誰が敵でもオレは・・・・・テメェを・・・討つ!
「どうして・・・・・・なんで親父がっ!?」
「八雲よ、言っただろ。俺は依頼されただけだって」
またそれかよ・・・・・クソ親父!
自然と拳に力が入る。
しかし、それをどうする事も今のオレにはできない。
「依頼って・・・・・依頼されれば今まで守ってきた物を捨てるって言うのかよっ!?答えろっ!!」
痛みを奥歯で噛み砕き、オレは親父に襲い掛かる。それすらも親父は簡単に避け、何太刀かをオレに打ち込む。
見えねぇ・・・・・ジン先輩のラピディより、速いスイングなんてありかよ!?
「俺は俺の信じる人にしか付いていかん。そして、俺が信じる人はあの人だけだ」
「ぐっ・・・・いつまでも・・・・格好つけてんじゃ、ねぇ!」
横に木刀を振り抜くが親父は五月雨を止めたときと同じく、左手で受け止めるとそのままオレを引き寄せ木刀を離し、胸倉を掴む。
「ぐはっ!クソ・・・・・親父・・・・・・」
「格好つける、か。ふん、お前はいつから口だけ達者になった?」
「ぐ・・・・・・・」
今まで見た事がない親父のまなざし。
動きたくても動けない。なぜか?親父の目がそれを許さないからだ。
親父の目には忠誠心がくっきりと浮かび上がっている。
例え誰が相手でも俺は負けない、と物語っている。
「まださっきの方が刃に俺を倒す、という気迫があった。だが、今は何だ?俺が相手と知って怖気づいたか?」
「うる・・・・せ・・・・・ぇ・・・・・」
「お前は俺が、いや、親が、友達が、世界の全てが敵に回ったら刃を手放すのか?」
「─────っ!」
「守りたい人を手放すと言うのか!答えろ、高坂 八雲!」
「オ・・・レは・・・・・・」
左手をゆっくり、ゆっくりと持ち上げ、胸倉を掴んでいる親父の手首を握る。
今ある力を目一杯注ぎ込む。
「オレは・・・・・そこまで堕ちるつもりは・・・・・・ねぇっ!」
「むっ!」
木刀で親父の左腕を叩き、胸倉を手放した瞬間にオレは後ろに後退する。
数回咳き込み、ボーっとする頭を頬を叩いて目を無理やり覚ます。
「さっきから好き勝手言いやがって・・・・・・オレは、敵が誰であろうと、世界がどうだろうと関係ねぇ!
オレが刃を・・・誇りを手放す時はあいつが幸せになった時だけだ!」
「はや─────チィィ!!」
振りぬいた木刀が親父の木刀とぶつかり合う。
それは今までの避けたり、手で受け止めたりするのではなく、木刀で受け止めた。
「感謝するぜ親父ぃ。そして、同情するぜ。オレはアンタを・・・・・・・討つ!」
「なっ!?」
受け止めていた親父がオレの力によって後ろに押し戻される。
それに唖然とている間にオレは懐に入り、一発、二発と木刀を振るう。
「お前・・・・」
「いくぜ親父・・・・・・これが、オレの総集技だ」
両手でしっかりと木刀を握り、真正面から親父に対して突っ込む。
対して親父も直線勝負と睨み、木刀を頭の上で構える。
親父の構えを見てもオレの考えは変わらない。
足に力を込め、床を力強く踏む抜く。
同時に親父の木刀が閃光のような速さで上から振り下ろされてきた。
「なっ───────!!!!?」
振り下ろされた木刀を紙一重でかわし、オレは技の始動に入った。
渾身の一撃が避けられ親父は信じられない、と言いたそうに口を開け呆然としている。だが、その表情の理由は別にある。
「消え・・・・・た・・・・・・?」
オレは体を地面ギリギリまで低くして両手で持っていたのを右手一本に持ち替える。
そしてそのまま─────
「─────総集技“神隠し”」
体を“立ち上がらせる勢い”と“下から一気に持ち上げる速度と威力”を合わせた刃が親父の顎を切り裂いた。
大人の体が数センチ宙に浮き、親父の体は仰向けに崩れ落ちた。
「ヤクモっ!」
親父が崩れ落ちると同時といっていいほどのタイミングでバンッと扉の開く音が聞こえる。
満身創痍の体で扉に向くと傷だらけのカイウス達が笑顔でこちらを見ている。
「よぉ・・・・勝ったぜ」
「ヤークーモー・・・・流石だな!」
「うぉっ!」
走って寄ってくるレグはジャンプして体ごとオレに抱きついてくる。
体を張ってキャッチしたは良いが、今の状態でレグの体を受け止めるには結構大変だった。
「さすが私のライバルだな」
「あら?いつからオレがレーベルのライバルになったんだ?」
「あの時からだ」
どのときだよ!と言いたいが今は差し出されている手を握る事にした。
カイウスに顔を向けると満面の笑みでオレの背中を何回も優しく叩く。
サバナなんて目に涙が溜まってるよ。
「そうそう、今回の件だけど・・・・・」
「そうだ!親父、何でこんな・・・・事・・・・を・・・・あれ?シュドさんにメイさん、ルミナさんも」
倒れている親父に話を聞こうとして向いてみると何故かシュドたちが親父の体を心配している。
いや、心配するのは当然っちゃぁ当然なんだが・・・・・・
「八雲、修二の変わりに私が話そう」
「レーベル?なんでアンタが?」
「いいから聞け。今回の一件だがな、これはお前に対しての婿候補の最終試験だったんだ」
「・・・・・・・・・は?」
何言ってんのレーベルさん?
何度も目をパチパチとさせる。
傍から見たら相当可笑しいだろうな。
「だから、これはお前がセレナ姫の夫に相応しいかの試験だって言っているんだ。理解できてるか?」
「な、な、な、な、な、なんですとーーーーーーーーーー!?」
じゃぁなに、セレナが攫われたってのは・・・・・嘘ですか!?
それより・・・・・
「なに?レーベル知ってたの?サバナ先輩も?」
「あぁ、城に連れてこられる時に一通りの筋書きを聞いたからな」
「ごめんな八雲」
いや、めっちゃ悪いと思ってないだろ、サバナ先輩
「カイウスとレグも?」
「いや、僕たちはさっき教えてもらったよ。前の部屋に居た二人組みが実は父さんとメイさんだったんだよ」
「そーゆうこと、それでちょっとしてから今回の一件の全てを教えてもらったってわけだ。良かったなヤクモ、コレでお前はこの国の次期国王って事だ!」
めっちゃ喜んでるレグには悪いんだが、まだ疑問点が残ってる。だって・・・ねぇ。
「それってつまりオレがセレナと、ってわけだろ?レーベルはそれで良いのかよ?サバナ先輩も」
「僕は元から乗り気じゃなかったからね。レーベルの方は知らないけどさ」
「ふっ、愚問だな。セレナ姫が一番信頼しているのがお前なら、姫の幸せの為に私は身を引くさ」
「レーベル・・・・・・ありがとうな」
「ふん!だが、姫は諦めるが世界一の称号が渡さんぞ」
「上等」
そんなふざけた会話をしている間に親父は起き上がりオレの頭にポン、と手を置く。
「強くなったな、八雲」
「あー・・・・ごめん、マジで振りぬいたから・・・・顎大丈夫?」
「あぁ、なんとかな。それより、聞いていると思うがこれは最終試験だ」
「しってるよ。で、結局セレナはどこ?」
その質問に親父はニヤッといやな笑みを浮かべる。しかも親父のこの笑みはオレにとってめんどくさい事を意味している。
「それは秘密だ。姫を探し出すのが最終試験だからな」
「んなっ?」
客間に戻るとまずはメシ。その後に親父と国王の話が始まった。
「すまなかったね、八雲君。修二と本気の戦いをさせてしまって」
「いいですよ。セレナが攫われたわけじゃないって分かっただけでも。でも、一体どこへ?」
「ほっほっほ、それは言えんの。ただ、八雲君が知っている場所だって事は教えておこうかの」
「オレの知っている場所・・・・・・・?」
ちなみにセレナの事だが、聞くと昨日までに学園での作業を終わらせていたらしい。
作業というのは写真を撮る事や色紙などなど。
つまり学園全体でグルだったというわけだ。
「そうだな、ヒントぐらいやろう。ヒントはオレはお前にあるものを渡しただろ?それがヒントだ」
「ある物?」
言われて思い出すために目を瞑る。
親父から渡されたものなんて数少ないし・・・・・・えーっと携帯にガチャのカプセル。それから・・・・・・っん?
「あーーーーーー」
「思い出したのか?」
顔をグイッと近づけてくるレグを押し返すと思い出したことを口にする。
「前に城の裏口の鍵とか言って鍵を渡された・・・・・・ん?ってことは、あの鍵で開く場所・・・・・・・どこだ?」
「裏口の鍵?この城に裏口なんて合ったか?」
「いや、無いはずだよ」
サバナとレーベルの会話からするに城内ではないな。調査の時、全部の部屋を探したし。
それじゃ、これはどこだぁ?
「あぁ、必ずしもセイクリッドにあるとは言えないからな」
「は?セイクリッドには居ないって、他にオレが知っているのは日本だけ・・・・・・あぁ!!」
一つだけある!この鍵が開く物が日本に。そうと決まったら日本に戻るぞ!
膳は急げだ、とか考えているとレーベルが自家用ジェット機を手配しやがった。
は、はは・・・・・
引きつった笑顔でオレはセイクリッドから日本に帰国する事になった。
今回の反省
暇ねん「来た!ついに・・・・・・」
八雲「次回最終回か?」
暇ねん「それは次の次」
八雲「それじゃ、何だよ?アンケの回答か?」
暇ねん「それも一通もなし」
八雲「・・・悪い」
暇ねん「分からないのか八雲君?君だけのオリジナル技ですよ」
八雲「あぁ!?そうだった。名を神隠し」
暇ねん「いやー、このままパクリのまま終わらせようと思ったがオリでやりました」
八雲「あざーっす!」
次回『みーつけた』です。