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オレが姫の婿候補!?  作者: 暇な青年
セレナ姫奪還編
72/73

みーつけた

日本に着くとオレは寒さに体を縮こませながら空港を出ると、約半年ぶりの日本に懐かしみを感じながらタクシーである場所に向かう。

ちなみに、レーベルの自家用ジェット機内で制服から私服に着替えました。着替えは親父が家から持ってきていたらしい。




タクシーに乗って二時間が過ぎると、タクシーの窓から外の景色はオレの良く知った光景を通り過ぎている。


「ここでいいです」


料金を払い、オレはタクシーからでた。

寒いな~、と呟いてから着いた街の中をゆっくり、懐かしみながら歩き出す。


セレナが日本に来て、最初に来た場所だな。確か、あの時はドロボウと遭遇したんだよな


「あの時はマジでやばかったな」


ゆっくりゆっくりとしかし、確実に目指している場所に向かって足を進める。

数十分して着いた場所は懐かしい我が家。


「半年振りか・・・・・・・そーいえば母さんに電話一回もしなかったな。怒ってかな~」


そんなアホらしいことを考えながらオレは玄関の扉を静かに開ける。

中に入ると何一つ変わっていない家の中。


「なんか・・・・・あの時と似てるな」


去年の夏休み前日の学校から帰宅した時を思い出してしまう。

あの時は母さんが慌てて玄関に出てきたんだよな。


「まったく、半年振りに帰って来たと言うのに・・・・・ただいま、の一言もないの?」


「母さん・・・・・・・ただいま」


リビングから現れた母さんはオレを見るなりため息を一つ溢した。


「よし・・・・・・・おかえり、八雲」


当たり前のような挨拶を交わして、オレはリビングに向かった。

この場面もあの時とダブるな。向かい合わせに座り彼女の話し、まぁ、今回は違うけどな。


「で?今日はどーして帰ってきたのかな?」


台所から温かいお茶が入ったコップを目の前に出してくれた。


「ん?まー・・・・かくれんぼ?」


お茶の入ったコップを両手でさわり、手を温めながらオレは悩んだ末に子供っぽく言ってみた。


「ふふ、意味が分からないよ」


と、言い返してくるものの母さんの顔には上出来よ、と言いたそうに見えた。

それからセイクリッドでの生活をオレは母さんに話した。


友達の事


先輩の事


親父達の事


セイクリッド学園で過ごした半年の出来事を。


母さんはそれを自分のことのように笑って話を聞いてくれた。

さて、現在時刻は午後の五時三十分。家に帰ってきて早くも一時間が経っていた。


「さ~て、時間も時間だし飯でも作るかぁ」


立ち上がり台所に向かって歩くオレに母さんは、かくれんぼは?とニヤケ顔で聞いてくる。


「ん~、メシ作ってからかな。早く見つけたらつまんないだろ?」


「ふふ、鬼も大変ね。さーて、久しぶりに母子で夕食を作るとしましょう」


「母さん・・・・・手伝ってくれるの?」


「あら?心外ね、手伝っちゃいけないのかしら?」


「まさか」


母さんと一緒に料理作るのも懐かしいな。今までならどちらかが作って、どちらかが待つって形だったからな


「なに笑ってるのよ。そんなんじゃ指切るわよ?」


それはこっちの台詞だって。オレの方ばっか見て、火傷するなよ。とは言えず、笑って誤魔化す。

よし、後はご飯が炊けるのを待つだけ。あと二分。


「そろそろ、鬼さんは探しに行かないといけないんじゃない?」


味見なのかつまみ食いなのか漬物を摘みながら母さんがオレに視線を向ける。


「んじゃ、いってきまーーす」


時間も時間なんでオレは二階に向かって歩き始めた。

階段を上りながらズボンのポケットに閉じ込められている鍵を掌に取り出す。


「・・・・・・・」


オレの部屋の前。オレ自身も忘れていた。

そー言えばこの扉に鍵が付いてるんだよな。

これを思い出したのは当然の事ながら国王と親父の話を聞いた時だ。


鍵を鍵穴に入れてみるとピッタリ。

鍵が開く音が聞こえ、ドアノブに手を掛ける。そこでピタッとオレは動きを止める。


「・・・・・・・・」


いくらオレの部屋だからってセレナがいるのだから、ノックの一つぐらいした方が良いよな?


瞬時に答えを導き出し、扉を三回ノックする。が、返ってきたのは静寂だけだった。

返事がない。あれ?オレの予想外れた?いや、母さんの表情から見てアタリだろ!んじゃ隣の部屋?


そう思い、ホームステイの時にセレナが使っていた部屋を覗くと誰もいない暗い部屋。

確認のため明かりをつけるが・・・・・・誰もいない。


「やっぱ、オレの部屋だよな」


もう一度ノックするが返事がない。

あれ?セレナさん?


そーっと扉を開け中を見てみると・・・・・・


「あ・・・・・なにしてるんだか」


中では部屋の明かりを点けたままオレのベッドでぐっすりとお寝んね。

その姿がとても愛くるしくベッドに近づき、セレナの頬を触る。


「ん・・・・・・」


ピクッと瞼が揺れるが起きる気配はない。

どうしたものか、と考えている時ある本の内容を思い出した。


「ふっ」


小さく笑ってオレはセレナの耳元に口を近づける。それは今にも当たりそうな程の近さ。


「セレナ─────────好きだよ」


「う・・んっ・・・・・───────っ!?」


自分で言うのもアレだが、今の声はマジです。

それに反応して答えてくれたのか、セレナは目を覚ますと耳まで真っ赤になってバッとオレから飛びのく。


可愛い・・・・・ここに来てオレのキャラが崩壊してきた


「や、や、や、や、や、や、やくもっ!!!!!??」


あら~てんぱってるわ。まぁ、そりゃぁそうだろうな。誰だって寝てる時に耳元で愛の告白なんて。


「おはよう、夕飯の準備できたよ。早く降りて来てくれ。親父達にも電話しないといけないから」


「いやっ、それより・・・・」


「ん?それより・・・・・・なに?」


「~~~~~~~~~っ!!」


あえて知らん振りしてみると、セレナの表情が目まぐるしく変わっていく。

始めは恥ずかしさ、次に嬉しさ、最後に二つが混じったような表情。まっ、どれもオレがそう見えたってだけだが。




久しぶりに三人でとる夕食はオレと母さんの話しだけでセレナは真っ赤な顔を持続しながらモジモジと食べて終わった。

その後に親父に電話をかけた。


「どうやら無事、セレナ姫を見つけられたようだな。流石は俺の息子だ。鼻が高いぞ」


「どーも、セレナの方は顔を真っ赤にして黙ってるけどな」


電話をしながらチラッと顔を向けると真っ赤っかのセレナ。


「・・・・・・何をしたんだ?」


「いや、オレが見つけたときに寝てたからちょっとした悪戯を・・・・・」


「八雲っ!!アレは悪戯だったんですか?」


今の言葉を聞いていたのか真っ赤な顔をしたままグイっと顔を近づけてくる。

目には涙が溜まっている。そんなセレナを見て、オレは困りながらもセレナに向けていった。


「耳元でやったのは悪戯だけど、内容は本当だ。もう一度言うか?」


「ふふっ・・・・・分かっているわよ。八雲の気持ちも私自身の気持ちも」


「そうか」


満面の笑みのセレナを見てさすがにオレも限界だって。

グイッと空いている左腕をセレナの腰に回し抱き寄せる。


「きゃっ──────どうしたの八雲?」


「いやっ、ちょっと理性があれなもので・・・・ちょっとぐらいいいかなぁ・・・なんて。嫌だった?」


「そんな事ないでしょ。好きな人にされるのだから」


「それってセレ───────ッ!!?」


「おーーーーい、何してるんだぁ?息子よーーー」


受話器からきこえて聞こえてくる親父の退屈そうな声。

しかしオレはそれ以上に目の前で大変な事が起こっている。


「ん・・・・・んっん・・・・・」


「んんっ・・・・・」


オレの唇とセレナの唇が・・・・・ってうぉぉぉい!?

なんで?えっ?舌っ!?舌がっ!!どうしてこうなった?オレが抱き寄せた所為か!?そうなのか!?


「ん・・・・はぁっ・・・はぁっ・・・・・」


「はぁ・・・はぁ・・・・・」


目が離せねぇ・・・・・・じゃなくて!


「セ、セレナさん?オレ、今のファーストですよ?」


「ふふ、奇遇ね。私も」


「「・・・・・・・」」


会話が無くなった。そして気付いた。受話器から親父の声が聞こえなくなっている事に。


「あぁっ!お、親父!悪い!で、なんだっけ」


「息子よ、いくら試験に合格したと言っても、親の前でキスするのはどうかと・・・・・」


電話でも、と付け足してくる親父に返す言葉がない。

しかも、横目で台所をみると花唄交じりで皿洗いの母さん。どうやら見ていたらしい。


「まぁいい。セレナ姫に代わってくれ」


「お、おう・・・・・・・セレナ、電話」


「うん」


頷き受話器を受け取るセレナ。

気付けば今も腰に腕を回している。


さすがに腕を戻すか。電話しにくいだろうし・・・・・・


腕を離し、真っ赤になっているであろう顔で台所に麦茶を取りに行く。

気を使っているのか母さんは何も言ってこない。ぶっちゃけ、何か言ってくれる方が何百倍もありがたい。


こうしてオレは最後の婿候補の最終試験を合格する事ができた。

この情報は一日、いや、半日でセイクリッド中を駆け巡りお祭騒ぎだったと言う事はセイクリッドに戻ってから知る事になった。




セレナと一緒にセイクリッドに戻り、いつもの学園生活を送っていたのだが、早いものだ。

それはもう、早いのなんのって。少年ジ●ンプやマ●ジンのページをめくる様に時間は経っていた。


「これより第七十三回 セイクリッド学園卒業式を始めます」


セレナたち三年生の卒業式が始まった。

校歌斉唱、卒業証書授与、来賓の言葉、在校生からの言葉が次々に終わり、残すは卒業生の言葉だけである。


「卒業生の言葉。代表三年A組、セレナ=ザ=セイクリッド」


「はいっ!」


卒業生の列から出てきたセレナは前に進んで行き、こちらに向き直り一礼をする。

その姿は堂々としたもので屋内広場にいる生徒、保護者、先生方の視線が釘付けになる。


「私はこの三年間をとても楽しく、有意義に過ごすことができました」


堂々とし、三年間の思いをはっきりと口にしていくセレナを見て、オレも安心する。

卒業式が始まる前なんて落ち着かない感じだったしな。


しかも、緊張を無くすためにキスを強請るし・・・・・・してしまうオレもオレだが


セレナを見ながら思い出して、つい口元がにやけてしまう。

手で隠しながら耳をセレナの声に傾ける。


「最後に・・・・・・・私は大学・専門部には上がらず、この国の王妃となるべく日々勉強の身になりますが私はどんな事があっても挫けたりめげたりしません。なぜなら、私には多くの友人・家族・市民の皆さん、なにより・・・・・私が愛する人の為に私はこの国を守っていきます。あの人と共に」


「三年間・・・本当にお世話になりました」


頭を下げながら感謝の言葉を放つセレナに盛大な拍手が贈られる。

オレも例外ではない。ただ、できればオレのことを言わないで欲しい。なぜなら・・・・・周りの視線が痛いのだ。これはハードルが高くなってしまったな。


卒業式が終わり、大学・専門部に上がる者もそうでない者も、皆一時の別れを惜しんでいる。

後輩のオレたちも先輩達の最後だと言うので外で話しをしている。


「まっ、たとえ校舎が近いといっても後輩にとっては部活以外では余り会うことも無いからな」


「そうだね。それにセレナ先輩なんて、ねぇ」


「そうだな。あの人はこれから世界の事、国の事を考え、勉強していかないといけないし・・・・・お前がしっかりするんだぞ!」


ナイト部の先輩達にお祝いの言葉を贈り、オレとカイウス、レグは近くの桜の木の下で雑談している。


「そうだな、オレも頑張らねぇとな」


後輩や同級生と写真を撮り合っているセレナを見て、つくづくそう思わせられる。

そんなときだった。セレナがこちらに気付き手招きしている。どうやら何か言っているようだが、如何せん距離があって聞こえない。


「んじゃ、行ってくるわ」


「おう、俺たちは先に帰ってるわ」


「また明日」


オレは二人と別れて人ごみを掻き分けてセレナに近づく。

セレナは頬を膨らませて待っていた。


「ん?どうかした?」


「どうかした?じゃないわよ、お祝いの言葉もくれないなんて」


「いや、オレはいつでも言えるけど、後輩や先輩達は今しか言えないから、さ」


「むぅーそれでも私は言って欲しいんだけど・・・・・・」


ぷくーっと頬を膨らませる姿に周りも驚いている。まぁ、当然だな。あのセレナがこんな顔するなんて思ってもいなかっただろう。


「はいはい。セレナ先輩、ご卒業おめでとうございます」


「むっ、言い方が硬いけど・・・・・まぁ、いいわ。ありがとう八雲」


お礼に、と言いながら彼女は顔を近づけ、頬に唇を当てた。

それを見た周りの空気が凍った・・・音が聞こえた。

あれ?前にもこんな事が・・・・・


「ヤクモォォォォォォォォッ!!!!!」


「ちょっ・・・・・マジでーーーーーーーーー!!!??」


別れの日なのに別れるどころか鬼の形相の男子生徒(卒業生+在校生)の群れに追われる事となった。


今回の反省

暇ねん「いやぁ長くなった」

八雲「まったくだ。無駄になげぇ」

暇ねん「まぁ、セレナも無事卒業でき、思いも告げたし・・・・万事OK?」

八雲「う~んでもオレ、まだセレナから好きって言われて無いんだけど」

暇ねん「・・・・・・・あれ?」

八雲「うん。だって“好きな人”とは言われたけど“好き”とは言われてない」

暇ねん「・・・・・・キスがあったから良いじゃん」

八雲「それ結果論」

暇ねん「世の中は全て結果論だ」

八雲「えぇ~~!?」


暇ねん「そうそう、感想に『続き』と書かれましたがスイマセン。オレ婿の続編は無いです。と言うより、完結させる気ですのでできません」


次回最終回『オレが次期姫の夫です!』です。

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