寒空の下
フィオナの家を後にしたレオンとステラは、ベティと別れてある場所に向かっていた。一番日が高い時間帯のはずだったのに、昨日の夕方よりも肌寒いくらいだった。
「・・・ステラ」
大通りに出る前に、レオンは立ち止まって声をかけた。どうしても言っておきたい言葉があったからだ。人目もほとんどなかったので、ちょうどいいと思った。
しかし、僅かに遅れて振り返ったステラは、大人びた笑みを浮かべながら言った。
「まだ言わないで下さい」
「え?」
「レオンさんが言いたい事、ちゃんと分かってますから。だから、言わなくていいです」
「・・・それでも言うよ」
何故か、レオンも自然に微笑む事が出来た。
「情けない事を言って、本当にごめん。それと、引き留めてくれて、本当にありがとう」
そう口にした後で、短いな、と思う。口下手だから仕方ないとはいえ、もっといくらでも、相応しい言葉があったに違いない。
そんなレオンとは対照的に、ステラは青い瞳を少しだけ潤ませはしたものの、柔らかく微笑んだまま、堂々とこちらを見つめていた。
彼女は少し可笑しそうな口調で、それでも静かに尋ねてきた。
「・・・それだけですか?」
その聞き方に合わせるように、レオンも微笑む。
「いや・・・もっともっと言わないといけない事があるけど、でも、ここで全部は言い切れないと思うから」
「そうですね・・・そうだと思います」
「だから、後は追々・・・それに、僕は冒険者で、アスリートだから、言葉じゃなくて、身体で示さないと」
「はい・・・でも、ひとつだけ聞かせて下さい」
何が聞きたいのか、レオンにも分かった。
だからなのか、驚くような早さで、自然と言葉が口から滑り落ちた。
「僕は、諦めない。もう一度、冒険者になりたかった自分を追いかけてみるよ」
「また怪我をするかもしれません。次は、私の番かもしれませんよ?」
ステラは優しくこちらを見つめていたが、それでも、口にしたのは否定的な問いかけだった。
こちらを試しているのだ。
「それでもいい、とは言わない」
女神のような眼差しに負けじと、レオンははっきりと告げた。
「だけど、僕は皆を守れる人になりたい。だから、まだ可能性があるうちは、皆が期待してくれているうちはだけど、そういう人になれるって信じながら、ステラも守れるはずだって信じながら、もっと頑張ってみたい」
「・・・はい」
「もしかしたら叶わないかもしれないけど、それでも僕は、皆が懸命に生きているこの町が、世界が大好きだ。だから、僕も一緒に頑張りたい。皆と同じ夢を、方角を向いて生きていたい。その一部でもいいから、僕もみんなの夢に協力したいな」
「私もです」
そこでステラは少し寂しそうに微笑んだ。
「本当に、私の夢なんて自分勝手なものなんです。みんなにお世話になって、迷惑までかけて、それでいて何のお返しも出来てないんですから。だけど、ベティもリディアもデイジーも、それでいいんだって言ってくれるんです。みんな同じだからって。みんな自分の幸福の為に生きているんだからって。ただ、独りで幸福になろうとしてはいけないって教えてくれました。皆が思い思いの方角を見ていたら、皆がダメになるんだって。そうじゃなくて、皆が少しずつ方向修正して、同じ方向を見て、皆が一緒に幸福になれるように生きていくんだって。それが皆で生きるって事だよって」
「・・・もしかして、だからみんなに会いに行こうって言ったの?」
ステラは意味深に微笑んでみせただけだった。
小さく息を吐いて、レオンは答える。
「そうか・・・僕はようやく気付いたけど、多分、普通の人には常識なんだろうね」
「レオンさんだけじゃないですよ。私だって全然分かってませんでした。多分、家柄というか、育った環境のせいだと・・・」
「あ、なるほど・・・僕も田舎者だし」
2人とも人間関係が極端だったから、一般常識に欠けていたのかもしれない。
そう考えると、何故か可笑しくなってきて、レオンとステラは顔を見合わせて笑い出した。
「やっぱり世間知らずだったんだね、僕達」
「ですね・・・知らない事ばかりです」
そこで遠くに視線を送るレオン。自分の故郷がある北の山々ではなくて、平原を越えた先に別の山脈が広がる、南の方角。
それにつられてステラも、そして、彼女の肩のソフィも、同じ方角を見た。
「・・・まだ知らない事、沢山あるんだろうな」
「はい・・・私達は特に、ですね」
「うん・・・あ、そういえば、海っていうのを見に行くって約束したよね」
途端に嬉しそうに、ステラは身体を弾ませた。
「そうです。ちゃんと覚えてたんですね」
「忘れたりしないよ」
そう言いながらも、レオンも楽しくなってきて少し笑った。
「海か・・・確か、凄く大きな湖なんだっけ?」
「えっと、まあ、そう言われたらそうですけど」
「聞くだけでもちょっと凄いよね。それで確か、僕は村に案内するって・・・やっぱりちょっと釣り合わない気がする」
「そんな事、別にいいんです。あ、でも、どうせ行くなら冬がいいですね。真っ白な時に行ってみたいです」
ステラの表情がどこかうっとりし始める。夢で見た景色と、イブの心情に思いを馳せているのだろう。
「冬か・・・雪景色だったら、もうすぐ見られると思うけど」
「そうですね・・・あ、でも、やっぱり同じ景色を見てみたいので」
レオンは軽く頷いてみせる。
そこでふと、本来の目的を思い出した。
「・・・えっと、とりあえず、どうしても今言いたかった事はそれだけ」
少し遅れて、ステラも微笑みながら小さく頷く。
「あ、はい・・・分かりました。それで十分です」
「後は、なんとか復帰出来るようになった時に、もう一度話すよ」
「はい。そうなるように、私も協力しますね」
確かに、レオンの腕の治療には、彼女の魔法が欠かせないのだ。
その時、ステラが何かに気付いたように、突然瞳を瞬かせた。
「・・・どうかした?」
「えっと・・・」
彼女は振り返る。視線の先は大通りに抜け出る交差点。そこからこちらの道に入ってくる人はほとんどないが、大通りを直進している人は数人見受けられた。
別に不審なところは見当たらないが、ジーニアスであるステラの感覚は何かを察知したのだろう。それくらいの予想はレオンにもついた。
「誰かいるの?」
その質問にこちらを向いたステラは、困ったような表情で首を傾けただけだった。しかし、そんな反応をされれば、ほとんど答えているのに等しい。
もしかしたら、いつかの夏祭りのような不審者だろうか。気を引き締めたレオンだったが、そこで意外にも、向こう側に動きがあった。
突然建物の陰から現れた男性が、こちらに向かって堂々と歩いてくる。
「あ、こら!」
その直後、その声と共に、もう1人の男性が慌てて後を追ってきた。
意外な展開には戸惑ったが、両方レオンの知っている人物だったので、ある意味安心した。
先に出てきた方が、大きな木箱を抱えた黒い前掛けの男性で、つまりラッセル。後から出てきた方が、ライトブルーの洒落た服装の逞しい男性。つまり、ブレットだった。どういうわけか、彼もまた小さな木箱を抱えていた。
そういった観察が済む頃には、さっさと歩いてきたラッセルが、レオン達の前で立ち止まっていた。いつもの様子で気軽に挨拶してくれる。
「レオンもステラさんも、お久しぶり。思ったよりも元気そうだね」
「あ、うん。ラッセルも、あの時はいろいろ手配してくれたみたいで・・・」
お礼を言おうとしたのだが、ラッセルはやんわりとそれを制した。
「手配だなんて、そんな大層な事はしてないよ。たまたま耳に挟んで、たまたま用があった人に話しただけだから」
そこで少し遅れて、ブレットが何やら複雑な表情でここまで辿り着いた。
さすがに気になったので、レオンはまずその事を尋ねる。
「・・・ブレット、どうかした?」
彼はステラの方を見て一瞬微笑んだが、いつもに比べたら控えめどころではない表情だった。そのなけなしとも言える表情を引っ込めた後、こちらを見据えた彼は憮然として告げる。
「一応言っておく」
「え?」
「僕達は、たまたまここを通りかかっただけだ。勘違いして貰っては困る」
「・・・何を?」
相変わらず会話がかみ合わないなと思っていると、ラッセルが珍しく呆れ気味の表情で補足してくれた。
「そういう言い方するから、余計覗いてたみたいに聞こえるんだと思うけど」
その言葉に、明らかにブレットは動揺した。
「か、勘違いするなよ!?この道を通ろうとしたら、何やらただ事ではない雰囲気で話をしている男女が見えたから、なんとなく進み辛くなって隠れていただけだからな!?」
「はあ・・・」
生返事をするレオン。それならそれで、どうしてそこまで動揺するのかがよく分からない。堂々とそう言えばいいのではないだろうか。
一応ステラに目で確認してみると、彼女は苦笑気味ながらも小さく頷いた。彼女の肩に乗る妖精は、全く興味がないのか、既に伏せ体勢の睡眠モードに切り替わっている。
さらにラッセルは淡々と告げた。
「別に迂回してもよかったんだけど、せっかくだから挨拶しておこうと思って」
「あ、そうなんだ」
「そうだ!やましい気持ちは断じてないからな!」
そこまで強調されると、確かに逆に疑わしい気がしてくる。
それはそれとして、レオンとしては渡りに船という思いもあった。何故なら、ちょうど向かおうとしていた先こそ、このブレットのところだったからだ。
改まって姿勢を正したレオンは、ブレットに笑顔で頭を下げた。
見えたわけではないが、隣のステラも頭を下げていたようだ。寝床が突然傾いたからなのか、ソフィが身じろぐ気配を感じたからである。
「ブレット。お礼がまだだったと思うから・・・本当にありがとう」
顔を上げてみると、木箱を持ったままきょとんとしているブレットの顔があった。
しかし、すぐに思い当たったのか、彼はすぐに真面目な顔に戻った。
「いや・・・別に礼を言われるほどの事じゃないだろう。たまたま僕が狼煙を見つけたから駆けつけただけだ。それで大怪我をしている見習いがいたから運ぶのを手伝った。誰が見つけていても同じ事をしたはずだ」
「それでも、僕が今こうしていられるのは、ブレットのお陰だよ」
「筋違いだ。ステラとイザベラ先生のお陰だろう」
軽く顎を上げたブレットは、こちらを睨みつけるような視線を送ってくる。
「敢えて言わせて貰うなら、二度と同じ様なヘマはしない事だな。もう一度ステラを泣かせてみろ。僕が直々にその腕をへし折ってやる」
やっぱりステラは泣いていたらしい。半ば予想していたとはいえ、はっきりそう告げられてみると、自分が情けなくなる。
でも、今はそれとは別に、もっと純粋な思いも沸き上がってくる。それをありのまま受け入れられるようになっている自分の変化も、少なからず感じていた。
レオンはブレットの視線を真っ直ぐ見返して言った。
「うん・・・分かってる。その為に、もっと強くなるよ」
それでもなお、ブレットはしばらくこちらを睨んだままだった。慎重派の彼にしてみれば、ダンジョン内で誰かが怪我をする事など言語道断なのだろう。実際、レオンの怪我は捨て身で打って出たから負ったものであって、もっと粘り強く戦えば、別の活路を見いだせる可能性もあったのだ。同じ冒険者視点で見れば、やはり無謀な賭だったと判断されても仕方ない。
しかし、彼は不意に口元だけ緩めると、やや控えめな口調で言った。
「だが、ステラが無傷だった事は認めてもいい。防御の薄いジーニアスを守るべきなのはもちろんだが、女を守りぬいたという点でも、男として評価出来る」
ついレオンは瞬いてしまった。そういう事を堂々と言い切れるブレットに、素直に感心してしまう。
気付いてみると、ブレットは怪訝そうな表情をしていた。
「何だ?その反応は」
「え?・・・あ、うん。凄いなと思って」
何故かそこで、ブレットは一瞬ステラに視線を送ったようだった。本当に珍しい事に、いつもの優しい視線ではない。半ば呆れたような、そんな視線だった。
当然というべきか、レオンにはその視線の意味がさっぱり分からなかったが。
「・・・まあいい。とにかく精進してくれ」
なんだか投げやりなブレットの言葉。
そして、その後しばらく、意味深な沈黙があったが、ただ1人、レオンだけはその意味が分からずに戸惑うばかりだった。
やがて、話題を変えようとしたのか、ステラが控えめに話を切り出した。
「えっと・・・ラッセルさんは、お仕事中ですよね?」
ラッセルは柔らかく微笑む。その表情の変化は、さすが商売人と思わせるほど手慣れていた。「そうだよ。ちょっと荷物がかさばっちゃってね。たまたまブレットがシャーロットの店に来てたから、手伝って貰ってるんだ」
「あ、なるほど・・・」
複雑な表情でブレットを見るステラ。
その視線を受けたブレットは、今度こそ満面の笑みでステラに話しかけた。
「頼まれるとつい断れなくてね。ステラも何か困った事があったら、遠慮なく言ってくれたらいいよ」
「え、あ、はい・・・」
その辺りで怖じ気付いたのか、こちらの裾を掴むようにして、ステラはこちらに一歩寄ってくる。幾分慣れてきたとはいえ、まだ少し男性に苦手意識があるらしい。
そこでラッセルがすかさずフォローしてくれる。さすがの気配りと言えた。
「前よりも、ステラさん、男の人と話せるようになったね。だいぶ慣れてきた?」
「は、はい・・・多分」
「こればかりは、ブレットのお陰かもしれないね」
横目で見据えてきたラッセルに、ブレットもどこか誇らしげに答えた。
「僕の深慮と言わざるを得ないだろう・・・と言いたいところだが、偶然だというのは素直に認めておこう。強いて言うなら、ステラがあまりにも魅力的だったからこそ僕のアプローチがあったわけで、つまりはステラ自身が招いた偶然だと言えなくもないけどね」
苦笑するラッセル。明らかに困っているステラ。そして、おおよそ興味のないソフィ。
結果、誰も口を出せない、微妙な空気が生まれてしまった。
しばし、沈黙。
仕方ないので、今度はレオンが話題を変えた。
「えっと・・・そ、そういえば、ラッセルとブレットって、結構一緒にいる事多いよね。ほら、夏祭りの時も一緒だったし」
途端に真面目な顔に戻るブレット。まるで仮面を付け替えているような早業である。
「あの時はいろいろ事情があっただけだ。しかし、確かに仲が悪いわけではないな」
「うん、まあ、そうかな」
そう答えながらも、何故か半笑いのラッセルだった。
それを気にした様子もなく、ブレットは淡々と答える。
「ラッセルはいつも真面目に仕事をしている。男女問わず、僕はそういった人間の味方であるつもりだ。君も・・・レオンも、僕と良好な関係を築きたいのであれば、真面目に精進する事だ」
「あれ・・・僕、真面目じゃない?」
不安になるレオン。
その反応に面食らったらしいブレットは、また控えめな声量で答えた。
「・・・いや。まあまあじゃないか?」
「まあまあ・・・」
なんとも曖昧な答えに、喜んでいいのか気を引き締めた方がいいのか、レオンは判断に困る。
どういうわけか、ブレットは少し恥ずかしそうに視線を逸らしていた。
そこでラッセルは笑顔で木箱を抱え直す。
「さて・・・じゃあ、まだ配達があるから、僕達はこれで」
咄嗟にレオンは頷く。
「あ、うん・・・2人とも、本当にありがとう」
「いいよ、別に」
「礼を言うくらいなら、立派に復帰してみせろ」
ブレットの言葉が、まさに真理だった。
前のよりも深く重く、レオンは頷いてみせる。
「・・・分かってる。また訓練に付き合って貰うかもしれないけど、その時はよろしく」
彼はその言葉には答えず、軽く左手を挙げて見せただけだった。
「じゃあまた」
ラッセルのその挨拶を最後に、2人は奥へと進んでいく。当然と言うべきか、ステラとのすれ違い様には、ブレットが眩いばかりの笑顔を見せていた。
しばらく、休憩代わりとも言える沈黙があった。
「みんな良い人達ですね」
ステラが呟く。
レオンは真っ直ぐに彼女に向き直った。少し伸びてきたブロンドの髪が木枯らしで柔らかく揺れている。それ以外は、青い瞳も顔立ちもほとんど変わっていない。白いマントの下の身体も華奢なままだった。女性は筋肉がつきにくいものだし、ジーニアスは精神的な成長に比重が置かれるので、不自然というわけではないが、やはり彼女のような冒険者は珍しいのかもしれない。
どこからどう見ても、普通の女の子だ。
「どうかしました?」
気付くと、ステラがやや戸惑い気味に尋ねていた。
密かに呼吸を整える。
ゆっくりとレオンは頷いた。
「ごめん・・・ステラ」
「え?」
「今ブレットに言われて気付くなんて、本当にどうかしてるけど・・・もっと言わなくちゃいけない事があるよね」
一度瞬いたステラは、ゆっくりと微笑む。
「・・・それこそ、言わなくてもいいです。ちゃんと分かってますから」
「でも、言うよ」
ステラの言いたい事は分からないでもない。仲間なのだからそれくらい当たり前だと言われれば、確かにその通りだからだ。
それでも、レオンはどうしても口にしたかった。
あの時、消え行く意識の中でも、彼女の声を聞いていたから。
自分の為に泣いてくれた。自分の名前を呼んでくれた。そして、自分の命を繋ぎ止める為に、力を振り絞ってくれた。
その思いに応えたかった。
「助けてくれてありがとう」
彼女の青い瞳は潤んでいる。
しかし、それでも気丈に微笑んでくれた。彼女の成長を示す表情だ。
「・・・はい。でも、私、よく分かりました」
瞳を大きくするレオン。
「何が?」
息を小さく吐いて呼吸を整えてから、ステラはしっかりとした口調で答える。
「人を助けるのって大変なんですね。私、いつもレオンさんに助けて貰ってばかりでしたから、その苦労が改めて身にしみました」
その言葉は確かに予想外だったけれど、レオンはすぐに微笑んだ。
「そんな事ないよ。僕だってステラに助けて貰ってばかりだし」
ステラは何か言い返そうとしたようだった。
それでも、結局、その言葉は彼女の喉の奥に消えてしまい、代わりにいつもの笑顔が彼女に宿る。
「・・・そうですね。本当にそうなるように、私も頑張ります」
それが彼女の新たな決意なのかもしれない。
ようやくレオンも気付いた。ステラだって、仲間の身体が冷たくなっていくのを目の当たりにして、ショックがなかったわけがない。その上、なんとか助けたその相手が塞ぎ込んでしまったら、内心落ち込まざるを得なかったはずである。
何か、言葉をかけないといけない。
しかし、すぐにそうではないと気付く。
必要なのは、彼女に並ぶ為の決意だ。
「うん・・・頑張ろう」
「はい。もう一度」
それを確認しあって、2人は微笑んだ。
冬が始まろうとする空の下でも、その場所だけはまるで芽吹きの季節のような、そんな暖かさを感じていたレオン達だった。