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俺の娘とゴミ掃除する平凡な日

後片付け、なう。

慌ただしく人々が駆け回る。

戦の後始末で、バルバロイの私兵は戦場跡地の後片付けに大忙しだった。

陣頭指揮はアレクで、アリーナやカノープスも手伝っている。

本当は死体や怪我人もまだ完全にはかき集めた訳ではないので、子供達には余り見せたくはなかったのだが。

死者を悼む気持ちが強いようで。

止めても聞かずに動いていた。

俺の筆頭執事のナバール爺は、楽しそうに。

「アレク様に似たのでしょう。」

と笑ってやがった。

武器を手に取り戦えば、自身を含め無事で居られる保証など無い。

殺す覚悟も殺される覚悟も出来ない者は、戦場で簡単に命を散らすだろう。

まぁ、誰だって戦争なんかやりたくないが。

人が三人集まれば、思考の違いや護るものによって争いが産まれる。

前世の日本だって、仮初めの平和に居たけれど。

歯車が狂えば、又戦乱に戻るかも知れない。

まぁ、こっちに転生しちゃってるからなぁ。

あちらの事はもう無縁だし、なるたけ考えない事にしてるけどね。

アリーナ達が、今回の事で。

今後どう生きていこうか。

どう生きるべきか。

考えて未来を紡ぐ先を、眩しい太陽を見上げて。

良い方に思考してくれることを願った。

あちこちに指示を出しながら、国境門をくぐる。

土魔法での補強がまだ終わっておらず。

散らばった瓦礫回収班が、ドタバタ駆け回る。

ちょっとくたびれた傷だらけの壁に、俺はそっと手を触れる。

今の俺のようだ。

アリーナが産まれカリナが亡くなってから、やっと平穏を迎えられた。

長い長い闘いの日々。

あちこちに根回ししたり、アリーナ達が不幸から遠くなるために走り回った。

「ごくろうさん、もう少し頼むわ。」

精霊に感謝の気持ちを小さく呟いて、アレクは大きな土魔法を駆使して。

一気に広範囲の壁を修復した。

手伝いに来ていた魔法を見たことのない庶民達が、驚いていたり、腰を抜かしたりしたのは別の話。


「お父様、お昼にしましょう。」

アリーナとカノープスとナバール爺が、ゴザとバスケット籠を持ってこちらに声を掛けてきた。

(王族とか公爵辺りなら、地べたに座る事を嫌悪しそうだが。

俺は農地も手伝う地属性の変り者辺境の伯爵なので、皆慣れたらしい。)

本人達は、恋仲を俺に隠している様子だが。

ああやって並ぶ姿は、もう若夫婦のようだ。

少し前のフィン殿の婚約の一件以降。

意識が強まったのか、刺激されたのか。

仲睦まじさが幼なじみのそれよりも。

恋人の甘いそれに変化していた。


カノープスの身分が表沙汰に出来るまであと少し。

俺はもう一頑張りしますかね。

「ああ、今行くよ、アリーナ。」

満面の笑顔で疲れを掻き消す。

痩せ我慢はナバール爺にはバレているみたいだが。

子供らには気付かれては居なかった。


比較的被害の薄い公園。

すでに修繕された場所にゴザを広げる。

ゴザの前で、俺にナバール爺が浄化魔法を掛ける。

それに頷いて、ゴザに座った。

「お父様、今日は私もナバールを手伝ってお弁当作ってみたの。」

うふふ、と笑うと。

アリーナは二つ有る一つのバスケット籠を差し出して来た。

「そりゃ楽しみだな。

…え?」

そこには、小さな俵おにぎり・稲荷寿司・サンドイッチ・唐揚げ・タコさんウインナー・ミニハンバーグ・星形のクッキー型で抜かれた茹でたイモと人参・茹でブロッコリーとポテトサラダなどが並んでいる。

この国…いや、世界には無いおにぎりや稲荷寿司、お弁当の見せ方。

日本のお弁当定番ラインナップだ。

口の中が乾く。

誰が作ったと言った?

ギギギとアリーナを眺める。

「へぇ?珍しいランチメニューだね?」

「うん?えっとね、なんか思い付きましたの。

可愛いでしょ?」

「そうか、確かに可愛いお弁当だね。」

「お弁当?えっと?食べて下さいまし。」

しかし、お弁当という言葉には首を傾げていた。

まさか、転生者?

と言う気持ちを押し殺して、食べる。

懐かしい、前世母の味付けにとても近かった。

気付くと涙が溢れた。

「アレク様?」

カノープスが涙に気付く。

「あぁ、目にゴミが入ったみたいだ。」

ごまかして涙を拭いた。

転生者でも何でも良い。

アリーナのお弁当がおいしかった。

これでいいではないか。

もし転生者の記憶が薄いのなら、無理に思い出す必要の無い事なのだろうから。

俺からは触れないで置くことにした。

だだ何となく、彼女が死に別れた娘のような気がしてならなかったのだ。

ならば尚の事、アリーナの幸せの為に生きた日々が報われる。

いや、それは図々しいかな?


その後、アリーナのお弁当は毎日続けられ。

配下達にも時折配られ。

いつしかバルバロイ領地のご当地料理として浸透していくのだった。




アレクは少し安息を得た。


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