誰だよ・・・・・あんた
レーベルとサバナと分かれて結構歩いたはず。それなのに階段は下へ下へと向かっていく。
「おいおい、どこまで降りていけばいいんだよ」
「さーな」
なんて事を言っていると目の前に扉が現れた。
さっきの事もあるし、後ろを振り向くが誰も現れない、何も聞こえない。
二人に目で合図してオレは扉を開ける。
「うっ!」
扉を開けるとまぶしすぎるほどの光がオレたちの視界を閉ざした。
光に慣れ、ゆっくりと目を開けると顔の上半分を仮面で隠した者が二人、それも木刀を持った者が待ち構えていた。二人が立っている場所はさっきの部屋に比べると広くない部屋の中央に立っている。
「次の相手はこの二人か・・・・・・・」
「はっ、上等だぜ。ここは俺とカイウスで足止めするぜ!」
「レグ?何を・・・・・」
「そうだね、一刻も早くセレナ先輩を確認したいし・・・・・ヤクモは先に行って」
「お前ら・・・・・・わかった、ここは頼むぜ!」
中央にいる謎の二人を迂回するように部屋の端を走り抜けようとすると片方がオレに向かって仕掛けてきた。
なんだよ!?こいつの速さ・・・・・尋常じゃねぇ!
中央から一気に近づいてきた人物は見える口元を動かさず、木刀を横に振りぬいてくる。
防御しようとオレは木刀を横に出そうとしたがそれよりも早く相手の木刀がオレの体を獲った。
「しまっ─────」
目を瞑り、痛みに対する構えをしたが痛みはいつまで待っても来ない。
恐る恐る目を開けてみるとオレと相手の木刀の間に別の木刀が割って入っていた。
「レグ・・・・・」
「油断してんじゃねぇーよ。ったく、セレナ先輩を連れ戻したら俺たちに何か奢れよな!」
「おう、期待してろ」
レグが止めている間にオレは扉に向かって走る。
だが、それを許さない、と言わんばかりにさっきとは別の相手が切りかかって来る。
そぉ何度も・・・・・無様な姿は見せねぇよ!
さっきの相手と比べて速度に爆発力がない。練習試合のレーベルの方が数倍速い。
オレは体を捻って木刀を避け、お返しと言わんばかりの剣術を相手に叩き込む。しかし、これはバックステップによって避けられる。
「あなたの相手は僕ですよ」
オレの攻撃を避けた相手にすぐさま刃を振るう。
一瞬だけカイウスとレグを見てからオレは扉を開けて先に進む。
「さーて、さっさと倒してあいつの後を追うぜ、カイウス」
部屋の中心に移動し、背中合わせのカイウスに声を掛ける。
「そうだね。でも、油断はしないようにね、レグ」
「分かってるさ・・・・・・いくぜっ!!」
「おおおおぉぉぉぉぉぉぉおぉぉっ!!!」
一人となったオレは階段を上がっていく。
何故かさっきの扉から階段は上に向かって作られている。
それにゴールが近いのか階段の壁にはロウソクが並べられており明るい。
「まってろよ・・・・・セレナ・・・・・・・」
扉にはすぐたどり着いた。
乱れた呼吸を整え、オレはゆっくりと扉を開ける。
中に入るとこの部屋は今までとは違った造りとなっていた。壁には神秘的な絵が描かれており、床にも何かを真似たような絵が描かれている。
そして部屋の奥にはカーテンで向こう側が見えないようになっている。
「なんだぁ・・・・・・変な場所に出たな。さっきみたいに誰か待っていると思ったが・・・・・・」
「あぁ、待っているさ。高坂 八雲」
「!?」
カーテンの奥から出てきた人物。
今まで同様、顔の上半分を仮面で隠し、手には木刀。
それ以外に分かるとしたら相手が大人で男だってことだ。声からも体格からもそれはすぐ理解した。
こいつが・・・・・あの集団の隊長か?
「あぁ、そうだ。俺はあいつらの部隊長だ」
「・・・・・・」
「どうかしたか?」
「ご丁寧に心の中を呼んでくれてありがとうございますっ!それじゃ、ついでに答えてもらおうか、セレナを攫った理由と居場所を!」
男に向かって走り出す。
木刀があたる範囲まで接近して振り抜く。
「そうか・・・・・なら先の質問を答えるとしよう」
男はオレの木刀を簡単にいなすと鋭く木刀の先端を突き出す。
それも何回も。ステップを混ぜながら避け、距離を取ると勝負に出る。
「喰らいやがれ──────五月雨」
正面から突っ込み、一瞬で横に移動して木刀を振り抜く。
それに反応する男は受け止めようと木刀を守りに使う。が、オレの木刀が男を襲う事は無い。
右手から左手に木刀を空中で持ち返ると全体重を乗せて振り抜く。
防御のタイミングがズレた所に渾身の一振り・・・・・コレで決まる、いや、決めてみせる!
「質問しておいて聞く気が無いとは・・・・・・・まったく、親の顔が見てみたいな」
「なっ────!?」
決まった、と思えるほどの一振りを男は左手で木刀を掴んで止めた。それも素手である。
うそっ?防御のタイミングをズラして振りぬいたんだぞ!?それを素手で意図も簡単に止めるだと?
「まぁいい、俺がセレナ姫を攫った理由はある方からの依頼でな。その為にセレナ姫を攫った。どうだ?コレで満足か?」
同時に男は左手を離した。
しかし、オレにとっては大変困った事になった。
得意の五月雨を止められた。それも初見で・・・・・・・くっ!
「おいコラ!まだもう一つの質問が残ってるだろ!」
叫びながらオレは男の周りを走り、背中から切りかかるが男はこちらを見ずに体をずらして避ける。
その姿はまるで子供が親に遊ばれているように・・・・・・・
「そうだったな、確かセレナ姫がどこにいるか?だったな悪いがそれは言えんな。だが、この城にもセイクリッドにも居ないという事は教えておいてやろう」
「ふざけ・・・・・」
刹那、オレはアイツを見失った。それも目の前に居た筈の奴を。
代わりにオレの横を風が通り抜けた。
「鈍いな・・・・・倒れる事さえも」
「ぐはっ!?・・・・・・・なん・・・・だ・・・・・・っ?」
風が通り抜けた時、肩・右腕・腰・左太腿が痛みによって悲鳴を上げ、床に片膝をつく。
男はオレの後ろで肩に木刀を預けてオレを見下している。いや、仮面によって素顔が見えないため何とも言えないが、そんな気がした。
「よわいな。これでよくセレナ姫の婿候補になったものだ。笑えるな」
「んだとぉ・・・・・・」
「吠えるだけなら犬でも猫でも赤子でもできる・・・・・ふん、鯉は竜にならないか」
「意味・・・解んねぇこと・・・・・・・・・言ってんじゃ、ねぇっ!」
木刀を杖に立ち上がり木刀をビシッと男に向ける。
その姿に男は口元を歪ませる。
「大体、てめぇは・・・・・だれだっ!?」
「ふ、ふふ・・・・ハハハハハっ!!」
「何笑ってやがる」
その笑い方は男に似合わない笑い方であった。口を大きく開け、声を高くして笑う。
それが似合わないとオレは感じた。
「まさか本当に分からないなんてな、俺は悲しいぞ・・・・・・八雲」
カチャリ、と音を立てながら男は仮面を取った。
「なっ・・・・・・ま、まさか・・・・・・」
耳を疑った。男の声に。
目を疑った。男の姿に。
「よう・・・・・・・・八雲」
「お・・・・親父・・・・・・?」
そこに立っていたのはオレの父親、高坂 修二だった。
今回の反省
暇ねん「皆様、昨日のアンケートの返事ですが、感想でも暇な青年にメッセージとして送ってくれても構いません。皆さん、お願いします」
暇ねん「気を取り直して反省ですが、前回の剣聖と検帝は空●軌跡から、それと今回の修二の言葉はブリ●チからパクってきました」
次回『誰が敵でもオレは・・・・・テメェを・・・討つ!』です。