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夢色彩のカーバンクル  作者: 倉元裕紀
第7章 リトレイン・シーズン
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淘汰の形


 訓練の初日からいきなり傷だらけになって帰ってきたので、ステラやベティには目を丸くされてしまった。どんな特訓をしてきたのかと聞かれたが、あれは特訓というよりも、ほとんど喧嘩だったので、その場ではうやむやに答えたレオンだった。もっとも、ベティの事だから、その日か翌日のうちには、デイジーから情報を仕入れていただろう。そうなればステラにも伝わっただろうから、真相を知って唖然としたに違いない。

 ただ、その日が全く無駄な1日だったというわけではなかった。

 どういうわけか、その日を境に、ブレットが訓練に協力してくれるようになったのだ。

「やっぱり、君の装備で斧や鎚というのは、難しいんじゃないか?」

 この季節でも乾ききらない土のお陰で、座ると少しひんやりする訓練場の片隅。

 その場所で向かい合って座るレオンとブレットの間には、平均的な剣や槍、大剣や棍棒、それに斧や鎚といった数々の武器が無造作に並べられている。中には鞭や鎖なんてものもある。全部訓練用に加工されたもので、そしてその全部を、ブレットを相手に試してみたばかりだった。

 ブレットは真っ直ぐにこちらを見ている。いつになく真剣な表情で、さらに、着ている簡易鎧には傷が数え切れないほどついている。そのほとんどはレオンがつけた傷だ。

「ただ受けて振るというだけならいいが、君は避ける方が多いだろう?避けた後重い武器を振るのは、さすがに隙が多い。さっきもこちらは反撃しなかったが、しようと思えばいくらでも出来たくらいだ。こういうのは、体力や防御力の並外れた、例えばガレットさんのような人間が選ぶ武器だ」

 真面目にアドバイスしてくれているブレットには悪いが、どうしてもレオンは言わずにはいられなかった。 

「いや・・・ごめんね。いくら訓練とはいえ、武器の練習台みたいになって貰って」

 すると、ブレットはむっとする。

「だから、いちいち謝るな。こちらが勝手にやっているだけだ。君はただ強くなって、それでステラを守ってくれれば、それでいい」

 以前では考えられないような、もの凄く常識的で、そして親身な言葉だった。この間の出来事は、彼にとってそんな重大な意味があったのだろうか。レオンは未だに理解出来ない。

 地面に置かれた武器を眺めながら、ブレットの言葉は続く。

「君が言っている通り、攻撃をステラに依存しているというのは良くないだろう。もっとも、僕の経験から言わせて貰うなら、アスリートが戦線を作って、ジーニアスが殲滅するというには一般的な手法だ。一般的という事は、即ち合理性があるという事だ。合理的だからこそ、皆が使っているわけだからな」

 なんというか、彼の父親が言いそうな台詞だった。実を言うと、それも一度口にしてみた事があった。だが、彼がもの凄く嫌がったので、レオンは言わない事にしている。

 代わりに、レオンは別の感想を言った。

「ニコルも同じ様な事を言ってた気がする」

 するとブレットは軽く頷く。

「まあそうだろう。だから、君がステラよりも攻撃力に劣るのは普通の事だ。そこを恥じる必要はない。ただ・・・やはり僕から見ても、今の君は攻撃力に欠けている気がするな。もっと大勢いるパーティならば、単なるユーティリティとしてやっていけるが、2人しかいないのならもう少し背伸びするべきだろう。特に、ボスモンスターと戦う時、今の状態だと、最悪君の役目がないという事にもなりかねない。一般的な道具が通用しないボスなんて、それこそざらにいるからな」

「なるほど・・・」

 空を飛んでいたら粘着弾の意味がないし、音や光にも強いモンスターだっている。そういう意味でも、やはり直接的な攻撃手段が欲しい。ニコルの爆発系ガジェットも、水の中や狭い室内では使えないのだ。さらに言うなら、例えば投げつけた瞬間に風でも起こされようものなら、逆にこちらが大爆発しかねない。

「いずれにしても、見習いになってそれなりに経験を積んで、体力もついてきたはずだ。とにかく扱い易いという事で、最初は近接用にショートソードを選んだようだが、そろそろ変える時期ではあるだろう。こういった機会に装備を見直すというのは大切な事だ」

 さすがに現役冒険者だけあって、説得力のある言葉である。

 なんとなく気になって、レオンは聞いてみる。

「ブレットはずっと剣を使ってるの?」

 彼は視線だけこちらに向ける。

「そうだな。昔から剣を訓練していたし、冒険者修行中も最初から剣を選んだ。それが一番合理的だと分かっていたからな」

「合理的って?」

「鎧と盾で防備すると考えた時、武器は何が一番相応しいのか。その装備における武器の使い方として、受けて反撃するのが一番多いのは間違いない。そうなると、槍は一般的じゃない。あれは間合いが剣よりも有利だが、逆に手元が手薄になる。敵を迎え撃つと考えるなら、間合いはそれほど重要じゃない。それに、人間相手なら一度貫けばほぼ終わりだが、巨大なモンスター相手だと、それで相手が止まらない場合もあるだろう?そうなると引き抜くのも難しい。何より、槍は折れ易い。ダンジョン内では、そうそう武器の補充なんて出来ないからな」

 思わず感心するレオン。本当に学者みたいだ。

「どうせなら振り抜ける武器がいい。そう考えると斧や鎚でもいいかもしれないが、さっき言った通り、あれを素早く振るのは難しい。攻撃を受けたその瞬間、その隙を逃さず反撃するという趣旨からすると、やはり剣には劣る。こう考えると、一般的なアスリートに相応しい武器は、やはり剣という事になる。剣が一番普及しているのは、それなりの理由があるからだ」

「そうか・・・」

 何度か頷くレオン。どうして剣が普及しているのか、そんな理由は考えた事もなかったが、ブレットの話には説得力があった。

 少し怪訝そうな顔で、ブレットはこちらを見つめる。

「・・・本当に君は素直だな。そこまで感心されたのは、もしかしたら初めてかもしれない。田舎の人間というのは、君みたいなのばっかりなのか?」

「え?えっと・・・まあ、僕の家族は、村で一番ぼんやりしてるとかよく言われてたから、僕が標準ってわけじゃないと思うけど」

 何故か盛大に溜息を吐くブレット。

「山奥の田舎でも規格外・・・こんなのと僕は張り合っていたのか。道理で空回りするわけだ」

 聞こえていたレオンだったが、なんと答えればいいのか分からなかったので、結局何も言わなかった。本当は謝るべきだと思ったのだが、そうするときっと、ブレットはいちいち謝るなと怒るだろう。

 もう一度息を吐いて、ブレットは武器に視線を落とす。

「・・・まあ、終わった事はいい。とにかく今は君の武器だ。どれか感触のいい武器はあったのか?」

 尋ねられたレオンも、置いてある数多の武器に視線を落とす。

 正直言って、どれが上手く扱えているのか、自分ではよく分からなかった。どの武器も、少なくとも、武術大会で使ったオールよりは扱い易かったのだ。テーブルとか本などの道具と比べれば、やはり扱い易いように作られているのだろう。

 剣はもちろん問題ない。槍はというと、以前ベティの槍捌きを見せて貰ったが、隙が少なくてリーチもあるし、なかなか便利そうな印象だった。だが、威力という点ではどうなのか。それも使い方次第とは思うものの、やはり威力を求めるなら、それなりに長い槍を使わなければならないだろう。そうなると動きが制限されるだろうし、それに折れやすいというのは間違いない。威力に勝る斧や鎚は、ブレットが言った通り、重さのせいで隙が多くなってしまう気がする。

 結局一長一短なのだ。どの武器も生き残っているのだから、当然それなりの理由がある。

 ふと、レオンの視線が別の武器を捉えた。

「あ、これなんか、面白かったかも」

 レオンが手に取った武器を見て、ブレットは唖然とした様子で告げる。

「・・・悪い事は言わない。それはやめた方がいい」

「え?」

 驚くレオン。割と便利そうな武器だと思ったのだが。

 その手にあるのは、革製の鞭。

 ブレットは頭を手で押さえる。

「なんというか・・・武器としての性能云々より、体裁だな。鞭を堂々と持ち歩けるのは、動物の調教をする人間くらいだ。一緒にいるステラが気まずい思いをする可能性があるからやめておけ。というか、妙な趣味の持ち主だと勘違いされるかもしれないから、是非やめてくれ」

「そうなの?」

「ああ。だいたい、なんでそんな物が訓練所にあるんだ?こんな武器を鍛えようという奴がいるとは思えないんだが・・・」

 確かに、武器としてはあまりメジャーではないかもしれない。だが、これが仮に金属製だったら威力も期待出来そうだし、リーチもあるし、大きなモンスターの動きを阻害するのにも使えそうだ。なかなか良さそうだったのに残念である。

 気を取り直して、ブレットはアドバイスする。

「剣や槍と言っても、大きさや形状は様々だ。だから、とりあえず種類だけ絞って、その中から細かく選んでいけばいいんじゃないか?」

「あ、うん・・・」

「どうせ二刀流をするんだから、剣とか棍棒とかでいいだろう?」

「二刀流か・・・でも、威力を出そうと思ったら、両手剣の方がいいのかな」

 顔をしかめるブレット。

「君は・・・節操ないな。盾も二刀流も両手剣も何でも使おうと、そういうわけか。だが、それが出来るならいいが、いきなりそれは無理がある」

「そ、そう?」

「だいたい、持ち運べる武器の量にも限度があるだろう。君は短剣や弓も持って、その上道具も持ち運ぶ。その上大剣なんて、どこに背負うんだ?」

 何度か瞬くレオン。言われてみれば、確かにその通りだった。

「そっか・・・でもなあ」

 二刀流は手数が多いものの、果たしてどれだけの威力が望めるのか、レオンは疑問だった。石や金属のような硬質なモンスターが相手の時は、手数がいくらあったところで意味のない事が多い。それならばもっと大きな武器をひとつ持っていた方がいい気がする。

 もしくは、弓を諦めた方がいいのか。

 ファースト・アイは地形が複雑で視線が通らない事も多いし、そもそも奇襲されるケースが多くなってきたので、あまり使わない事が多いのだ。

 ただ、やはりないよりはあった方がいい。遠距離からの攻撃手段としては、弓は一番有用なものだ。ダガーはそんなに遠くまで飛ばない。何より、矢と比べたら速度が段違いだ。レオンが上手く使いこなせていないだけで、弓には威力もある。

 でも、ブレットの言う通り、全部は持っていけない。

 個人的には、今まで軽い武器を使ってきたから、その応用というか派生というか、なるべく今までのスタイルを生かせるような武器がいいと思っている。だから、ショートソードをマイナーチェンジして済むなら、それが一番いい。

 だが、それでどれくらいの威力強化が望めるのか。

 マイナーチェンジ程度では大した強化にならないかもしれない。それだと意味がない。

 それに将来的な事もある。今ならまだ武器の変更が出来ても、これから先に戦闘スタイルが確立してからだと、もう変えるのは難しい。

 本当に、大きな決断になる。そんな予感がする。

 レオンが腕を組んで本格的に悩み始めた、その時だった。

「おー、いたいた」

 その声で初めて気付いたレオンだったが、ブレットは既に気付いていたらしい。愛想のいい微笑みを浮かべて、立ち上がりながら声をかける。

「やあ、シャロン、リディア。今日も綺麗だね」

 つられて立ち上がったレオンの目に飛び込んできたのは、機嫌良さそうに笑っている、ワイルドなブラウンの服を着たシャロンと、対照的に、いつになく表情の固い、落ち着いたモノトーンのシャツとズボン姿のリディアだった。

 2人はゆっくりとこちらに歩いてくる。シャロンが先頭というか、リディアはやや控えた位置どりだった。

 立ち止まるなり、シャロンは慣れた口調でブレットに返事をする。

「毎度毎度、ご丁寧にどうも。だけど、リディアさんと並べられたんじゃ、ついでにしか聞こえないけどね」

 顔は笑っているので、どうやらシャロン流のジョークのようだった。

 それでもブレットは律儀に返す。

「いやいや。それは自分を過小評価している。シャロンもリディアに負けないくらい綺麗だよ。どちらが綺麗かなんて僕には決められないし、花がそれぞれ美しいように、どちらが上かなんて事に大した意味はない」

 再び笑うシャロン。嬉しいというよりも、面白いといった印象だ。快活な笑い方なので、いずれにしても嫌みな印象はない。

 そのやりとりを半ば無視するような形で、リディアがその明るい瞳をこちらに向ける。

「レオン。武器は決まった?」

 やはり仕事の話らしい。彼女は本当に真面目だ。

 2週間しかないから、早めに武器を作っておかないと慣れる期間がない。訓練用の武器で、同じ種別の武器に慣れる事は出来るのだが、やはり完成品とは感触が違うだろう。出来る事なら、ダンジョンに再挑戦する前にある程度慣れておいた方がいい。

 そこまで考えて、催促も兼ねて様子を見に来てくれたらしい。

 いい返事が出来ないレオンは、小さくなるしかない。

「いや、それが・・・」

 まだ決めかねている。そこまで言わなかったが、こちらの顔にはそう書いてあっただろう。

 表情こそ変わらなかったが、どうやらリディアは心配しているようだ。考え込むというほどではないが、一瞬思考が深いところまでいく時、彼女は大抵心配している。その時の視線の動きを見れば、割と分かり易い。これはお祭りの時、あのステラが巻き込まれた騒動の時に気付いた、リディアの挙動だった。

 ほんの一瞬でそこまで深い感情を呼び起こせる、深く親身になれるというのは、ある意味彼女の優しさを証明しているかもしれない。

 結局、リディアは軽く頷いてから一言告げた。

「焦らないでいいけど、でも、あまり考え過ぎない方がいいと思う」

「あ、うん・・・ありがとう」

 ほんの少しだが、リディアは表情を穏やかにする。

 そこでシャロンが口を挟む。

「いい雰囲気のところ悪いんだけど・・・」

 慌てたレオンは、咄嗟に両手を振った。どちらかというと、リディアの赤面ぶりに慌てさせられた感が強い。

「いやいや!そういうのじゃ・・・」

 そのあまりの慌てぶりにシャロンは苦笑する。

「そこまでリアクションされても困るんだけどね。まあ、それはとにかく置いておいて、リディアさんから聞いたんだけど、なんでも、武器を変えてみる気になったんだって?」

「あ、はい。まあ・・・」

 するとシャロンは地面の上の武器を一瞥する。

「へえ・・・いろいろ試したんだね。でも、結局何がいいのか分からないとか、そういう感じかな?」

 全くもってその通りだった。どの武器も、いいところも悪いところもある。それに、自分はどれか1種類選ぶというわけではなくて、いくつか同時に運用する事になるから、その兼ね合いも考えなければならない。

 するとシャロンは、今度はこちらを見つめてくる。

「武術大会の動きを見てて思ったんだけど・・・レオンは普通のアスリートじゃないよね。普通のっていうのもあれだけど、要するに、ブレットみたいに、重い鎧を着込んで戦うタイプじゃない。もしかして、レオンも魔法剣士というか、ジーニアス?」

 答えたのはブレットだった。

「アスリートだ。ステラが来る前はソロだったから、軽装を選んだだけというか、それだけの事だよ」

 何故かシャロンは感心した様子でこちらの身体を興味深げに眺めてくる。

「そういう奴って本当にいるんだね・・・あ、いや、ゴメン。変な言い方したね。ジーニアスならまだ分かるけど、純粋なアスリートが見習い時代から軽装っていうのは、やっぱり珍しいからさ。昔は結構いたらしいんだけどね。伝説の冒険者でも、スニークなんかはそうだし」

「はあ・・・」

 よく話が見えないので、生返事するしかないレオン。

 特に悪びれた様子もなく、シャロンは何気ない感じで尋ねてくる。

「それで、結局、今まで武器は何を使ってたんだ?」

 レオンは簡単に答える。

「えっと・・・ショートソードと、必要な時は、投擲用の短剣で二刀流を」

 他にもいろいろ持ち込んではいたが、基本的にはその構成だった。

 すると、リディアが補足する。

「初期装備から、レオンは基本的に変わってない。その頃とは体力も違うはずだし、武器を変えるのにはいい機会だと思う」

 そちらを向いたシャロンだったが、やがてこちらを向く。怪訝そうな顔つきに変わっていた。

「そうなのか。だったら、何をそんなに悩んでるんだ?単純に、もう少し威力がある武器を使えばいいと思うけど」

 それは確かにその通りなのだ。

 でも、そんなに単純でもない。

 なんと説明したらいいのか、困り果てているレオンの代わりに、ブレットが要領よく告げる。

「両手用の武器とか、もっと威力のある武器の方がいいんじゃないかと思っているらしい。彼の場合、ステラに攻撃を依存しているのが問題だから、自分もある程度の殲滅力が欲しいという事だ。要するに、今まで通りの二刀流でいいのか、その疑念のせいで決めかねているんだろう」

 割と全て見透かされていたらしい。多少恥ずかしい気もしたが、自分では説明しかねるところだったので、むしろありがたい。

 そこでシャロンは微笑んだ。

「なるほどね・・・要するに、二刀流がなめられてるってわけだ」

「・・・はい?」

 そんな事は一言も口にしていないが、シャロンはあっさり言い切った。

「二刀流じゃ威力が出ないかもしれないって、そう思ってるんだろう?あと、将来的に大剣とかと比べて劣るかもしれないとか」

「え?えっと、まあ・・・」

 するとシャロンは、こちらの鼻先に指を突きつけてくる。自信に満ち溢れた表情を浮かべながら。

「明日、ダンジョンに行く」

 突然の宣言に、レオンは声も出なかった。

 その体勢のまま、シャロンはブレットに視線を送る。

「ここって確か、町の中にダンジョンがあるんだよな?初心者レベルの」

 背後からブレットの声が聞こえてくる。どういうわけか、彼も少し声が楽しげだった。

「そこがいいだろうな。湖にもあるんだが、レオン達はまだクリアしていないから、その喜びを奪うのはよくない」

 シャロンの視線がこちらに戻ってくる。口元は余裕の笑みだ。 

「というわけだから、明日ダンジョンに行こう。準備は別にしなくていい。私1人いれば十分だからね」

「えっと・・・」

 未だ話が見えないレオン。

 だが、ブレットは違うようだった。

「僕も行こう。シャロンの腕を疑うわけじゃないが、万が一という事もある」

「ご勝手に。あ・・・それなら、ステラも誘えばいいか。そうだ。なんだったら、リディアさんも来る?普段は見られない冒険者の勇姿が見られるかもよ」

 リディアはすぐさま首を横に振った。

「仕事があるから」

 本当に真面目だ。

 するとブレットが嬉しそうな声で告げる。

「聡明なリディアならそう言うだろうね。危険がゼロではないから、それがいい。それに、仮に来たとしても、僕の出番はないだろうから、きっと拍子抜けだよ」

 一瞬だけ、リディアはブレットを見たようだった。見たというよりも、もっと冷たい視線だったのだが。

「・・・別に見たくないから」

 秋が来たのかと感じてしまうような、そんな寂しい空気が一瞬漂った。

 その間をぬって、レオンはようやく尋ねる。

「あの・・・結局、ダンジョンに何をしに行くんです?」

 シャロンは微笑んだ。決して温かくはないが、とても力強くて頼もしい、やはり冒険者だなと思わせる表情。

 その印象そのままに、彼女は告げる。

「私が本物の二刀流ってやつを見せてやろうじゃないか」



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