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夢色彩のカーバンクル  作者: 倉元裕紀
第4章 カーバンクル・ソフィ
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寡黙な高い壁



 資金集めの為、ビギナーズ・アイを周回し始めて1週間程が過ぎた。経過の程は順調で、あともう1週間もあれば、無事ノルマを達成出来そうだ。

 改めて考えてみると、初めはあれだけ苦労していたダンジョンを何周も出来るようになったのだがら、少しは強くなれたような気がする。一緒にダンジョンに入っているステラが、たまにそう言葉に出してくれるので、もしかしたらそうなのかもしれないと思う事が度々あった。

 しかし、どうしても強くなったと言い切れないのも確かである。

 それを実感するのは、今まさに目の前にしている、高い壁と対峙している時である。

 高い壁というのはもちろん比喩だけれど、しかし、身長という意味でも、彼は高い。

 長身を見上げた先にあるのは、黒い髪を少し長めに伸ばした、鋭い輪郭の顔。その双眸は真っ直ぐにこちらを捉えているが、それは視線だけではない。彼はいつも、必要な事を必要なだけしか口にしない。とりわけ無口というわけではないが、無駄口はほとんどない。しかし、今最も把握しておくべき事といえば、もちろん彼の剣についてだろう。

 こういう言い方をするのもなんだけれど、彼の剣は愚直な程正直だ。打つべきところに、小細工なしに、真っ直ぐ打ち込んでくる。レオンの剣というか、戦闘スタイルはまさに小手先だらけなので、ある意味正反対だと言えるかもしれない。

 今日のアレンも、剣と盾を自然に構えたスタイル。全く力みを感じないのはもちろん、恐ろしいくらい隙がない。2歩程踏み出せば剣先が届く距離だが、どこに打ち込んでも、簡単に捌かれそうな気がする。

 レオンは右に回り込むようにしながら駆けだした。

 隙がないなら作るまでだ。

 しかし、いつかの骸骨モンスターとは違い、彼はこちらの方に体の向きを合わせてくる。当然といえば当然だろう。

 ここまではいつも通りと言ってもいい。この後、レオンはいろいろやった。はっきり言うと、結構あくどい手を使った事もある。足下の土を掴んで目潰しに投げつけてみたり、隠し持っていた模造刀を投げた事もある。それらはレオンが思いついたわけではなく、アレンからやってみろと言われたからやったので、完全に不意打ちというわけではないが、いつ決行するかは教えていなかったので、奇襲は奇襲である。

 それでも、アレンは冷静に対処した。というより、全く動揺したようには見えなかった。最近では、そもそも彼が動揺する事があるのかどうか、その点から疑問である。

 従って、もう実力勝負以外に手はない。もっとも、レオンの実力を全て出そうと思ったら、何かしら奇襲しないと駄目なのだが。

 アレンの周りを旋回しながら様子を見ていたレオンだが、突然歩調のリズムを変えて、体勢を低くしながら距離を詰める。

 剣が届く間合いまで、ほんの1秒もかからない。

 そのままレオンは、右手の剣でアレンの足を狙った。彼はガレット以上の長身なのだ。足を狙うのが定石のはずだ。

 しかし、さすがというべきか、彼はすっと狙われた左足を退いて、それをかわした。剣先が膝をかすめていくギリギリの位置。どうしてこんな避け方が出来るのか、レオンは未だに信じられない。

 もちろん、ここで驚いている場合ではない。そして、このまま易々と追撃させて貰えるわけがない。

 自分の左上から、冷たい気配のようなものを感じる。

 もう何度も感じているので、レオンはすぐに左手の盾をかざす。

 彼が振り下ろしてきた剣をなんとか受け止めた。しかし、鎚でも振り下ろされたのかと思うくらいの衝撃である。左腕だけでは支えきれず、レオンは片膝を突いた。

 それでも、相手にはもう武器がない。ここが一番のタイミングのはずだ。

 すぐに右手の剣をもう一度振るレオン。

 しかし、そこで予想外の事が起きた。

 向こうの盾が届かない足を狙ったはずだった。それは確かにその通りだったのだが、向こうにもう武器がないと思ったのが間違いだった。

 流れるような足捌きでこちらへ距離を詰めてきたアレンの足が、目にも留まらぬ速さでレオンの胸を打ったのだ。

 たまらず退くレオン。

 距離をとって体勢を整えたが、胸には痛みが残っている。それでも、本気で蹴られていたら、こんなものでは済まなかっただろう。手加減されたのは確実だった。

 彼には蹴りもある事は分かっていた。しかし、あの足捌きは誤算だった。というより、あの勢いで剣を振り下ろした直後に、あんなに素早く足が動くものなのか。何かそれは、人間業ではない気がする。

 アレンの表情を見る。何事もなかったかのような、涼しい顔をしている。

 あれくらいは普通という事なのか。

 次はどうしようかと思ったところで、少女の大声が耳に飛び込んできた。

「そんな蹴りくらいで退くなーっ!気合いだ気合い!」

 声というか、完全に野次である。なんとなく、彼女の父親が言いそうな台詞だと思った。

 それはさておき、思いっきり気が削がれてしまったので、仕方なくレオンは声がした方を向いた。

 訓練所の小屋の脇には、大きな屋根の下にいくつかイスが設置された、簡単な休憩スペースがある。あまり広くはなくて、イスも6人分しかない。ここに通う子供を迎えに来た親とか、後は差し入れを持ってきてくれる人等が利用する事が多い場所である。

 今、そこには2人の少女が座っていた。1人は、ブラウンの瞳とポニーテール、淡い桃色のワンピースに白いエプロン姿で、両手を背中の後ろに突いた楽な姿勢で座っている少女。もう1人は、ほぼ黒と言ってもいい艶やかなロングヘアと瞳をした、淡い紫のワンピースを着た少女。そちらの方は、足を綺麗に揃えて座っている。先程の野次がどちらのものかは、もはや確認する間でもない。

「・・・休憩するか」

 彼女に何と言うべきかレオンが考えあぐねていると、硬質な声がすぐ近くから聞こえてきた。

 レオンがそちらに向き直った時には、アレンは既に休憩所の方へと歩き出している。

 もう休憩という事が決定しているようだ。こちらに同意も何も求めなかったが、それは必要ないという事だろう。本当に、彼は必要な事しか喋らない。

 休憩所に集まったのは、レオン、アレン、ベティ、デイジー、そして、デイジーの膝の上で丸くなっているソフィだった。何故かはまだ分からないが、ソフィはデイジーに懐いている様子である。

 しかし、レオンが近付いてくると、すぐにこちらまで駆け寄ってきて、いつもの右肩の位置まで駆け上がってくる。ソフィの中にはある種の優先順位があるようで、どうやら自分が一番懐かれているのは確かなようだ。今のところ、次がデイジーで、その次が、少しずつ慣れてきた様子のステラだろうか。

 いつものように右を向いて確認してみると、やはりソフィはこちらを見ていた。この真紅の視線にも、かなり慣れてきた気がする。

 右手で少し頭を撫でる。こうしてやると、しばらく視線が他の方を向くからだった。たまたま撫でてみた時にこの事に気付いたのが、それが何故なのかは分からない。構って貰えて安心するからなのか、それとも、散々撫で回されて飽き飽きしている事を意思表示しているのか、そのどちらかだろう。

 休憩所にはデイジーが持ってきてくれた差し入れもあった。デイジー御用達のコンパクトなバスケットの中には、香ばしい匂いを漂わせている焼き菓子が入っている。彼女はよく差し入れを持ってきてくれるが、大抵が甘いお菓子だった。恐らく、子供に喜ばれるからだろう。

「レオンって、アレンさんに勝った事あるの?」

 いきなりベティが聞いてきたその問いに、レオンは苦笑するしかなかった。

「いえ、それが・・・」

 全然勝てないので、成長したと実感出来ないのだ。

 ベティは口元を上げる。

「ちょっと小耳に挟んだんだけど、夏祭りの武術大会に出るんでしょ?リディアとステラを賭けて」

 ブレットが勝手に決めただけだが、概ね事実である。ただ、最後の一言だけは、どういう意味なのか未だによく分からない。

「まあ、一応・・・誰から聞いたんです?」

「リディアは興味ないって感じで教えてくれなかったしねー。ステラはその話の時、それどころじゃなかったみたいだし。つまり、ラッセル経由」

 意外にも、ラッセルは噂の情報源になっている事が多い。商売上の付き合いで、いろんな人と世間話をするからかもしれない。

「そういえば、リディアがそれらしき事を言っていましたね。その時は要領を得なかったんですけれど、そういうお話だったんですか」

 友達が賭けられているという話にも、何事もなく微笑んでいるデイジー。その表情を見て、どうやらあまり重大な話ではないらしいと、レオンは安心した。ブレットの話している事は、大抵自分にはよく分からない為、周囲の人間の反応から推測するしかない。

 そこでベティが、アレンの方を向いた。

「アレンさんって、確かブレットにも剣を教えてたよね。一回ぐらい負けた事あるの?」

 全く表情を変えず、アレンは即答した。

「ないな」

 さすがというべきか、末恐ろしいというべきか。レオンにはこの男性の剣技の底がまだ見えない。ブレットにも見えないままだったのだろうか。

「へえ・・・じゃあ、案外いい勝負なのかな」

 満面の笑みでこちらを見るベティ。何か企んでいるという感じではなく、完全に楽しみにしているという表情だった。

 それはそうと、レオンには気になる事があった。

「お祭りの武術大会って言いますけど・・・具体的にどういう大会なんですか?」

 名前以外は何も知らないと言ってもいいレオンである。

 待ってましたとばかりに、ベティは指を一本立てた。

「簡単に言うと、一番強い人を決める大会」

「・・・すみません。それだと何も分からないです」

 この返答は折り込み済みだったらしい。すぐにベティは立てた指を3本に増やした。

「ルールは3つ。まず、魔法禁止。次に、武器は町の人が用意した物を使う。最後に、手が僅かでも地面に触れた人が負け。簡単でしょ?」

 確かにシンプルなルールかもしれない。

「町の人が用意した武器っていうのは・・・?」

 ベティは指を立てていた方の手をひらりと翻して、デイジーの方を示した。

 それを見たデイジーは一瞬戸惑ったようだが、すぐに意味が分かったらしく、微笑んでから答える。

「私は去年、ボウルを提供させていただきました」

「・・・ボウル?」

 そんな武器があるのだろうかと思っていたら、デイジーから捕捉があった。

「フィンガーボウルとして使っていたんですけど、穴が空いてしまって・・・それで買い換えたんですけど、古い物を捨てずにとっておいたんですよ」

 田舎者のレオンでも、フィンガーボウルは使った事がある。食事中に手を洗う為の水を張っておく容器の事だ。

 ただ、いずれにしても、それは武器ではないはずだ。

 混乱気味のレオンをよそに、ベティが思い出したように言った。

「あー・・・そういえば、私は包丁だったなー」

「包丁!?」

 それも武器とは多少違うものの、思いっきり凶器である。

 驚きの余り声を上げてしまったレオンだったが、ベティの言葉はまだ続いた。

「でもねー、刃が取れちゃったんだよね。だから柄だけだったけど」

 それはなんというか、真の意味で武器ではない。持ったところで、これっぽっちもリーチが伸びない。

 どこか楽しそうな表情で、ベティはデイジーに話しかける。

「私の元包丁は駄目だったけど、デイジーの元フィンガーボウルは頑張ってたよね。ちゃんと盾になってたし。元木槌の一撃を耐えた時がハイライトだったなー。あの後ボコボコになってたから、それを見て、私ちょっと感動したし」

「あの元木槌は、元はと言えば大工さんが使っていた一級品だそうですから、相手が悪かったですね。でも、確かに善戦したと言えると思います」

 感動話を思い出しているようなムードになっているが、レオンは全くついていけなかった。しかも、彼女達が話しているのは使われた道具の方であって、対戦者の事についての話題が全くないのは、どうやら気のせいではなさそうだ。

 楽しそうな会話に水を差すのも悪いので、レオンはアレンに聞いてみる事にした。

「あの・・・武術大会って、どういう大会なんですか?」

 こちらを見て、アレンは真面目な表情で言った。

「ベティの言った通りだ。武器が多少変わっているが、要は相手を倒せばいい」

「・・・多少じゃないような気がするんですけど」

「一応、訓練用の剣や槍が混じっている。それを引き当てれば有利は有利だが、ボウルでもやってやれない事はない」

 アレン程の腕があればそうなのかもしれないが、異論を挟む余地のあり過ぎる言葉だった。

「引き当てたらって事は、抽選か何かで決めるんですか?」

 簡単に頷くアレン。ただそれだけで、彼は何も言わなかった。

「・・・それって、いったい何を競ってるんですか?」

 もっともな疑問だと思ったのだが、アレンはあっさりと答える。

「そもそも、それほど勝ち負けに拘っているわけじゃない。祭りを見に来た人達が楽しめるかどうかが一番だ。町の人達も、今のベティ達のように、自分が提供した物がどうだったとか、そういう視点で見ている事も多い。皆が楽しめるように考えられたルールという事だろう」

「あ、なるほど・・・」

 そう言われてみると、そんな気がしてくる。見物の人も面白いだろうし、町の人は道具提供者としても参加出来る。どちらが強いとかは度外視して、ただ多くの人が楽しめるように整えられたルールなのだろう。

 去年の思い出話に花を咲かせていた少女2人だったが、ベティが不意にこちらを見ながら言った。

「今年はとっておきのを入れておくから、頑張って引き当ててねー」

 残念ながら、彼女は少し邪な笑みをしていた。

「・・・何を入れる気ですか?」

「言っちゃ駄目なんだよねー。そういう決まり。だから、本番までのお楽しみ」

 詩を読んでいるようなリズムで話すベティ。機嫌がよさそうだ。どう見ても、一番楽しみな顔をしているのは、彼女で間違いない。

「こういう言い方もなんだが」

 珍しく、アレンが口を挟む。

「今の武術大会のルールを発案したのはフレデリックさんらしい。その頃には既に、フレデリックさんは伝承者として活動していた。だから、そういう意味でも気を遣われたのだろう」

「え・・・どういう意味ですか?」

 間接的な言い回しなので、よく理解出来なかった。ベティもレオンと同じようにきょとんとした表情をしている。しかし、デイジーは微笑んだままだった。彼女には彼の言葉の意味が分かったようだ。

 しばらく間を空けてから、アレンはゆっくりと話す。

「フレデリックさんはソードマスターの伝承者だ。彼はどんな剣でも、握ったその瞬間から、自由自在に扱えたと言われている。そういった話になぞらえたルールなのだろう。大会で用意されるのは剣以外がほとんどだが、その場で初めて握った物で勝利を収めるという点で、ソードマスターとの関連性がある。祭りの新しい目玉イベントを考える上で、そういった関連づけを持たせておけば、町の人と観光客の間でのちょっとした話題にもなる」

「へえ・・・」

 感心の声を漏らすレオン。例えば、観光客の人に変わった大会ですねと話しかけられた時に、実はこの町にはソードマスターの伝承者がいて、その人が考えたルールなんですよと答えられるというわけだ。伝説の冒険者なら広く知られているし、共通の話題にしやすい。その場では、ほんのちょっとした話題にしかならないかもしれないが、それを観光客の人が帰った先で話してくれればいい。意外なところにある小さな工夫だと言える。

 そこでデイジーが付け加える。

「ソードマスターは、食事用のナイフ1本だけで、家1軒を倒壊してみせたと言われていますから、今の大会のルールでも、全く無関係とは言えないんですよ」

 元々歴史に詳しいデイジーだが、こういう勇ましい話には目がないと言ってもいい。さすがによく知っていると思ったが、どう表現したらいいのか分からなかったので、何も言えなかった。

「レオンは普段から短剣を使ってるから、もしナイフを引き当てたら有利じゃない?」

 簡単に言ったベティだが、もちろんそんなわけがない。

「いえ・・・ちゃんとバランスがとれてないから、投げても正確に飛ばないですし、それに、投擲なんかしたら危ないですよ」

 みんなが楽しんでいる最中に、流血沙汰は御免である。

 どこか可笑しそうにベティが答える。

「そんな事言ってて、ブレットに勝てるのー?まさか忘れてないとは思うけど、リディアとステラがかかってるんだからね」

「・・・それって、結局どういう意味なんですか?」

「どういう意味でもいいでしょー?とにかく、レオンが負けたらがっかりすると思うなー。特にステラの方は、もしかしたら泣くかも」

「え・・・」

 そんなに一大事なのか。そこまでとは思っていなかったのだが。

 そこで、アレンが冷静に言った。

「引き当てた武器次第だが、レオンにも十分チャンスがある。だが、まずブレットと戦うまで勝ち残れるかが問題だな。大会はトーナメントだから、組み合わせによっては、決勝まで進まなければ当たらない場合もある」

「あ、そうなんですか・・・」

 決勝で勝ったら優勝という事になる。そういえば、優勝すれば賞品があるとラッセルが言っていた気がする。いずれにしても、もし負けたらステラが泣くというのであれば、頑張らないわけにはいかない。

 そこでふと、レオンは怖ず怖ずと聞いてみる。

「・・・ちなみに、アレンさんは出場するんですか?」

 もし対戦する事になったら、本当に死に物狂いでないと勝てそうにない。

 しかし、アレンは平然と言った。

「祭りの警備が忙しいだろうな。余裕があれば出てもいいが」

 少しほっとしたが、すぐに気付いて、今度はベティの方を見た。

 視線に気付いて、彼女は少し瞳を大きくしたが、やがて微笑んで答える。

「残念ながら、私も接客で忙しいと思うなー。どうしてもって言うなら、代わりに今から相手になってあげようか?」

「そうじゃなくて、あの、ガレットさんは・・・」

 もし対戦する事になったら、即刻降参するかもしれない。勝てる勝てないではなく、立ち向かえるかどうかが怪しい。

 ベティは片目を瞑る。不吉な兆候である。

「お父さんは祭りの運営で忙しいから、多分出られないんじゃないかなー」

 多分という言葉が少し大きめの声だった。素直にほっと出来ないレオンである。

「・・・何か知ってますよね」

「どうかなー。デイジー、何か知ってる?」

 突然そう聞かれたデイジーは、多少戸惑ったように見えたが、本気で困っているようには見えなかった。つまり、少しわざとらしかった。

「そうですね・・・ガレットさんなら、きっとお忙しいでしょうから、参加するのは難しいのではないでしょうか」

 言い方が違うだけで、内容はベティの発言と全く同じである。

 仕方ないので、レオンはもう1人の人物にも聞いてみた。

「アレンさん・・・ガレットさんの予定とかご存じないですか?」

「知らないが・・・知ったところで、状況は変わらないだろう。どうせブレットと対戦するまで勝つ以外にない。その組み合わせもランダムに決まる。今から心配していても仕方ない」

 今度は異論の余地もない。まさに正論だった。

「そ、そうですね・・・頑張ります」

 怖ず怖ずと引き下がるレオン。

 そんなレオンを見て、クスクスと笑っていたベティと、いつもの淑やかな表情のままだったものの、どこか可笑しそうな雰囲気を少しだけ漂わせているデイジーだった。



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