最終回 オレが次期姫の夫です!
暇ねん「最後とあって断トツで長い文章です」
セイクリッド学園は今日も賑やかである。と、いっても今回は賑やかの意味が少し違う。
「ほら、最後くらいビシッと決めなさい三年生!」
三年間過ごしてきた校舎、そして一年間お世話になったこの教室。
どちらも今日で見納めである。そんなことを考えながら黒板の前でいつも通りに振舞っているシール先生を横目で眺める。
あらら、シール先生泣いてるよ。まっ、初めて卒業生を出すって言ってたしな、嬉しいのかも
泣いている先生を慰める(?)ように委員長や周りの連中が先生を取り囲む。
そんな光景を笑って見て、空に視線を移す。
空は高く、広く、そんでもって晴れやかでまさに卒業日和ってやつだ。
雲も薄く掛かってるが、空の真っ青なキャンパスに程よいマッチである。
「元生徒会長!」
「ん?なんだぁ」
「写真取るのよ!あなただけよ、そんなとこでボーっとしてるのは」
委員長がカメラ片手に睨んでくる。
よく見れば先生を真ん中に落書きだらけの黒板の前に並んでいる。
こーゆうことだけは動きが早ぇのな。まったく
椅子から立ち上がりゆっくりのっそりと並んでいる連中の中に入っていく。
カメラのシャッターはたまたま教室の前を通りがかったブラウン先生にやってもらった。
もう分かっているだろうけど確認のため簡単に説明を。
オレたちは現在三年生。しかも数十分後には卒業式が始まる。
そんでもって今のオレはこの学園の“元生徒会長”と呼ばれる人である。
なぜオレがそう呼ばれるかってのは話すと長くなるので要点をまとめる。
「あなたも次期国王になる人です、それなら今のうちに人の上に立つ事を覚えなさい!」
と、去年の生徒会選挙でマリナ先輩に言われ無理やりに近い形で生徒会長となったオレです。
もっとも、この辛さをオレ一人では嫌なのでカイウスとレグも無理やり生徒会に入れました。
以上、説明終わり!
「ヤクモ!写真取るぞ、俺たち三人で!っあ、委員長、シャッター押して!」
今度は教室の後ろでレグがカイウスの肩に腕を回しながら呼んでいる。
カイウスも早く、と口パクで訴えてくる。
「はぁ~、お前なぁこれから卒業式なのにテンション高いなぁ」
「当たり前だろ!卒業だから、だ。俺とカイウスは専門・大学部に上がるからいつでも会えるが、お前は城に直行だろ?今のうちに思いで作らねぇと。ほらっ、さっさと来い!」
「へいへい」
そうなんだよな、レグの言うとおりオレもセレナと同じく次期国王として城で色々なことを学ばなければならない。元々庶民の出だからな。イチから学ばなければならない。だから時間が無いんだと
んな事といってもあの国王、四十八だろ?まだまだ現役じゃねぇか!王位継承なんてまだ十年以上先だっての!・・・・・・なんて言える立場じゃねぇか
のろのろとレグの元に行くと、腕を引っ張られカイウスとレグの間に入れられた。
「はい、チーズ」
カシャッと音が響き、レグはお礼を言って委員長からカメラを受け取る。
そんなこんなで時間を潰していると式の始まりを告げる鐘が学園内に響く。
「ほらお前達、廊下に並びなさい!」
シール先生の声でざわつきながら廊下に出て行く。
当然、オレたちもな。
「卒業生入場」
屋内広場から聞こえてくる誘導声に反応して先生を先頭に中に堂々と入っていく。
中からは盛大な拍手が出迎えてくれた。
席に着くと毎度おなじみの校歌斉唱が終わり卒業証書授与となる。
この学園では一人一人、前に行き校長?学園長?と呼ばれる偉いおじさんから授与される。
「三年A組・・・・・」
涙声で先生は生徒の名前を呼んでいく。
「十二番、ミレイ=ミール」
「はいっ!」
委員長が呼ばれ、前に行き卒業証書を手にする。
次に呼ばれのは・・・・・・
「十六番、カイウス=クロス」
「はい」
おぉ、落ち着いてるなぁ。さすがシュドの息子。委員長は堂々としてたな。
「十七番、レッグ=ウォーリー」
「は、はい!」
はは、柄にもなく緊張してやがるな、あいつ。右手右足が一緒に出てるって!笑わせるなよ!
「十八番・・・・・・コウサカ ヤクモ」
「はい」
なんすか?今の間は・・・・・・
一瞥を先生に向けるが泣いて下を向いている。おそらく声が詰まったのだろう・・・・あれ?使い方あってる?
大事な場だというのにそんなバカな事を考えて校長の前に立ち、卒業証書を受け取る。
「頑張ってくださいね、コウサカ君」
「はい、尽力します」
初めてとも言って良いほどの校長との短い会話をしてからクルッと百八十度回れ右をして席に戻る。
卒業証書授与が終わり来賓や在校生の言葉を聞き、ついに一番の問題が来た。
「では最後に、卒業生の言葉。代表三年A組 コウサカ ヤクモ」
きたぁーーーーーーー・・・・・集中集中
「はいっ!」
音を立てず席から立ち上がり前に向かって歩く。
そして振り向くのだが・・・・・・
コレが一番嫌いだ!前からそうだが、人の前で話すのってちっと苦手なんだよな
しかたない、と言い聞かせ振り返る。が、全校生徒+来賓+先生方、おまけに保護者の方々。
おうおう、嬉ーねぇ。母さんも親父も来てるしさぁ。嬉しくて涙が出るわ!もちろん嬉しさより苦手による涙です。
「えー・・・・・・このたびは我々三年生の卒業式に来てくださって誠に感謝しております。
思い起こせば三年前、オレ・・・私たちはこの高校部に上がってきました。自分は転校でしたが・・・・・・」
あれ?オレ、考えてた事と全然違う事を口にしてるんですが・・・・・・ちょっと!?
勝手に口が動く、それと同時にオレの中では“姫”がホームステイしてきたあの日から今日までの事が鮮明に映し出される。
「この三年間、本当に楽しく・・・・それでいて苦しい学園生活でした。もっとも、苦しかったのは一年の最後まででしたが。それ以降は毎日が楽しく、卒業するのが惜しいくらいです。私だけでなく、三年生全員がそう思っているでしょう。上に上がる人も、就職する人もいますが・・・・・どこにいても私た・・・・・・」
「こらーヤクモーーっ!いつまで取り繕ってるんだよ!」
「・・・・・・あ?」
人が言い感じでスピーチしてるのになんだあのバカは?
*バカ=レグ*
「いつも通りに言ってみろよ!お前の本当の姿でさぁ」
「─────えっ?」
「そうだよヤクモ。皆もそうおもってるよ、ね?」
カイウスの言葉に卒業生も在校生も騒ぎ出した。
「そうですよコウサカ先輩!」
「いつもの感じでお願いするぜ」
「ヤクモーーー、その口調はキモイぞー」
「ちょっとまて!最後の奴はだれだぁ!?」
ったく、好き勝手言ってくれやがって・・・・・いいぜ、オレのやり方でいくぜ!
オレの・・・・・・タァァァァァァァァァンッ!!
「黙って聞け、おのれら!さっきの続きと行くぜ!?オレたちは例えどこにいようと、この学園を卒業した仲間だ!覚えておけ!そして忘れるな!どんなに苦しい時も・・・・必ず友が助けてくれる事を!」
さっきとは打って変わってシーンとなりオレの言葉を聞いてくれる。
「お前たちにはまだ道がある。在校生は残りの時間を楽しみな、一生に一度の高校生活だ、楽しまなければ損だぜ。そんでもって卒業生!お前らも変わらず専門・大学部に上がる奴が多いがオレのようにここからいなくなる奴を忘れず・・・・学園生活を楽しめ!これが“元”生徒会長としての最後の言葉だ!!」
数秒沈黙が流れる。
「・・・・・・・・ウ」
「ウ?」
そんな沈黙を一人の・・・いや、数人の声が破る。
「ウオオオオオオオオオオ!!さすがは“元”生徒会長!言ってくれるぜー」
「元会長、大スキッス」
「よく言った!オレたちもお前らの事忘れないぜー!」
「よし、大成功!・・・・・あっ!・・・・・ちょっと静かにしてくれ」
「!?」
オレのさっきまでとは違う声に熱狂していた雰囲気が消えた。
「ありがとう。あのさぁ、ここである人に対してお礼の言葉を言っていいか?」
「「いーーーよ-----」」
どんなノリだよ!
「あー・・・・・・コホン。カイウス」
わざとらしく咳をしてからカイウスを見る。
「えっ!?」
「三年間ありがとうな。最初に来たときは言葉分かんなくて大変だったし・・・・・マジで感謝してるよ。ありがとうカイウス。楽しかったぜ」
「僕のほうこそ楽しかったよ」
「次は・・・レグ」
隣に座っているレグに向く。
「なんだぁ?」
「いやぁー、お礼を言う事は無いんだが・・・・」
「ねぇのかよ!」
「お礼は言わないが感謝はしてるぜ。あの時お前がオレをナイト部に誘ってくれなければ今のオレはここにはいなかった。だからさ、感謝はしてるぜ。口には出さないけどな」
「それはこっちの台詞だって。三年間楽しかったぜ、親友!」
へへっと笑いながら返してくれるレグに感謝をしながら後ろの保護者席に視線を向ける。
「最後に・・・・・てーか、今日は来ないって言ってなかった?セレナ先輩?」
「えっ?」
「セレナ姫!?」
一斉に在校生も卒業生も後ろに振り返る。
そこにはオレが話しの引き合いに出したセレナが慌ててぺこりと頭を下げている。
それも、レーベル、サバナ、国王、王妃が後ろにいて国王と王妃の近くで親父に母さんが笑ってるし。
「レーベルにサバナ先輩もいるしさぁ・・・・あんたらは国に帰ったんだろ?なんでいるのさ?」
「ひどいな八雲、親友の晴れの舞台を見に来て上げたのに」
頼んでねぇーよ!と口の中で転がす。
「私もサバナと同じだ。我が剣の好敵手が演説すると聞いてな。来てやったのだが・・・・・情けない演説だな」
「うっせーよ!大きなお世話だドアホウ!」
レーベルのヤロウ・・・・この前の世界大会でオレに負けた事を嫉んでるのかぁ?
「二人ともあまり八雲をいじめないの・・・・・ごめんね八雲、ちょっと驚かせたくて。迷惑だった?」
その離れた距離でも分かる不安な顔をしないでくれ。ほら、後ろ向いていた奴がさっきとは違う意味で殺気を放って睨んでるよ。さっきが殺気・・・・・ごめんなさい
「迷惑じゃないって、ただ・・・・・その、嬉しくてな」
「よかったぁ。帰りは一緒に帰れる?」
「少し待つ事になるけど?」
「それでも良いわ」
「わかった。ってわけでさっさと終わらせるぞ!以上、卒業生代表高坂 八雲でした」
言い意味と悪い意味のブーイングが室内を行ったり来たり。
卒業式も無事に終わり、もう一度写真だぁ、と写真を撮ったり、先生に感謝の気持ちを込めて寄せ書きを渡したり・・・・・・いろいろと楽しむオレ・・・たち。
「さーて・・・・・・さよなら、だな」
「言葉が違うでしょ・・・・」
「そうだぜ。お前も言っただろ、困った時には友が助けてくれるって。いつでも頼って来い」
「おう、期待してるぜ!・・・・・・んじゃ、“さよなら”じゃなくて“またな”だな」
校舎の前でまだ卒業生達が泣いたり笑ったり名残惜しんだりしている中のオレと親友のやり取り。
「んじゃ、またな!」
「うん、またね」
「まったなー」
手を上げながら二人に手を振り交わす別れの挨拶。
そのまま校門でまっているセレナたちの下に向かった。
そこでは、卒業生にも負けず劣らずの人ごみと泣き声と笑い声。
まぁ、ほとんどはレーベル、サバナ、セレナの三大王族の所為なのだが。
「お待たせ。あっ、レーベルまだいたの?」
「ほほう、貴様、よほど死にたいらしいな・・・・・」
「冗談だって」
笑って誤魔化すがレーベルは冗談を真に受ける奴である。
そんな奴を横に置いておいてセレナに話しかける。
「ごめん、またせたでしょ?」
「いいのよ。私が勝手に来たのだから」
「まぁ、そう言ったらそれでお仕舞いなんですが・・・・・・・そうだっ!セレナ!」
それではオレの気がすまないので・・・・・えいっ
「なに・・・────────っ!」
周りの連中が凍りつく。レーベルなんて氷河期突入してるよ。
あっ、サバナは呆れてる。セレナは・・・・・・驚きと恥ずかしさで顔が真っ赤。
かわいい。
「んっ・・・・・んは。これでよしッと!」
「な、な、な・・・・・」
「コレがオレからセレナに対する待たせた事に対する謝罪とオレの気持ち。大好きだぜ、セレナ!」
「─────んも~、そんなこと言われたら許すしかないじゃない・・・・・私も大好きよ、八雲」
もう一度・・・今度はセレナからの軽いキス。しかしそれが氷河期を溶かすスイッチだった。
パリンっとなんかゲームの音みたいのが聞こえたんだが・・・・・・
そーっと振り向いてみるとレーベルが木刀ではなく真剣・・・それも日本が誇る刀、日本刀を鞘から抜き出していた。
「ちょっ!」
「死にさらせーーー!!」
「ギャーーーーー!!!」
できればこの平和な時がずっと続いてくれますように。そうオレはあの時と同じ色の空に願っている。
「八雲、いる?」
「セレナ?どうかした?」
「王位継承が始まるのにどこに行るのかなぁ、と思って」
「ごめんごめん。今日の空は卒業式の空と似ていたからつい、ね」
「ふふっ、卒業式の日の事を思い出したの?」
「まぁね・・・・・・セレナ」
「なに?」
「愛してる」
「私も・・・・愛してるわ」
愛の言葉を交わしたオレとセレナはゆっくりと唇を重ねた。
自己紹介?いいぜ。名前はヤクモ=ザ=セイクリッド
年齢?二十三だ。
職業?う~ん、職業といえるか分からんが一国の国王だ。
ん?さいごか。なになに、あなたの愛する人は誰ですか?
んなもん決まってるだろ。
─────────セレナ=ザ=セイクリッド
今回の・・・・・・この小説の反省・感想
暇ねん「終わりました、終わってしまいました『オレが姫の婿候補!?』」
八雲「長かったなー」
暇ねん「ねー。それに国王の王位継承の次期を早めちゃったし」
セレナ「本当よね。それに暇ねんなんて一時期、私と八雲をくつっけないで終わらせる事を考えてたんでしょ?」
暇ねん「うん。バッドもいいかなぁなんて。でも、やっぱバッドは嫌いだから」
八雲「良いことじゃないか」
暇ねん「ちなみにバッドエンドだとセレナとくっつくのはレーベル君です」
八雲「・・・・・まぁ、妥当だな」
暇ねん「だろ?」
セレナ「なら八雲は?」
暇ねん「マリナ先輩」
八雲「ふーん・・・・・」
セレナ「なに?そのそれも良いなぁ、って顔」
八雲「ちょっ!?」
暇ねん「はいはい、イチャつくなら向こうでやってろ!俺は一人身なんだよ!」
八雲「わるいわるい。で、どうするのよ?」
暇ねん「なにが?」
セレナ「これからの新作よ。感想だと続編って来てるけど?」
暇ねん「だから、続編はできんって!ネタないし。君たち二十三と二十五だよ?解ってる?」
八雲&セレナ「そうでした」
暇ねん「っつうことで、新作の内容はあるので今月中に出します。できれば読んで下さい!」
暇ねん&八雲&セレナ
「『オレが姫の婿候補!?』を今まで読んでくれてありがとうございました!
次回の新作をまた読んでくれる事を祈っております。では、また(な)(ね)」