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B-BOY秘密列車  作者: 東雲 ヘルス
七夕物語
4/6

サードインパクト

火曜日

初夏だというのに、空には分厚い雲がかかり、なんだかムシムシとする日だった。

この日、美容室は定休日である為、10時を過ぎても亜美はベット上で丸くなって眠っていた。

亜美が務めるヘアサロン「ファレル」の先輩でもあり、恋人でもある貴志は歯を磨きながら、ベットの上の亜美に声をかける。


「もう起きる時間だぞ。」


「・・・・・」


「ディズニーシー行かなくてもいーのかな。」


「・・・いやだ・・・」


「じゃあ、早く着替えて。11時には出るよ」



普段,仕事の日もこんなやり取りが日常だ。

そんな亜美を貴志はかわいく思う。

二人は1か月前に同棲を始めたばかりだった。

亜美は貴志の働く美容室に、18歳の春に高校を卒業してすぐに入社した。福島県の田舎から出てきて、部屋を借りていたが、すぐに貴志とそういう関係になり、貴志の家に転がり込んだのだ。

職場でも亜美は一生懸命に働いていたが、朝が弱かった。そんな亜美を教育係の貴志が面倒をみたのがきっかけであった。

初めはモーニングコールからはじまり、それでも起きることができない亜美を家に泊まらせた。

そこから、ずるずると同棲生活が始まった。


「さぁ行こうか」


近くのコインパーキングに一台の車が停めてあった。

トヨタ「fits」

「さぁ乗って」

貴志は亜美にこの車に乗るように促したが、真美は何のことかさっぱり解らなかった。


「え?これお兄ちゃんの車?」


貴志が車を持っているというのは聞いた事がなかった。

それどころか、普段から「あー車欲しいな。でも美容師の給料じゃあな・・・・それに都内での駐車場はバカ高いしな・・・」

というのが口癖であった。

貴志は車好きなのだが自分の車は持てないでいた。

入社3年目の美容師の給料が月給手取りで16万円。家賃6万なので勿論車のローンどころか買っても維持できない。


「まぁ乗りなさい!」

貴志は自慢げに言った。

亜美が促されるままドアを開けると助手席のシートには小さい紙袋が置いてある。

不思議そうに貴志の顔を見ると


「開けて」

と貴志は言った。


紙袋を開けると、小さい箱と手紙が入っていた。小さい箱を開けるとかわいらしい指輪がそこに鎮座していた。

「えーー!」

亜美は驚いた。

そんな亜美を横目に、貴志はさっさと清算を済ませ、運転席に乗り込みエンジンをかけた。

車はゆっくりと車道出た。そして、自分のiphoneを操作し、音楽を流した。

Happy Happy Birthday / DREAMS COME TRUE


「亜美、誕生日おめでとーー!」


「えーーありがとー。」


亜美は少し涙ぐみながら、貴志にお礼を言った。

この日のために貴志は色々と準備をしていた。

美容室は定休日でも、新人は講習会や勉強会が入っていてなかなか休めないのだが、無理を言って、同じ日に休みを取った。

そして、「誕生日の日はたまたま一緒に休みが取れたから、好きなところへいこう」と亜美に提案したのである。

そして、少ない貯金から指輪を買い、近所に住む叔父から車を借りていたのだ。

天気は曇りだが、うれしそうな亜美の笑顔を見ているととても晴れ晴れした気持ちになった。


ディスニーシーでは亜美は何時もより1.5倍ははしゃいでいた。

時間も忘れて、夕方になっていたので急いで亜美のために取ってあるレストランへ向かう事にした。

貴志は舞浜にあるお洒落なイタリアンレストランを予約していた。

ここは、以前亜美が「一度来てみたいね」と言っていた場所で、貴志はその言葉を覚えていて、今回サプライズで予約していたのだ。

レストランに着くと、ボーイがやってきてワインのセットリストとメニューを置いていった。

亜美は「ワイン飲もうよ」と言ったが、貴志は車で来ている為断ったが、真美の残念そうな顔を見ると

「今日だけ」という気持ちになった。

亜美も貴志も雰囲気に酔っていた。

そして、赤ワインで乾杯した。


二人とも見事に顔を真っ赤にし店を出た。

少し酔いを醒ますという目的で、公園で少し休むことにした。

酔いのせいか、亜美は貴志の肩に寄りかかるようにして、耳元で言った

「お兄ちゃんありがと。」

貴志は亜美の頭をなでながら

「今日は楽しかったね。」

といった。


「うん。すごく幸せ。お兄ちゃんと結婚したい!」


「そうだな。俺もだよ。一人前になったら結婚しようね」


「えーープロポーズ?ねぇプロポーズ?」

と亜美ははしゃいだ。今日はずと亜美ははしゃいでいた。そんな亜美が隣にいることが貴志は幸せでならなかった。

少し酔いも醒めたところで、車に戻り地元の船堀に向かった。

舞浜から船堀までは約30分。

車の中では亜美がしきりにキスをせがんでくる。貴志は少しとはいえ酒が入っていることもあり、慎重になっていたので亜美を手で制しながら運転に集中していた。

そんなことはお構いなしに亜美の攻撃はやまない。

ようやく地元の船堀に着くと、家でも飲もうということになって、コンビニで酒を買うことになった。

駅前の人気にないロータリーに車を止めると、地元に着いた安堵感と抑えていた欲望が吹きだし、亜美に車の中で抱き着いた。

亜美も貴志にキスを求めた。二人は車の中で激しいキスをした。


そんな二人が乗る車に2台の黒い影が忍び寄る。







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