俺の娘が男主人公を拾って来たので従者にしてみた
とうとう王様の正体が?!
そして、とうとう男主人公をスチル付でゲットしちゃったアリーナを、オロオロしながら見守るパパさんズ、の巻
急に駆け出して、まだ火災に気付いなかったアレクの手を、アリーナは引っ張る。
館の庭からバルバロイ領地の一つ、暗黒街バリアラまで引っ張っていかれた。
館からはさほど遠くはないが、彼女は迷いもせずにそちらへ向かう。
小高い丘を登り切る前、俺の手を振り切って凄いスピードでアリーナは走り出した。
「ア、アリーナ?」
「ちょっと待ってて、すぐ戻りますわ。」
そして、すぐに戻ってきた。
呆然と燃え盛るバリアラの街を見下ろしていると、アリーナが声をかけてくる。
どうしてアリーナを追いかけられなかったのかアレクは分からなかった。
だが、放火された濃厚な焔の魔法に紛れ。
俺を守る優しい精霊の残香のような魔力が感じられた。
アリーナが無自覚に、精霊魔法で俺を守り。
この安全地帯に縛り付けた。
俺の魔力でねじ切れ無くもない軽い術だ。
だが呆然としてしまいそれどころではない。
アリーナは知らないしゲーム設定にも無かったが。
精霊達に愛されていたようだ。
だが、ゲームスタート時にはそんな力は無かったから。
自然と無くしたか、力を封印したか。
それに、今まで感じられなかった強制力に背筋が冷えた。
これは、イベント?何の?誰の?
放火イベントか?
「パパ、この子助けたいの。」
アリーナの声に我に返る。
どうやら術が解けたのだろう。
目の前の少年は、ボロを纏い煤も纏って身汚い。
だというのに、美しい顔立ちと不思議なオーラを纏っていた。
庶民や奴隷とは思えないオーラは、燃えさかるバリアラではかなり浮いただろう。
そして、炎上するスラムを背景にアリーナに手を引かれた姿に見覚えがあった。
スチルだ。
カノープスという隠れキャラ。
男性向けゲーム主人公の思い出に、アリーナに助けられたシーンのスチルが有ったのを思い出す。
ゲームが動き出している事に、ショックを受けた。
ささやかな平穏が壊れてしまうのか?
良くない感情に引きずられそうになって、頭をふった。
違う、そうじゃない。
ここはゲームかもしれない。
ゲームに似たような世界かもしれない。
でも、俺はここに生きている。
ゲーム強制力に負けて動かなければ、不幸に落ちるのはアリーナだ。
伯爵としての力、領地の強化と戦力自衛力底上げ、民の人心を掌握、これらはすぐには完成しない。
だが、ゲーム本編前には確立できるはずだ。
小さく深呼吸して子供達に向き直る。
俺が取り乱したら駄目だ。
そうして、アリーナの願い通り、カノープスを引き取って、ゲームではそのまま貧民街においたが、俺はアリーナ付従者にしてみた。
基本的従者教育以外色々、こっそり帝王学貴族学も教えた。
アリーナの支えになれるように、王族に戻っても恥をかかせないように。
所で何でカノプーってあの娘は呼ぶのか聞いたら。
カノプー守っていた人の守護精霊達が、あの放火の災害の中助けを求めて飛び回っていたんだそうだ。
「カノプーを助けて、あの子はまだ死んじゃいけないの。」
そう叫び回っていたらしい。
アリーナには聞こえた精霊の声は、残念ながら俺には聞こえなかった。
一般的な精霊の力は、目に見える高位精霊と違い、精霊術師を通さないと元々弱いので、精霊力の薄い大人は、特に聞き取れない物だそうだ。
だからカノプー…ね。
あれだけ涙目で、それ止めてと言っても止めないのは。
アリーナにとって、カノプーが本名と思われていそうだ。
身綺麗にして、身形を整えた。
やはり王族隠れキャラ攻略者で男主人公。
とんでもない天使美少年が現れた。
属性盛り過ぎとは思っていたが。
はぁ、眼福眼福。
アリーナと並ぶと天使二人じゃないか。
主人公補正恐るべし。
後で知ったのだが、アリーナ用のコスプレ衣装。
時々内緒でカノープスにも着せていたらしい。
(シノビにしたアカネ情報である。
孤児や奴隷は名無しが多く。
アカネと言う名前も俺がつけた。)
流石おれの娘だな、良く分かっている。
って言うか見たいと言うのだけは我慢した。
男の娘見て何かが目覚めたら危険が危ないからな。
あぁでも見たいなあ。
数年後、お忍びでゼボネアスが俺の湖上の城の館に来ていた。
貴族会議が紛糾しているのに。
色々やらかし、バレて数が減った王妃派残党が性懲りもなく、会議を騒いで止めまくっていたのも要因の一つだ。
ゲームでは多分勢力拡大していた頃だがら、地味に削られているので焦っているのかもしれないな。
彼らはシスティア王国の勢力を潰し、隣国テーヴェがデネブを使って内部から掌握し。
攻め込んでも攻め込まなくても。
このシスティア王国を、テーヴェの属国にしようと企んでいた。
俺もゼボネアスも分かっているから、水面下で大分奴らの勢力を削った。
全く厄介な女狐と狸爺達だ。
Gのように小さな策謀を沢山巡らせる。
最近は俺の政策を気にし出し、ちょっかいかけてくるようになった。
だが、前世知識と、差別意識の無い庶民や部下達との信頼関係は、通常の貴族と領民のパワーバランスとは別物で。
簡単な技術以外、彼等では真似できないだろう。
無論教える義理も無いから、バルバロイ秘匿事項としている。
正しくは、俺様専用知識集なので、全部日本語だ。
日本人の転生者が見たら分かるかもねレベルの事をラノベ日記風に書いておいた。
アリーナとカノープスには見せたけど。
やはり転生者ではなかったようだ。
分からなかった様子で残念そうにしていた。
だが、目の前に居る男はケラケラと笑っていた。
「お前やっぱり黒歴史作るんだな!」
ゼボネアス、お前もやっぱり転生者か?
知り合いなのか?
誰なんだよ。
一通り笑った後に、日本語で耳元で囁いた。
「ほら、昴はやっばりこういうゲーム好きじゃないか。」
は?
なんで?
何で俺の前世の名前言うんだ?
それに、それを言うのはあの馬鹿しか居ない。
「幸村?」
蒼白になってゼボネアスを、見上げた。
戦国武将みたいな名前は爺様がつけた。
古臭いから、嫌だと歴女に喧嘩売ってた悪友で元旦那。
こいつまでここにいるのか?
国王は酷い目にばかり遭う。
前世の幸村も、元公家の家柄で血の繋がらない家族と良く揉めていた。
知り合った頃も荒れていて。
五月蠅いから俺が拳で征したのは良い思い出だ。
思い出の腹パンとか、可笑しいんだけどな。
何処から恋愛プラグが立ったのか、転生した今でも分からない。
その後からやたらと懐かれた。
あいつはあの時もイケメンだけど面倒くさい奴で。
でも放置するには寂しがり屋すぎた。
家族と縁切りして、あいつは俺の婿養子になったのだ。
こいつは又こんな不幸を背負う人生なのか?
何とも言えない表情を浮かべてしまったらしい。
ポフポフと頭を軽く撫でて離れていった。
俺の言いたいことは筒抜けらしい。
「いつから?」
「ん?」
「いつから気付いてたんだよ。」
「んー?結構前?学生時代にも感じたけどな。
確定したのは、そうだなぁ。
例えばアリーナちゃんの初期設定変更とかカノープスがここにいる事?」
あー、うん俺全然気付いてないや。
相変わらず凄く鈍感だとその目が笑って言う。
「有り難うな。」
「ん?」
「設定ねじ曲げて、息子をカノープスを助けてくれて。
俺馬鹿だからさ、あのデネブ相手だと煙に巻かれちまうんだよ。
お陰でアイシャ…カノープスの母親の方は助けられなかったしな。」
「ゲーム強制力もあったかもしれないぜ?」
「そう言うのも有るんだろうな。
でも、お前には強制力効きづらいみたいだな。」
「強制力はごり押しには反動デカいけど、緩やかな地味な日常的変化には弱いみたいだぜ?
この領地とか、アリーナと俺の関係とか。」
あぁと納得する。
「とりあえず、内緒話したくなったら日本語で会話しようぜ。
スパイには分からないだろうし。
転生者は日本人とは限らないらしいしな。」
呑気に言う国王は、何時もの飄々とした笑顔を向けてくる。
「既に日本語何だが。」
アハハと笑うと、国王は真顔になった。
「カノープスが成人になった時、公子の身分を与えようと思う。
このまま庶子で置くには惜しいし、悔しいんだよ。
出来れば、デネブ達を排除してから公表したい。
手伝ってくれるな?」
「ん?勿論良いぜ。」
「出来ればアリーナちゃんの婿養子にその後してくれよ。
したら、俺ら又身内だぜ?」
「え?」
「答えは、はい か YESだよ?」
「まてよコラ。」
「あー、楽しみだなぁ。」
人の話をスルーして、馬鹿国王は話を進めている。
婿養子と言うワードで、俺の嫁に出したくない心を刺激してなんとも断りづらい。
アリーナがカノープスを意識したら考える。
とだけ答えた。
カノープスは既にアリーナに恋してるのは分かっているが、アリーナは(ファザコンモード以外)クールな女の子に育っていたから解りづらいのだ。
しかし、ゼボネアスは気付いていた。
アリーナのカノープスとの遣り取りや仕草は、幸村を意識し始めた昴ソックリだったことに。
親子だなぁ。
多分多少時間が掛かっても、いずれなるようになるだろう。
そう心の中で、呟いて微笑んだ。
他の話のアレクとゼボネアスの前世話と親バカ話です。
思い出の腹パン祭りは、時々開催されてました。
アレクの前世は拘りの人過ぎて。
古武術風の何か、とかマンガ的な技で実現可能な物を、鍛えちゃうタイプでした。
人に怪我させたり、それをかけることは有りませんが。
それなりに強かった為、気絶させて痴漢撃退とかナンパ撃退とかたまにしてました。
本人は自覚無いけど愛嬌の有るかわいこちゃんなので、武踏派とは気付かれず撃墜。
幸村は腹パン祭りの生贄の一人だったようです。
あ、ここからまたアレク中心に戻りました。
又気が向いたら書きますね。




