孤独なダンサー
尾崎豊の『ダンスホール』という曲を短編化してみました。
1
あの夜、俺は彼女に対してなにをすべきだったのだろうか。できることなどなかったのかもしれないが、少なくとも彼女の想いに、もっと真剣に向き合うべきだった。
街中の人々が白い息を吐きはじめた十一月の夜、俺はいつものように三人の友人と煙草をふかしながら歩いていた。それぞれが退屈で説教臭い家から逃げ出してきて、つかの間の自由を感じていた。
その時ふっと、秋風が頬をやさしく撫でるように吹き抜けた。俺はこの雑多な街そのものが、ある種の生命体であるかのような感覚を覚えていた。どこにでもいるような都内の高校生である俺たちは、切れかけた街灯の不規則な光にさえ苛立っていた。そんな俺たちにとって、アルコールはすべてを吹き飛ばしてくれる魔法そのものだった。
「なあ、俺たちいつも安いディスコばっか行ってるだろう? 実はさ、この近くに洒落た店があるんだよ。大人が行くような場所っぽいんだけどさ。値踏みがてら覗いていこうぜ!」
のぼるが、周囲に聞こえるくらいの大きな声で遊び場の提案をはじめた。
「お、いいな。たまには冒険してみないとな」
のぼるの提案に、俺はほとんど反射的に応答した。
のぼるとは、同級生の中でも割りと早い段階で親しくなった。坊主頭の巨漢で、いわゆる口より先に手が出るタイプだ。すぐ喧嘩になるから、あいつの身体には青アザや擦り傷が絶えない。持ち前の好奇心と行動力を活かして、常に他人を驚かせるような情報を披露するのが好きな奴だった。今回の店も、どこかから仕入れた情報だろう。俺はのぼるとたけるが意気揚々と歓談している少し後ろに立ち、くわえ煙草で夜空を見上げてみた。狭くて曇りきった空に光り輝く星など見えるはずもなく、すぐに顎を引いた。
「都会の空ってのはどうも好きになれん」
俺の視線をひそかに追っていたみつるが、言い古したセリフを発した。
九州の片田舎から東京の高校に転校してきた当初は、方言と特徴的なリアクションのせいで、いじめられていた時期もあった。当時の俺は、その哀れな転校生を助けようとしたわけでもないが、なんとなく無視もできなかったのでイジメっ子グループを挑発して喧嘩を仕掛けた。のぼるを含めた俺の仲間たちも喧嘩慣れした連中ばかりで、腕っ節には自信があった。結果、俺たちのグループは圧勝し、それ以降みつるのイジメもなくなったようだった。その頃から、みつるともつるむようになった。
俺はふと、世間の高校生は酒も煙草もやらないのだろうかと率直な疑問を抱いた。彼らはなぜ正気を保ったまま学校や家で生活していけるのだろうか。優等生と呼ばれる連中のことは俺にはさっぱりわからない。おそらく彼らはこんなことを考えすらしないから優等生なんだろうなと、自己解決した。
他の三人は、先日V9以来の日本一を手にした巨人について、ひときわ大きな声で唾を飛ばし合いながら話していた。俺も生粋の巨人ファンだったが、あえて話には加わらず、誰かに問うわけでもないふわふわとした考え事に耽っていた。俺たちは、こうして毎晩のように欲望と悲哀に支配された夜の街を歩き続けていた。
十分ほど歩くと、周囲の地味な店に対して、一段と際立った円形の大きな建物が見えてきた。
「あれだよあれ! すげえなあの外観! いかにもって感じだな。俺たちをガキ扱いしねえいい女もきっとたくさんいるぜ」
まるで、自分に言い聞かせるかような口振りののぼるを見て、俺はおもわず笑ってしまった。周りを見ると俺だけじゃなく、みつるもたけるも笑っていた。
この頃の俺たちは、気の利いた酒と女に夢中だった。窮屈な学校や家に帰るくらいなら、非行の方がずいぶん楽だった。本当は、若いからなんとでもなると高をくくっていたんだと思う。少なくとも俺はそうだった。
ネオンサインに彩られた、絢爛豪華な外観が接近するにつれ、ホール内からダンスミュージックが漏れ聴こえてきた。ずいぶんな音量で流すもんだな、と少し驚いた。入口付近にいる二名の男が、近づく俺たちを品定めするような目線で見てきた。俺たちはいつも夜の街へ出かけるときには、きちんと着飾ることにしていた。もちろんたいした服は買えないが、それでも毎回それぞれがイカした格好をして現れた。オシャレと奇抜がほぼイコールだったから、互いに突っ込み合うのもまた一興だった。
無事、ドレスコードとボディチェックのようなものが済んだ。
「ずいぶん厳重なんだなあ。値段高そうだけど大丈夫かな」
みつるの独り言のような言葉を、俺以外の連中は誰も聞いちゃいなかった。
のぼるとたけるは湧き出る好奇心を抑えられず、子どものように駆け出していった。そして、ホールへと続く大きな扉を勢い良く開けた。扉の向こうに現れた空間は、日常のしみったれた生活空間とはまったく異なった様相を呈していた。
「へへっ、お前らダンスホールなんて来たことないだろ? 主に目当ての女と踊るとこなんだよ。まあ、適当にいい女見つけて楽しくやろうぜ! あとで報告会な!」
「こんなとこ……すげえ高いんじゃないのか?」
俺は率直な疑問を口にした。普通の高校生が大金なんてもっているはずがなかった。
「大丈夫大丈夫。最初にちょちょっと取られるけど、中でバカみたいに飲み食いしなけりゃなんてことない」
のぼるの返答の半分以上は俺の意識からすり抜け、俺の五感は眼前に広がる広大な空間に集中していた。
のぼるとたけるに続き、数歩だけ足を踏み入れてみた。これまで生きてきた中で見てきたどの空間よりも広く感じた。満員電車さながらのディスコとは違い、人間の数はそれほど多くなかった。それでも数百人はいたと思う。せわしなく周囲を照らすミラーボールもなければ、天井や床がリズムに合わせて光り出すわけでもなかった。清潔感に満ちた紳士淑女たちが、ヒューマントラックのリズムに合わせて控えめに踊っていた。ほんの数分前まで、夜の鬱々とした静けさの中にいたのが遠い昔のことのように思えた。こういう落ち着いた場所も悪くない、と俺は素直に思った。
友人たちは、無垢な少年時代に戻ったように瞳を輝かせながら、酒や女に目星をつけて動き始めていた。たけるに至っては、休憩用ソファでバーボンソーダを飲みながらくつろぐ、二十代前後の女性に早速言い寄っていた。もちろんあっさりあしらわれていた。
俺はしばらくホールの隅に立ち尽くし、いちばん安い酒を注文して喉を潤しながら周囲を観察していた。客層は幅広く、二十代から六十代までが一様に分布している様子だった。派手な服や化粧でごまかしてはいるが、俺たちくらいの女の子もいくらかいるようだった。
目に映るものすべてが新鮮で、日常の義務や責任のことなど頭から吹き飛んでいた。ふと、十メートルほど先で踊る女性に目が止まった。遠目からでも、十代であることは直感的にわかった。華奢で小柄な身体にまとった赤いドレスと肩まで伸びた髪がふわふわと揺れていた。踊りは全体的にぎこちなく、パートナーの男性の助力がなければすぐにでも倒れてしまいそうだった。決して人目を引くようなダンスではなかったが、そのたどたどしい小さなステップには独特の魅力があった。俺はすでに、彼女から目を離すことができなくなっていた。どうやら酩酊状態であった彼女は終始笑顔を絶やさず、まるでこの世界への悩みや不安などひとつもないかのように振る舞っていた。
酔いが回るにはまだ少し早かったが、俺にはまるでこの広大なホール内に俺と彼女しか存在しないかのように感じられた。彼女以外はたんなる風景にすぎなかった。
数分後、彼女は熱狂的で荒削りなダンスを終えると、今度は近くにいた別の男のもとへパタパタと駆けて行き、男のグラスを強引に奪って飲み干すと、満面の笑みを浮かべてみせた。しばらく会話を楽しんだ後、再びふわふわと踊りはじめた。またもや、赤いドレスと肩まで伸びた髪が楽しそうに揺れはじめた。
俺はあいかわらず隅っこで安酒を飲み続け、アルコールで日常のもやもやを洗い流そうと必死だった。何人かの女性が話しかけてきたが、俺がガキだとわかると去っていくか、俺の方から遠慮してしまった。友人たちの傍らには、すでに数名の女性がいて、思い思いの時間を楽しんでいるようだった。俺は周囲から、ひとり寂しく佇む哀れな男だと思われていただろうが、不思議と居心地は悪くなかった。その理由は明白だったからだ。
カクテルを五、六杯飲みほすと、一旦ホールを後にした。気持ち悪さはまだなかったが、強烈な尿意に襲われてトイレに駆け込んだ。たいてい、飲むときはとことん飲んでしまい、吐くのはもちろん、喧嘩をすることもたびたびあった。警察沙汰に発展したこともあったように記憶している。友人たちも同じような感じだったし、特に矯正しようなどと考えたことはなかった。
張りつめた膀胱を楽にしてホールに戻ると、彼女の姿がどこにもなかった。俺は露骨に失望の顔を浮かべてしまった。そして、酒をつぎ足そうとした次の瞬間、背後から幼い声が自分に発せられたのを知覚した。とっさに振り向くと、それまでずっと見ていたあの娘が目の前に立っていた。
「あんた、ずっとあたしのこと見てたでしょう? 案外わかるのよ。見られてるって感覚。夜遊び覚えたての学生さんがこんなとこに紛れ込んじゃっていいのかしら? しかもずいぶん飲んでるみたい」
彼女の力強い視線が俺に注がれている。酔ってはいるようだったが、滑舌はしっかりしていて、透き通った聞き取りやすい声の持ち主だった。間近で見る赤いドレスは思ったより迫力があった。彼女の顔をまじまじと見ると、その切れ長でするどい瞳に飲み込まれてしまいそうだった。遠目でも薄々わかっていたが、周囲の目を引くほどの美人というわけではなかった。目元は整っているが、化粧がなければ地味な方だろうと思った。
「今日は友人の付き添いで来たんだ。それに俺はもう二十歳だよ」
「あたしの前でくだらないうそはやめて」
彼女の眼光が一段と鋭さを増した。
「……ごめん、本当は十八」
「それもうそね」
しらばっくれることは出来たが、これ以上彼女の前でうそを重ねることに耐える自信がなかった。
「まったく……十六だよ。そっちも同じくらいだろう?」
ホッとした表情を浮かべた彼女は、表情を緩めて迷いなく答えた。
「あたしはもうすぐ十七になるわ。つまり同い年ね! ねえあんた、ちょっとここ出て二人で飲み直さない? すぐ近くにいい店あるから歩いて行きましょうよ」
彼女からの急な提案にあれこれ逡巡するわけでもなく、俺は首肯していた。
2
のぼるたち三人は少し疲れた顔を浮かべ、カウンター席に腰掛けていた。俺はちょっと出て行くことを伝えるために、三人のもとへ歩み寄っていった。すると、のぼるが先にこちらに気付いた。
「おう! どんな調子だ? ちょうどいま話してたんだけどさ、正直どいつもこいつも気取り過ぎてて落ち着かねーんだよなあ。もう出ようかって相談してたんだよ。お前も行くだろ? いつものとこ」
“いつものとこ”とは、俺たちが週に二、三回は顔を出す、歓楽街のディスコのことだった。値段も良心的で、なにより俺たちみたいな世間知らずのガキにも対等に接してくれる。店内は鳴り止まない音楽と若い男女の叫び声や笑い声のせいで、狂ったように騒がしかったが、無為無聊な現実から目をそらすのには有効だった。こうやって集まると、最後にたどり着くのは大抵そのディスコだった。俺ははっと我に返った。しかしいまは事情が違う。
「いや、俺はやめとくよ。というのも、さっき知り合った女の子と意気投合しちゃってさ。これから場所変えて二人で遊んでくることになった。ごめんな! 明日昼飯おごってやるからそれで勘弁してくれ!」
意気投合……、自分で言ってて恥ずかしくなったが、これから仲良くなれば同じことだと納得させた。
「あんまり無茶すんなよ。学校ももうそんなに休めないから、酒臭いとマズイぞ」
みつるは、俺たちといるときは牽制役に徹していて、こういう時はちゃんとまともなことを言うようにしているようだった。
「はあ~。お前顔だけはいいからな。お相手はあの赤いドレスの派手な娘だろ? あんまり変なヤツだったらすぐ帰ってこいよな」
たけるは、以前ナンパした相手がひどくヒステリックな女で、危うくカッターナイフで刺されそうになった経験があった。その話がどこまで本当のことかはわからないが、多少なりとも俺の心配をしてくれたのだろう。
「新宿にまた三百坪以上のでっけえディスコが出来たらしいぜ! 死ぬほど人多いと思うけど行ってみようぜ!」
三人はもう次の遊び場のことに夢中だった。三人が一斉に腰を上げると同時に、俺は真向かいでまた違う男と談笑している彼女を見つけた。少しだけ複雑な感情が沸き起こったが、すぐに落ち着けることができた。俺は友人たちに素早く別れを告げると、彼女の方に向かって歩いた。
そうとう酔っていた様子に見えた彼女は、意外にもしっかりと地面を踏みしめて歩いていた。華奢な身体のわりに筋肉質なふくらはぎを見ると、スポーツでもやっているのかなとの疑問が頭をよぎった。
「ちょっと歩くけど平気よね。だいぶ飲んでたみたいだけど、強いんでしょう?あたしと同じ♪」
小柄な娘は酒に弱いという先入観があったが、彼女が泥酔して道端に座り込んでる姿など想像できなかった。ふと、俺はダンスホールでの二人のやりとりを想起していた。彼女は、いったいいつどのタイミングで俺を見ていたのだろうか? そう考えていると、頭の中を覗かれたように彼女が答えた。
「あたし、ナイトパレスの常連なのよ」
あのダンスホールが『ナイトパレス』という名前だということは後日知った。
「あそこって、正面の大きな扉しか出入り口がないじゃない? 開閉音や外気が入ってくるとわかるの。通い続けるてるうちに、人の出入りや視線のクセには慣れちゃった。特に、新参者なんてすぐにわかっちゃうわ。どうでもいいところばかりに目を向けて、やたらはしゃいでるんだもの。今日はお友達と四人で来てたでしょう? あの子たち、お世辞にも行儀が良いとは言えなかったけど」
彼女は様々な種類の笑顔を使い分けながら話していた。笑顔のみの表現力なら、テレビで見るような女優にも引けをとらないんじゃないかと思った。彼女のするどい観察能力に感心する一方で、なぜたくさんの男の中で俺を誘ったのかが未だに謎だった。すると、またもや思考を読み取られたかのような答えが返ってきた。
「あはは、あんたって考えてることが顔に出るタイプね! あたし、あんなに熱烈な視線を向けられたのは初めてだったわ。さり気なく近づいて相手の顔を一瞥してみたけど、なかなか男前だったんでラッキーと思っちゃった。めぼしい彼女もいないようだったし、誘ってよかったでしょ? それとも、もっと可愛い子のほうがよかったかしら?」
彼女は、俺が女性の容姿を優先する人間ではないとわかりつつ聞いていた。彼女から漂う知性や会話のリズムに、俺はある種の恍惚感を覚えていた。この時、俺がいくつかの意味で彼女に惹かれていたのは確かだし、二人っきりで話せるなんて夢のようだった。今夜は、唐突に訪れる幸福な夜のように思えた。俺は早いとこ、強めのアルコールを体内に取り入れたくてそわそわしていた。
俺たちは、まばらに設置された街灯を頼りに歩き続けた。ようやく辿り着いた店は、こじんまりとしたバーだった。薄暗い蛍光灯がタイル張りの黒い床をポツポツと照らす店内には、仕事帰りらしきサラリーマンが三、四人いるだけだった。彼女は率先してカウンター席に座ると、俺の分の酒も素早く頼んでくれた。どうやら、この店の常連であるようだった。
「結構イケるんでしょ?」
カウンターの奥に所狭しと並べられた洋酒を指差しながら尋ねた。俺は控えめに頷いてみせた。
「あんた、見た目は優等生っぽいけどやることやってんのね。まあ、酒なんてものはあんまり美味しくもないし、大人になってからでもよかったとは思うけどね」
彼女は小さなバッグから煙草とライターを取り出し、慣れた手つきで火をつけた。そして、当然のようにこちらにも一本差し出してきた。彼女の煙草を受け取ってもよかったのだが、俺は胸ポケットをまさぐり自前の煙草を取り出した。そして、彼女の赤いライターで火をつけてもらった。吸い慣れた煙草は生きていく上で欠かせないものだった。煙が肺を満たすと、いつも冷静になれた。このとき俺は、さっき出会ったばかりの彼女が、付き合いの長い親友であるかのような親近感と安心感を感じていた。
「あんた、本当は賢いくせにどうして夜遊びなんてしてるわけ? 不良ごっこもたいがいにしとかないと後で痛い目見るわよ。あたしは心から楽しくて毎日踊って飲んで遊び回ってるけど、あんたはなんか違うわ」
彼女の指摘は、自分でもよくわかっていたことだった。そして、それが俺が学校や友だちや親や社会といったものと、うまく折り合いがつかない原因だと思っていた。常に俯瞰的にものを見ては、深入りしようとしない。そのくせに、衝動的に相手を攻撃したり、嫉妬したりすることはある。楽しいことはたくさんあるけれど、俺の心の熱はもっと別のどこかにあるような気がしていた。
「ウチは両親も兄貴も真人間でさ、なんの文句もない家庭なんだ。なのに、どうして俺だけこんななっちまうかな。分からねえんだよなあ。いまどき不良高校生なんてカッコわりいだけなのに」
注文したウイスキーの水割りが二人の前に置かれた。この液体を何杯か飲み干せば、世界が変わることを知っていた。もうひとつの現実が姿を表し、俺を癒やしにやってきてくれる。彼女がグラスを掲げたので、俺は慌てて自分のグラスを持ち上げた。わけもない乾杯を済ませると、彼女はおちゃらけたウインクをして見せた。
「そういうこともあるわよ。とくに末っ子は難しいのよ。なんで自分だけが……!って考えちゃうのは若い証拠ね。あたしの場合、家族もクソだけどね。怒鳴り合いを始めたかと思うと、夜には身を寄せあったりしてる。あたしには義務的に接するだけで、そもそもいなくたってなんの問題もないのよ。ろくなもんじゃないわ、勝手に産んでおいて。いいかげん、あの親の娘でいることに疲れちゃったから、家にはあんまり帰りたくないの。ところであなた、学校には通ってるんでしょう?」
饒舌になりはじめた彼女の傍らで、俺は両親と兄貴のことを考えていた。しかし、彼女の質問に答えるために思考を切り替えた。
「うん。皆勤ってわけにはいかないけど、いちおう通ってるよ。実は何度も停学くらってるんだけどな。バイク事故や喧嘩騒ぎなんかで。そのたびに教師に睨まれるから、もうあんなとこに俺の居場所なんかないんだ。そっちの方はどうなの?」
何気ない問いかけのつもりだったが、聞いた後に少し後悔した。
「あたし、学校は去年辞めたの。いまは冴えない装飾品店で働いてるわ。ここからすぐのところよ。男モノはあんまり扱ってないけど、気が向いたらいらっしゃいよ」
俺は学校のことについて尋ねるか迷っていたが、彼女の方から口を開いた。
「学校はね、彼が辞めろって言ったの。あたしの彼、ちょっとイカれてたからね。まあ、あたしもそろそろ家から出たかったし、ちょうど良かったのよ。働いて、自分で生活できるようになればこっちのもんだって思ってた。ちなみに今は、新宿のディスコで出会った女の子の家に転がり込んでるの。こう見えて、あたしだって本当は不安でいっぱいなのよ。いったいあたしはなにがしたいんだろう、このままどこにたどり着くんだろうって」
店内が様々な煙草の煙に包まれる中、彼女は次の水割りを頼んだ。
「まあ、彼がどうのとかじゃなくて、本当はあたしの性分なのよ。こればっかりはどうしようもないの。どうしようもないのよ……」
彼女は珍しく伏し目がちな表情で、まるで自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「ああもう、なんだかしんみりしちゃったわね。ちょっと! あんたももっと飲みなさいよ! もう一度乾杯するわよ~!」
俺は、残りが半分以下になったグラスを素早く掲げた。
「よろしい。それでは、イケてる不良少年くんとの偶然な出会いに乾杯!」
それからの彼女は終始上機嫌だった。彼女は矢継ぎ早に様々な酒を注文し、まるで酔うために、アルコールを胃に流し込んでいるかのようだった。その満足そうな横顔を眺めているだけで、俺は不思議な幸福感に包まれた。
「はあ~、しょせんこんなものよ。男と女なんて……」
グラスを乱暴に置くと、吐き捨てるように言い放った。まばたきの回数が増えはじめ、悲しげな微笑みを浮かべる彼女に、俺はさらに惹かれていった。
「ねえ、今晩空いてるんでしょ? どうせ学校なんて休んじゃえばいいのよ。いきつけのホテルがあるんだけど、ちょっと休憩していかない?」
俺はしばらく逡巡した後に、小さくうなづいた。昨日はちゃんと最後まで授業に出たし、もし明日サボることになってもいいだろうと考えた。そもそも断るつもりは微塵もなかった。ただ、できるだけ長く一緒にいたかった。
「そうと決まればさっさと移動よ! 幸い、すぐ近くにあるから歩くわよ!」
彼女は流れるように二人分の会計を済ませると、勢い良く外へ飛び出した。この辺りには詳しいようで、俺は導かれるままに彼女のすぐ斜め後ろを歩いた。彼女はときおり、この薄暗い路上がダンスホールであるかのように、クルクルと回っていた。あまりにも重心が不安定だったので、俺は思わず彼女の左手首をしかりと掴んでいた。
百メートルほど歩くと、ピンクと青で装飾された綺羅びやかな看板が目に入った。ラブホテルという場所に来た経験は何度かあったので、システムはなんとなく理解していた。道中、クルクル踊っていたせいか、彼女はバーを出るときよりも酔っている気がした。無人受付なのをいいことに、彼女は鼻歌まじりに俺の頭を撫で始めた。誰がどうみても、理性がしっかりしていたのは俺の方だったので、しぶしぶチェックインの手続きを済ませた。ルームキーを受け取ると、小さな階段を登り目的の部屋に入った。彼女は、赤いドレスを脱ぎ捨てると同時にベッドへと倒れこんだ。
「あたし、下手くそだけど踊るのは好きなの。思い通りに身体が動いてないのもわかる。だけど、誰に教えられたわけでもなく自由に身体全体を使って動いてると、なんだかとっても清々しい気分になるの。でもね、気分のいい時にしか踊れないの。なにか深刻な問題に悩んでたり、すぐ先に不安があったりするとたちまち身体が動かなくなる。きっと心と身体が仲良くなくちゃダメなのね」
彼女は大きな枕に顔を埋めて、もごもごとした声でしゃべっていた。もう明らかに酔っ払っていたし、酔うとよくしゃべるようだった。
「いまあたし、まともに喋れてるかしら? そんなに酔ってるつもりはないんだけどなあ。どうせ明日にはほとんど覚えてないから関係ないんだけどね。あ! あんたのことは忘れないよ。それはいくら酔ってても心配ないわよ!」
俺は西洋式の木造の椅子に腰掛けて、彼女のしゃべりに耳を傾けていた。
「あたしがグレはじめたのはね、ほんのささいなことなのよ。イカれた彼と過ごすうちに影響されちゃって、酒や非行に走るようになった。変なクスリを飲んだこともあったわ。家にいても両親は喧嘩ばかりだし、一秒だってあそこにはいたくなかったわ。いまは働いてこうやって遊ぶ余裕もできたけど、なんだか満たされないのよね。踊ってるときだけは違うんだけど」
泥酔状態の彼女にどの程度言葉が届くのか不安ではあったが、それでも俺は言葉を投げかけてみた。
「その点、俺なんかはまだ学校に通っていて、家族とも一緒に暮らしてる。俺も友人もいったい何に対して怒り悲しみ、何を求めて暮らしているのかすら、自分でもわかっちゃいない。考えても考えてもなにも答えは出ない。まだ十六歳で、社会や世間ってものがわかってないからかな。それとも、たんに俺の頭が悪いだけなのかもしれない。でもときどき思うんだ。真面目に授業に出て、先生の言葉に耳を傾けて、必死にノートとってる連中のようになれたらって。皮肉じゃなくて本当にそう思うことがある。勉強して賢くならなくちゃ、幸せにもなれやしない」
普段、友人にはこういう話はほとんどしないが、彼女に対しては普段考えていることをさらけ出すことに躊躇がなかった。
「バカなのよ、あんたもあたしも。若者ってのはバカだから価値があるの。バカだから闇雲に突っ走れるのよ。それが非行か学業か恋愛か趣味かは人それぞれだけど、大人になるとたちまち動けなくなってしまう。そうなる前に、うんと楽しんどかなきゃね! つまんない大人になるのだけは死んでもイヤだわ」
俺は煙草に火をつけ、彼女の言葉を反芻していた。
「今日は踊り疲れちゃったわ。こっちはあんたたちが来るよっぽど前から踊ってたんだからね。それに、ちょっと喋り過ぎちゃったみたい。バカなりに考えてることしゃべるのって疲れちゃうわ。でもね、やっぱり楽しく生きたいならお金は必要だと思うの。金がすべてじゃないなんて、綺麗には言えないもの」
俺はベッドの向かいにあるソファに移動して、彼女の話を聞いていた。その時、彼女が突如立ち上がり俺の腕を強引に引いてベッドへ押し倒した。彼女のうつろな瞳と控えめな鼻と口が眼前に接近した。彼女の柔らかな髪先が頬に触れた。今日という一日……いや、これまでの全人生で目にしてきた光景が、彼女の瞳の奥に収められているような気がした。
「あんた、やっぱり可愛い顔してるわ。モテるでしょう。あたしとセックスしてみたい?」
まっすぐに見つめる彼女の目は、それ自体が独立したなにかの生き物のようだった。彼女の瞳の水晶体には、はっきりと俺の顔が映し出されていた。
「いや、やめとくよ。後々後悔しそうなことはやりたくない。キミはもう眠ったほうがいいと思う。若いからって無茶はしないほうが――」
言い終えるのを待たずして、彼女は無理やり俺の顔を両手で強く掴み、口づけをした。自然と抵抗はしなかった。そしてそれは、これまで経験した中でも、長く濃厚なキスだった。俺は彼女のなすがままに受け入れるしかなかった。なぜか頭の中では“男と女なんてこんなもの”という彼女のセリフがこだましていた。唇から離れると頬や耳、首筋に次々と口付けしていった。いつの間にか、俺たちは強く互いの手を握り合っていた。次の瞬間、すでに下腹部まで達していた口づけをやめ、彼女は顔を上げた。そして、そのとき無表情だった俺の顔を、いまにも泣き出しそうなせつない目で凝視していた。
「はい、これで終わりよ! あたしもう疲れちゃったわ。続きはまた今度ね。あんただったらいつでも相手してあげるわ。今日は一緒に寝ましょうよ。くれぐれも寝てる間に乱暴したりしないように」
彼女は俺がそんなことをする人じゃないとわかっていながら、無意味な釘を刺した。
キングサイズのベッドを二人で共有するのは簡単だった。布団を肩まで被ってからものの数分で、彼女の安らかな寝息が聞こえ始めた。この街には、彼女のような人間がたくさんいるのだろうかと考えていた。少し悲しい気持ちになったけど、誰もがなにかを求めて生きていることだけは確かだと思った。彼女の寝顔を見ていると、明らかに心を許しはじめている自分がいた。幼少期より、いろんなことから距離を取ってきた自分。彼女は不思議と俺の心に接近してくる。重厚な垣根を身軽に超えてくる。これが好きという感覚なのだろうか。愛というものなのだろうか。
しばらく、俺の目線は彼女の寝顔と天井を往復していたが、結局ソファで寝ることにした。ひとつのベッドで誰かと共に眠ること。自分にはその資格がない気がした。いつか自分が自分にその資格を与えるときまで、安易に他人に寄り添うのはやめておこうと思った。
ソファは、人ひとりが寝転がるには十分の大きさだった。備え付けのクッションを枕にして目を閉じると、穏やかに意識が落ちていった。
3
見慣れぬ天井が視界を覆った。枕にしていたはずのクッションは床に落ち、誰かに拾い上げられるのを待っているかように見えた。ベッドに彼女の姿はなかった。安物の腕時計の針はすでに午後一時を指しており、ベタついた身体を洗い流すため、素早くシャワーを浴びた。さっぱりしてバスルームを出ると、いささか小腹が空いてきた。俺は、なにか食べ物はなかったかと周囲を物色していると、黒いガラステーブルの上に置かれた一枚の便箋が目についた。二つ折りにされたそのカラフルな紙は、彼女が残していったものだと直感した。備え付けの冷蔵庫にもなにもなく、空腹は外で満たすことにした。身支度を終えると、手紙を手に取りソファに腰掛けた。紙の間にはしっかりとホテル代が挟み込まれていた。そして、青色のボールペンで書かれた文章をゆっくりと読み始めた。
「ステキな少年くんへ。昨日はありがとう。あんまりホテルでの記憶はないんだけど、あなたのことすっかり気に入っちゃったみたい。あたし、夜は大抵あのダンスホールにいるから、もし気が向いたらまた来てちょうだい。待ってるわ。あたし野暮用があるから先に出るけど、起きたら少しでも学校には行くこと! あなたは他の人と違って、不良にも優等生にもなれる奇特な人なのよ。それじゃ、また近いうちに会いましょうね!」
俺は頭のなかで、彼女の不器用なダンス姿を思い出していた。彼女は連日あのダンスホールへ通い、いったいなにを探しているのだろうか。それは、見つかるようなものなのだろうか。次に思い浮かんだ彼女の姿は、さみしい影を落としながら、小さな歩幅で歩いている後ろ姿だった。昨日彼女を抱いていたら、なにかが変わったのだろうか。もっと清らかな気持ちで、今日という日を迎えることができただろうか。
表現しがたい気持ちが思考を支配する中、俺は一応学校へ向かうことにした。授業はとうに始まっているが、無断欠席よりマシだろう。部屋を後にする直前、俺は彼女の残り香を纏ったベッドをしばらく見つめていた。
あの日以来、例のダンスホールには通わなくなっていた。なんでも、のぼるいわく、十代の人間はあまり歓迎されず、おもに社交の場として認知されたい運営者の思惑が、サービス面などにあらわれていたらしい。俺も特別イカした場所だとは思わなかったし、彼女との出会いがなければ記憶からも消え去ってしまっていただろう。
「また新しい遊び場を見つけないとな!」
めげる様子が微塵もないのぼるは、次の店の検討に頭を切り替え始めているようだった。俺はもちろん彼女のことが気になっていたが、積極的に会いに行くつもりもなかった。衝動的な気持ちに扇動されることはあったが、あえて自制することで自分を成長させようとしていた。俺は以前より、早く大人になりたいと思うようになっていた。少なくとも、思春期というやっかいな時期を早く乗り越えたかった。彼女と会ってもっと話がしたいけど、欲望に負けるのもイヤだった。なにより、あのダンスホールに行きさえすれば、いつでも彼女に会える。この安心感が、あの場所に足を運ぶのをことごとく後回しにしていた。
二週間後の朝、俺は珍しく早起きして、自宅のリビングで朝食をとっていた。誰も見なくてもついているテレビからは、コメンテーターの声やアナウンサーのリポートが聞こえる。どうやら朝の情報番組のようだった。オレンジジュースを注ぎ、斜め前にあるブラウン管のモニターに視線を向けると、あのダンスホールが映し出されていた。あの日限りとはいえ、あの特徴的な円形の建物を見間違うはずはなかった。右上に表示されているテロップには『◯◯町少女殺傷事件!』との文字が読めた。俺は妙に冷静だった。しかし心臓の鼓動は早まっていた。それからは一瞬も目を離さず、集中して短いニュースを最後まで聞いた。どうやら、十七歳の少女が首を切られて殺されたようだった。様々な感情が押し寄せてくる前に、食べかけのご飯を懸命に頬張った。まだ登校時間に余裕はあったが、じっとしていられず学校へ向かった。
こういう時の杞憂は当たってしまうのが世の中の理だ。その日、事情通の友人から詳細を聞くと、あの日に出会った彼女が被害者であることがわかった。あのダンスホールで踊り明かした帰り道、女友だちと二人で歩いていた彼女は、複数の若い男たちにドライブに誘われた。そしてドライブやゲーセンでひと通り楽しんだ後、千葉方面へ向かった。その道中、友だちは眠ってしまった。すると、男たちが強引に彼女のバッグを奪おうとしたので、彼女は必死に抵抗した。強盗だけが目的であれば、潔くバッグを渡して逃げていれば助かったかもしれない。しかし、彼女の激しい抵抗は果物ナイフで首を切られるまで続いた。死因は失血死だった。さらには、両足のアキレス腱まで切られていたことが後になってわかった。睡眠薬で眠らされていたもう一人の友だちは、金目の物を盗られただけで命を奪われることはなかった。
俺は自分でも驚くほど冷静だった。怒りや憎しみといった類の感情はなかった。もちろんこうなることを予期してわけでも、覚悟していたわけでもない。ただ、ある種の危うさのようなものは感じていた。もっとも、それで俺にどうにかすることが出来ただろうか。あの時、彼女を受け入れていたら、彼女は死なずにすんだのか。あの時、彼女と二人であのダンスホールを出なければ、こんなことにはならなかっただろうか。せめてもう一度、会いにいけばよかったのだろうか。俺は冷静に思考しているつもりだったが、考えていることは身も蓋もないことばかりだった。現実に彼女は死んでしまった。もう踊れなくなってしまった。会話を交わすことも、あの笑顔を振りまくことも叶わない。人間がひとり死んだ。この世界ではあまりにもありふれたその出来事が、十六歳の人間にとって身近な人の死というものは、ほとんどフィクションの延長としか思えないことがある。シャボン玉がパチンと弾けるように命が終わる。昨日いた人が永遠にいない。俺の陳腐な頭では、死という観念をなにも処理できなかった。詳しい事件の内容を聞き終えたのは昼前だったが、その日はもう授業には出なかった。
エピローグ
数週間後、寒さは例年通り厳しく、人々が身を寄せ合う季節がやってきた。沈みゆく夕陽が高層ビルの隙間に消えてゆく時間帯。小学生のときからギターが趣味だった俺は、歩道橋の上でひとり歌っていた。これまで何度かこういうことをやったことはあったが、習慣化することはなかった。この歩道橋の上の、ちょっとした広場から街を見渡すのが好きだった。今日は事前に校内で告知していたこともあり、友人の姿やどことなく見覚えのある顔もちらほら見えた。人前で歌うことにさほど抵抗はなかったが、今日ははじめてオリジナルの曲を用意してきており、少し緊張していた。
いつものようにアコースティックギター一本での荒削りな演奏とガラ声で精一杯歌った。歩道橋に直通するオフィスビルの二階からは背広を着たサラリーマンが頻繁に出入りしていた。たいていは怪訝な顔を浮かべながら足早にかけてゆく。たまに足を止める人もいたが、ものの数分で去っていく人ばかりだった。お気に入りのバンドの曲をいくつか演り終えた頃には、三十人くらいの人たちが一方的な視線をこちらに向けていた。そして、次が最後の曲。はじめて披露する曲。俺は、寒い中ここまで聴いてくれた観客に向かって深々とお辞儀をしてから語りはじめた。
「えっと、今日はこれが最後の曲です。えー……これから演る曲は……実ははじめて作った曲で、あの……いちおう作詞とかも自分でやったりして、ちょっとあんまり上手じゃないかもしれないけど、よかったら最後まで聴いてください。曲名は『孤独なダンサー』」
安いダンスホールはたくさんの人だかり
陽気な色と音楽と煙草の煙にまかれてた
ギュウギュウづめのダンスホール
しゃれた小さなステップ
はしゃいで踊りつづけてるおまえを見つけた
子猫のような奴でなまいきな奴
小粋なドラ猫ってとこだよ
おまえはずっと踊ったね
気どって水割り飲みほして 慣れた手つきで火をつける
気のきいた流行り文句だけに おまえは小さくうなづいた
次の水割り手にして 訳もないのに乾杯
こんなものよと微笑んだのは たしかにつくり笑いさ
少し酔ったおまえは考えこんでいた
夢見る娘ってとこだよ
決して目覚めたくないんだろう
夕べの口説き文句も忘れちまって
今夜もさがしに行くのかい
寂しい影 落としながら
あくせくする毎日に疲れたんだね
俺の胸で眠るがいい
そうさおまえは孤独なダンサー
この日いちばんの拍手が小さな空間に鳴り響いた。どのように演奏し、どのように歌ったのか覚えていない。終始目を閉じて歌っていたような気がする。そして、その瞼の裏には赤いドレスを揺らし、ぎこちないステップで踊る彼女の姿がはっきりと焼き付いていた。目を閉じて、この曲を歌えばいつでも会える。俺は、ようやく小さな一歩を踏み出せた気がした。
この『ダンスホール』という曲は、当時十六歳だった尾崎豊が、自身も通っていた新宿のディスコで実際に起きた事件をもとに作った歌らしいです。
そして、この曲はデビューのきっかけとなったオーディションで披露した最初の曲でもあり、二十六歳で亡くなる前の最期のツアーにて、人前で歌った生前最後の曲もこの『ダンスホール』でした。