アレク伯爵の前世と今世
乙女ゲームに転生したら女主人公のパパになっちゃった?
連載版です。
ある日、順風満帆だと思われた俺の人生に影が落ちる。
「ごめんなさい…私の愛しのアレク。私はもう駄目みたい。」
ぐったりとした様子の妻は産褥で虫の息だ。
元々身体が弱く、産むか子供を諦めろと医者に言われ大人しく従順な妻が産むことを選んだ結果だ。
取り乱している俺は、その事を産み月に近づいてから知らされた。
他国が攻めてきた為。
伯爵家当主であり、優秀な私設騎士団を持つ戦力として、王都に召集され。
その対応で半月館を離れていた為、反対されないよう妻は強行したのだ。
「おお!いとしのカリナ、お願いだから
俺と可愛いこの子を置いて逝かないでくれ。我らにはまだカリナが必要なんだよ。」
狼狽える俺の頭を困ったように撫でると、無理やりカリナは微笑した。
「この子は目元がアレクに似ているわ。そうそう、アリーナって名前を考えたの、私と貴方の名前が入っているのよ。」
どうかしら?ウフフ、と無理やり話題転換する。
暗い話が苦手なカリナらしい言葉にやっと頭が冷えた。
この状態で一番辛いカリナに、辛い別れを感じさせたらダメだ。
ぎゅっとカリナを触れていない方の手を固く握る。
「素敵じゃないか、君に似てきっと美人になるぞ。」
俺の反応に安心したように隣で眠るアリーナを抱きしめ、力尽きたように静かに逝ってしまった。
そんな感じで溺愛する可愛い妻を亡くしてしまうのだ。
娘の出産で身体の弱った妻が、最後に名づけた愛娘の名前と妻の死のショックで前世を思い出す。
この世界が乙女ゲーの世界だとは。
なんてことだ。
もう少し早く思い出していたら、妻を助ける手も多少は有ったのに。
現世は先進医療国だった前世に比べると、どうも水回りも不衛生で遅れている。
その分魔法や聖霊術や神聖魔法なんかで浄化したり病気治療や怪我回復も出来るが。
使える者は数が少なく、ぶっちゃけ緊急時に使えないのだから役立たず。
出産も帝王切開が宗教的にしずらく、技術も稚拙だった。
自然分娩だけに頼れば、そりゃ虚弱は死ねるだろう。
ははは…ハァ、カリナごめんよ。
(片隅に体育座り、なう。)
ともかく、ゲームを軽く説明するぞ。
父と仲が悪くてぐれてしまった逆ハーレム系クレ○ジーサイコビッ○な性悪娘になって、いろんな野郎どもを落としまくる。
痛快駆け引き型乙女ゲー。
そんな主人公が娘だった。
そんな馬鹿な、うちの可愛い嫁の娘がアリエナス。
娘がグレないように、妻の死から娘への対応がおざなりになっていたゲームと違って目一杯可愛がろう。
もちろん、情操教育も淑女教育も勉強も武術魔術もいろいろ教えるけどな。
で、育てた結果がパパ大好きファザコンである。
ふむ、やり過ぎた…だと?!
まぁいいや、とりあえず俺の娘は婿養子取ることを結婚の必須条件にして、嫁には出さん。
嫁に出していびられたり変な輩にまとわりつかれても困るし。
自宅ならまだ俺の目も届くしな。
手習いなので、投稿手間取りました!
続きは気分次第というか、のんびりやってこうかなと。
見てくださった方、ありがとうございます。
よきかなよきかな。
ちょっと慣れてきたのと、長くなりそうなので。
短編を纏めてみました。
短編の方もしばらくは残しておきますね。