憧れの伯爵様とダークマター
イリシアたん、まじメシマズダークマター製造機
「あ、あのこれ作ってみましたの。
食べて下さいませ?」
渡すまでは、喜んだアレク伯爵様の姿とか、女性として感銘受けた姿とか、ともかく色々妄想してた為。
今は徹夜で変なテンションである。
アレク伯爵様に、手作りクッキーの入った箱を差し出す。
「ん?ありがとうございます。」
優しい笑顔で受け取って下さったアレク伯爵様を直視出来ずに、もじもじしていると。
箱のリボンと梱包解いて開けたアレク伯爵様が、固まった。
「そう来たか…。」
小声で何か呟くと、ふいにクッキーを一枚掴んだ。
「イリシア様、はい目つむって口開けて。」
え?心の準備が?
赤くなってわたわたしつつ目を閉じる。
そして口を開けると。
アレクが持っていたクッキーが、アーンとばかりに放り込まれた。
「…んんっムグ⁈」
とても塩辛かった。
粉っぽくて、じゃりじゃり。
半泣きでげほげほむせると、少し困った顔でアレク伯爵様は無情に告げる。
「味見して無いでしょ?
ダークマター作っちゃ駄目だよ?
人にあげるもので、食べ物は味見必須だよ?
あとお菓子はレピシ通りにし無いと、失敗しやすいんだ。
アレンジは、料理しなれた人に許された特権で、作り慣れないうちは愛が隠し味に成らないからね。
次からは気を付けなさい。」
駄目出しされた!
「はい、口直し。」
渡されクッキーは、アレク伯爵様手作りだと後で知る。
口の中でさくさく歯ごたえ、ほろほろにとろける。
めちゃくちゃ美味しいんですけど!
ダークマターが何かは分かりませんが。
このまずいクッキーの比喩なのは分かりました。
定期的に訪れるバルバロイの湖畔のお城で、時折こうやってお菓子を持ってくる。
今だ食べてもらえない。
実家では貴族娘は料理したら怒られるから練習出来なくて。
学院寮の個室のキッチンでの独学だ。
しょんぼり落ち込んでいると、アリーナがやれやれと呆れた様に肩を竦め。
仕方なさそうにイリシアに耳打ちする。
「今度イリシア様の寮のお部屋に行った時、私が料理教えますわよ?
だいたい食べてすら貰えないのって、流石にムカつくでしょ?
特にお父様料理好きだから。
変な料理には容赦無いのよ。
私もかなり料理習った時、手厳しくやられたからね。
あ、でも認められたとしても、お父様は上げないわよ?」
我ながら、今だにスタートラインにすら立てない事態に愕然とするしか無い。
あとこのファザコン、たまに殴りたくなる衝動を押さえつつ笑顔で料理習うことに同意した。
後日、イリシアのあまりの料理音痴っぷりに早々と匙投げるアリーナだった。
懲りないイリシアは、料理を頑張り食材を無駄にして行くのでした。
メシマズダークマター製造機をイリシアたんかアリーナたんにするか迷って。
育った環境的に、イリシアたんにしました。
通常の貴族だと、イリシアたんみたくなる。
きちんと仕込まれたアリーナは、身の回りの事は一通りこなせる様教育されて居るので。
ある意味貴族では風変わりかも。
料理は愛だけではどうにも成らんです。




