
しばらくの間たったふたりの家族の後ろ姿をじっと見ていた。すこし名残惜しそうにしていた。
しかし、すこしほっとしたのか最期に「良かった」と一言だけ言って目を閉じた。もう出会えるはずもないのに、逢いたいとねがってしまった。
誤字脱字がありましたら指摘のほどよろしくお願いします。
読んでくださり有難うございます。