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甘い毒と黒い夢

第一王子アルドノアスの話です。

ベッドで触れる手の先に居るオンナは、先程までの情事に、もう自我が残って居るのか分からない有様だ。

美形な自身の顔立ちを使い、甘い言葉を耳元で囁き、籠絡し。

強い媚薬を飲ませベッドに引きすりこんだ。

彼女の最悪な初体験相手は私だけでは無い。

私が楽しんだ後、配下二人にも楽しませた。

嫌がり泣き叫んだが、媚薬が彼女の身体の抵抗を薄くする。

力でねじ伏せられ、言葉で嬲られる。

繰り返されたそれらは、彼女を人形のように変え果てた。

そうやって、身持ちを崩したオンナを脅し使って親も脅し。

沢山の勢力を取り込む、はずだった。

見持ちの悪いおつむの弱い、下級中級クラスの貴族はそうやって勢力下に置けた。

だが、どう言うわけか、上級貴族の場合はうまくいかなかった。

知らぬ間に、護衛が増え。

危険を知らせたり、防犯ベル的な守りのアクセサリーを身に付ける者も増えた。

淑女の身を守る術として、性教育が徹底強化されて居たのだ。

若過ぎる性交渉や無理やりは。

身体が出来上がっておらず。

最悪子を宿す場所を破壊する事がある。

特に、複数の相手と関係を持つと、悪い病気(エイズや淋病や梅毒)に感染し、死ぬまで惨たらしい症状で過ごす可能性などを知らされた。

流石に、年若い乙女のみならず。

その可愛いい娘を溺愛する親は恐怖した。

中には、身に覚えのある者も紛れて居たのかもしれない。

各地の貴族の子供の教育係りに、アレクの手勢を紛れ込ませた。

ついでに、アルドノアスの女癖の悪さも学院入学前にそっと流して置いた。

お陰で麗しの第一王子では無く、放蕩王子として遠巻きにされた。

元々、他国から来た王妃を支持する者が少ない地盤だ。

地道にやって居れば、比較的中立派を揃え。

比較的まともな陣営が、多少手に入れられたのだろうが。

親子揃って堪えが効かない。

手軽て悪辣な手段ばかり選んだ結果、王位継承権が最近危うくなっていた。

例え悪辣な手でも、立ち回りが上手ければ状況が変わったいただろう。

しかし、ゲームの世界観や勢力図をかなり覚えていたアレクが、じんわりと勢力図を塗り替え。

一枚上手な対応でやり込め続ければ、思考停止した王子では、太刀打ち出来ないだろう。

アレクはチートでは無いが、前世から比較的有能だった。

先読みと状況判断と、人付き合いが上手いから周囲が助けてくれるだけだ。

そんな人物が努力して、持って居る知識も財力も領地育成も、娘の為に足掻いて絞り尽くし。

世界観を壊し、邁進した。

アルドノアスからしたら隠れラスボスだろうか。

自分を甘やかし、他人を大切に出来ない。

そんな放蕩王子らしい結末に、進んで飛び込んで居ると気付かない。

だが、とうとうアルドノアスはアリーナと出会ってしまった。

美しい人形めいた顔立ち。

サラサラの輝く艶やかな長い銀髪。

仲良し達にはほがらかに笑い、その美貌を無自覚に輝かす。

初めは、ただ他のオンナ達のように使い潰したかった。

だが今は違う。

あの笑顔が欲しかった。

あれは裏の無い笑顔だ。

王宮にあんな笑顔のものは居ない。

だが、私には向けてもらえない。

人形のような無表情と、淡々とした冷淡な言葉を紡ぎ。

そこに、陽だまりのようなあの笑顔は無い。

あれが欲しくて堪らない。

いつもの調子で抱き潰せば。

一生、あの笑顔は手に入らない事だけは分かっていた。

少し優しくして見た。

反応は変わらない。

スルーだ。

甘く囁いて見た。

誰もがウットリと反応を返すのに、彼女には嫌そうな顔をされた。

「そんなふうに甘い毒を吐くように、軽く言葉を紡いでいたら、大切なものが何も残りませんわよ?」

やっと返って来た言葉が、何とこれだけでにべも無い。

毛嫌いしたような言動も無く、礼儀に乗っ取った挨拶は返してはくれる。

しかし、私には微笑んではくれない。

調子が狂う。

どうして良いか分からない。

そうこうするうちに、取り巻きのマゼランがアリーナにちょっかい掛けて、アリーナの側近を手酷く怪我させてしまう。

いつもの強引な手段に、俺が中々出ない事で焦れたのか。

あるいは、あいつが無自覚にアリーナに惹かれていたかわからなかった。

流石にあいつは男爵子息見分。

謹慎位でその時は済んだ。

だが恐ろしい報復はしめやかに、密やかに始められた。

ダガー男爵家に圧力が掛かった。

物流が遅れがちになり、悪い噂が広まる。

仕事も減り、他領地に逃げ出す人が増えた。

何処から薦められたか分からない新たな事業で借金を抱え。

やってはいけない公金に手を出し。

バレて捕まり男爵家はお取り潰しに。

マゼランが退学した。

これは多分報復だ。

他の連中には分からないかも知れ無いが、私は気付いて真っ青になった。

これは警告。

娘達になにかしたら、次は無いと。

私が馬鹿な事ばかりしていると、何処からか聞いて知っているのだろう。

私だって、普通に皆と遣り取りしたい。

だが、私は他国から来た王妃の息子。

そう言う馴れ合いは許され無かった。

この国も考慮するが。

母の祖国とも上手く付き合わなければならない。

隙を見せれば明日は我が身。

ゾクリ、と震える手を誤魔化すようにギュッと握る。

ある日、父王に呼ばれ晩餐会に出た。

ふと、父と仲良さそうに一人の男が会話している。

父が派手目な美貌なら、その男は何処から落ち着いた優しげな風貌で。

その美貌は誰かに似ていた。

父があんな風に素を出すのは初めて見た。

私達が幼い頃から彼の素を見られる者は居ない。

それだけ信頼する相手なのだろうか?

軽い嫉妬を覚えた。

一瞬男がこちらをチロリと向いた気がした。

その視線は眼光鋭く、射抜くような敵意が篭っていた。

しかし、それは本当に一瞬で、気のせいだと思いたい。

直後、まるで何処かで見た陽だまりの笑顔を浮かべた男に、見た事も無い悪戯めいた微笑を浮かべる父が談笑を続けている。

耳を済ませると、周囲の貴族達が囁き会う。


「本当に仲の良い御学友様だ。」

「二人が揃うとやはり華やかね。」

「お近付きになりたいけど、のらりくらりとかわされてしまうわ。」

「アレク様が後妻を娶らないのは、亡くなられた奥方と一人娘を溺愛しているからだという噂よ。」

「お優しくて強くて一途なのね、女冥利に尽きるわ。」

「そう言えば、一人娘はアリーナ様って言うご両親に似た美少女らしいぞ。」

「あぁ、確か第一王子と同級生らしいな。」

「とても仲睦まじい父娘らしい。」

聞こえる会話は、どれもそれと似たり寄ったりだった。

アリーナの父親。

一瞬ほうけた。

そして、青ざめて先程の男を眺める。

髪色と醸し出す気配。

それに、顔立ちはともかく、何よりあの笑顔は見覚えがあるアリーナの笑顔に似ていた。

アレガオレノテキ。

口の中だけで呟くと、握り締めた手に力が入り、背中に変な汗か出る。

薬などを使わずとも、人心や父すら懐に入れる手腕、周囲への好感度。

何よりあの男爵の没落への手は、この国内で聞いた事も無い。

彼は自分の手の内にある者に害意向けた者には容赦しない。

そう行動で示した。

露骨では無いが、緩やかに徹底的に。

思考に落ちた私は気付かなかった。

父王が、少し複雑そうに。

何処か少し悲しげに私を眺めていた事を。


学院で変化が起きる。

王妃派第一王子派の貴族が、いつの間にか沢山の没落したり、離れ始めたのだ。

勢力を削り取られていたと気付いた頃には時既に遅く。

私は孤立し始めていた。

城に帰れば母は金切り声をあげ、私を追い詰める。

何もかも上手くいかない。

側室の子供がこのままでは王位継承するかもしれない。

母国の為にこの国を食い潰したかった母が、じたんだを踏む。

ここまで来てようやく自覚した。

私は母を抑え、この国の為に生きて居れば。

こんな有様にはならなかったのだと。

愚かな母は、母国の人間と通じ、この国に攻め込ませようと企んでいた。

流石にこれ以上は駄目だと思った。

今までの私なら乗っていただろうか。

興醒めした目で母を眺めている今は、それがどれ程愚かしいか分かる。

だから、内密に父王に告げた。

父は少し驚いた後に、見た事も無い優しい笑顔で私を抱きしめた。

「アルドノアス…お前を殺さずに済む。」

私は声も無く、涙を流して頭を撫でられ続けた。

その後、父は母の企みを暴き、離縁し祖国に送り返した。

何も知らなかった事にされた俺は、国内で王位継承権を剥奪され公子身分に落ちた。

私も多少はやらかしていたから、それを父が知らないとは思わない。

多大なる温情に感謝した。

何故かアレク伯爵預りになって、今はバルバロイ領地の一つ、キリガクレで若き余生を過ごしている。

ここに居ると、たまにお忍びで来る父は、見た事も無い笑顔で私を構ってくれる様になった。

アレク伯爵は敵意を向けなければ、とても人懐こく、温かな。

けれどとても厳しい人だった。

彼から貴族の再教育を受け直す。

王宮で習わない事がかなりあった。

もしかしたら、一般常識も教えているのかもしれない。

物知らず過ぎた以前の自信満々な自分を恥じるしか無い。

そのうち、アリーナの側近が私とは腹違いの兄弟なのが発覚し。

彼も又公子身分になる。

そして、アリーナと婚姻してバルバロイ家の婿養子に収まっていた。

アリーナに心惹かれていた私だって、妬ましい気持ちは確かにあるが。

知り合った頃から二人は思い合って居たのは誰もが知っていたから。

まあ、仕方ないか、位に感じた。

あの時、私が愚かにアリーナを誘惑して。

その身を穢し壊して操り人形にしていたら。

今とは何か違う未来だったかも知れ無い。

それが出来ない位には、アリーナもカノープスも今では大切な存在になっていた。

それは私の心にとどめて、一生言えなくなったけれど。

父は分かってくれているから、今はそれで満足だった。

母にだけ溺愛され、父に愛されずに居たあの日々よりも、今は心が穏やかだ。

父は私を愛してい無いのでは無く、とても私の将来の事を案じてくれて居たのを知ったから。

もうバカな事はしないと誓った。

母は甘やかされれば、何処でも生きられるから、あまり心配していない。

それに母の溺愛は重く煩わしい。

他国で既に再婚したのは。

父の知らない浮気相手で、そいつと上手くやっていることだろう。

だが私は存在を認められたかったから、母に依存していたのだ。

今は父に存在を認められて居ると分かって居るから。

今度は自分の足でしっかり立つ努力をしている最中だ。

母から距離を置いても、再婚に邪魔な子供扱いの今はむしろ喜んで居そうだ。

母のそういう無神経で思い遣りに欠ける部分は、私も父も苦手で。

だからこそ、父と疎遠になったのだろう。


鳥の鳴き声と蝉の鳴き声が彼方此方で響く。

静かな山間に夕日が差し込んで、温泉地を彩る。

この自然の美しさは、私の心を落ち着かせてくれた。

もうじき秋になれば、美味しい作物が沢山取れて。

それを目当てにこの地に観光しに来る者も増えるだろう。

私は、いつしかこの静かな環境を好む様になって居た。

ぐるりと辺りを見回して、私はバルバロイ領地の私の館に戻って行った。










アルドノアスはデレタ!

彼も又父王と折り合いが悪く、やけっぱちに母の傀儡だった。

という話です。

なので、元々世間知らずの子供は大人の悪い影響を受けやすい。

ならば、周囲の悪い大人の悪い手口に手を染めさせなければ良いのだけれど。

まずは王妃派第一王子派の手勢の大人を潰して行った。

そこまでがアレクは苦労して根回ししたり、色々立ち回ったようです。

王様も一緒で、彼は出来れば子供は救われて欲しかったけど。

下級はともかく、ゲーム通りに上級貴族になにかやらかしたら助けるのは難しい。

対人は不器用なので救い方が浮かばず。

まぁ、ぶっちゃけアレクに丸投げしてた。

ある意味王子は父ルートで助けられてます。

ただ、王子が自覚したら何とかなる程度の頭は有ると思いたかったのもあるみたいです。

王妃は手遅れな人なので、最終的に離縁しました。

アレクがなんだかんだと没落した王子の世話をしてしまったのは。

前世で子供を助けられなかった為に、つい無意識に動いてしまうようです。

それは王も、おなじです。

では又気が向いたら書きますね。


あ、そろそろ気付いた方も居るかも知れませんが、アレク伯爵シリーズは、親バカとファザコン中心です。


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