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B-BOY秘密列車  作者: 東雲 ヘルス
七夕物語
6/6

フィフスエレメント

火曜日

初夏なのにムシムシする暑い夜。

マサキとエリカは葛西のファミリーレストラン「DOONYs」で食事をしていた。

二人の間には険悪なムードが立ち込めていた。

二人共目の前のハンバーグセットをナイフで弄んでいる。

時々、エリカは肩肘をつきながら、目の前のクリームソーダのストローにピンクの唇をよせる。


「今月もやらなきゃダメだよ。金ないよ。」


エリカが言った。


「解りきったことを何回もゆーな!」


マサキがなげやりに言った。


小柄で金髪のマサキ。20歳

先輩の下で金融屋をやっている。もちろんこの場合金融といってもまともな職業ではなく、その筋のフロント企業だ。

服装は、大きめのTシャツに大きめのハーフパンツ。手にはセカンドバックを持っている。


スレンダーで身長はマサキより少し高い目鼻立ちのすっきりとした美人顔のエリカ。19歳

美容師見習いだが、現在店を飛び出たまま休業中。

キャミソールにミニスカート今どきのギャルの服装。


二人は同じ中学の先輩と後輩であったが、エリカがマサキに告白する形で、2年前に付き合いだした。

初めこそ順調であったが、最近はマサキの仕事の関係のトラブルばかりでエリカにも「「体を売ってくれ」ということになり、二人の間には険悪なムードが漂っている。


「いらっしゃいませ」


店員の声を押しのけるかのように、喫煙席の一番奥、マサキ達がいるテーブルにタツヤが向かった。

マサキの隣の席に着くと、ふんぞり返る恰好で座り、すぐに店員をベルで呼ぶ。

店員がテーブルに到着する前に

「アイスコーヒー」とだけ言って、たばこをくわえた。

タツヤは19歳エリカと小中学校の同級生。

身長180cm 体重95㎏の巨漢でパンチパーマにアロハシャツと金のネックレスというモロにヤンキー丸出しだ。

マサキと一緒の職場で働いてる。

マサキにエリカを紹介したのがこのタツヤである。


「なぁタツヤ。今週も集合な」

眠そうな目でタツヤを睨みながらマサキは言った。


「はい・・・わかりました」

先ほどまの店員に対する横柄な態度とは打って変わって、マサキには従順であるかのようにかしこまってタツヤは言った。


「あと、またこのあいだの後輩君・・・名前なんだっけ?」


「サトシです。」


「そのサトシも呼べ。」


「はい」


サトシというのは、タツヤのさらに一学年下の後輩で、18歳。まだ高校生でありながらマサキ達の金融を手伝っている「仲間」だ。


「さ、じゃあ行くか。」

マサキがそう言うと同時に、店員を呼ぶベルを押した。

すると、奥のほうから、女子高生らしき店員がこちらに向かってこようとした。

すかさずそれを手で制して一目散にマサキたちのテーブルに駆け寄ってきた店員。

ネームプレートには「店長 佐々木」と書いてある。


「あーあ、せっかくあの娘が来ようとしたのに」

とタツヤがニヤつきながら言った。


「ま、いいや、店長ごちそうさん」

マサキは言いながら店長のYシャツの胸ポケットに伝票を入れた。


「あ、ありがとうございました・・」


この店「DOONYs」葛西店はマサキ達の行きつけで、店長はマサキ達の飼い犬と呼ばれていた。

いつも、飲食代は払ったことがなく、伝票を渡された店長は自腹でマサキ達の飲食代金を補填しているのだ。

なぜなら、店長佐々木がマサキ達の「客」だからだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

金曜日

昼頃

ドアを開けると、たばこの煙が視覚、嗅覚を奪う

5~6人の先輩方が電話に向かって吠えている。


「バカヤローー!!コラ!返せねーなら今からそっち行くからよ!旅行の準備しとけや。」

怒号が飛ぶ。

その中を恐る恐る窓際のデスクへ向かう。

隣にいるエリカに先輩方の好奇の視線が注がれる。

本来なら「職場」にエリカを連れてきたくなかった。が、仕方がなかった。

「上司命令」

逆らえるはずもない負のスパイラル。


「お疲れ様です、社長」


「おつかれ」

宗像が言った。

ピンストライプの紺色のスーツに白いワイシャツ。

色黒の艶の良い肌にオールバックに撫でつけられた黒い髪の毛。

見た目30代の貫録を持つ25歳の若社長といった感じだ。

表情ではにこやかな感じだ、目は笑っていない。

宗像は自分のデスクのにある「客」用のソファーを指さし言った。


「まぁ座れよ。」


普段、そのソファーに座っていいのは「客」か「客人」だけだ。

つまり、従業員であるはずのマサキは「身内」扱いではないということだ。


「社長。あと3日、いや、あと1日待っていただけませんか・・・」

マサキは懇願する。

エリカも正樹に倣い頭を下げる。


「おいおい。こんな可愛いお嬢ちゃんにまでお前のマネさせるなよ。まぁとりあえず座れよ」

笑顔で言う。目は怒っている。


うなだれるように二人はソファーに腰を下ろした。


「お前が借りた金は20万。返済日は?」


「今日です・・・」


「ですよね。で、今日持ってきた金額は?」


「1万円です・・・」


「じゃあ解るよね、マサキ」


「あと1日・・・・」


「おねぇちゃん。こっちに来なさい」


マサキは何も言えなかった。エリカは宗像のなすが儘にソファーから宗像のデスクに連れていかれた。

マサキは嫌な予感が脳天を貫いたが、体が硬直したまま二の句をつげないままにいた。

エリカの視線がマサキに向けられる。

マサキはその視線を避ける。

やっと出た言葉は

「自分失礼します。」


宗像は、自らのスラックスのベルトをはずしながら笑顔で言う

「ここに居ろ。」
















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