修学旅行の帰りって疲れて寝てるよね
六日目の朝。またも早くに目が覚めてしまった。
むくっとベッドから体を持ち上げ、横に顔を向けると満足そな顔して寝ているカイウスとレグ。
「ふっ・・・・・」
何が可笑しかったのか自分でも分からないが何故か小さく笑ってしまった。
ベッドから降りると冷蔵庫からペットボトルを取り出し、昨日と同じようにベランダにでる。
「帰るのか・・・・・めんどくさ」
ペットボトルの蓋を外して口に持っていく。
中身は当然ファ●タでグレープ味!
・・・・・朝から炭酸ってどーよ?
気分が重くなったのは一瞬。すぐに気を取り直しオレは最後のこのベランダから見る外の景色を目に焼き付ける勢いで見る。
「もうこねーかもしれないしな」
「そうだぜ、よーく目に焼き付けとけよ、婿候補ぉ」
「おっ!?珍しく早起きだなレグ、もしかして今日の飛行機、途中で落ちるかもな」
髪を掻きながらレグは壁に寄りかかって手を振っている。
どーも、早くに目が覚めたらしい。のは良いのだが・・・・・・
「てーか、なんで婿候補の事しってんだよ?」
「あれだけセレナ先輩と仲がよければ予想はつくさ。それにカイウスにも聞いたしな」
片目で見てくるその顔がしっくりくるな~、とまぁ思いながらオレは苦笑して、一口分のファ●タを喉に通す。
「そうか・・・・悪いな、今まで黙っていて」
「別に。秘密なんて誰にでもあるだろ」
「確かにな」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「ハハハッ」」
可笑しくて笑ってしまったのだが、どうやらレグのほうも可笑しいと思ったのだろう。
オレたちの声は合わさった。その声は寝ていたカイウスを起こしてしまったようだ。
「朝から仲良く笑って・・・・・・う~ん、どうかしたの?」
眠たそうに目を擦るカイウスに悪いことをしたなぁ、と思い軽く謝るオレ。
そんなこんなで朝飯を食べ帰る準備を終わらせてオレたちはロビーに向う。
「なんだぁ?」
ロビーに着くといち早くレグがロビーの雰囲気がいつもと違っているの気付き、あたりをキョロキョロと見回す。
「確かに・・・・帰りだから名残惜しいんじゃ?」
「その割には皆、一箇所に集まって話し合ってるよ。それもちょっと危機感を感じるほどに」
「あっ、やっぱり?オレもなーんかあの場には危ない感じが漂ってるよーな気が・・・・・・・」
オレたちの言うあの場とはロビーの端に人だかり・・・・といってもうちの学生。しかもその大半が三年生である。
エレベーターの前では何も分からないので近づいてみると、人ごみから途切れ途切れに話し声が聞こえてくる。どうやら誰かに話が集中しているらしい。
「あはは、予想ができるな」
「人ごみの中心が誰かって奴か?」
「あぁ、どうせレグとカイウスも分かってるんだろ?」
「まぁ・・・・・」
「予想は簡単につくね。僕らの学園でこれほどの注目を受ける人物と言えば・・・・・・・」
「セレナ・・・・・・だよなぁ、何やってんだか」
少し呆れると言うかなんと言うか・・・・・・ん?何か聞こえるな、なになに
「セレナさん!そ、そ、そ、そ、その指の“物”はど、ど、ど、ど、ど、ど、どうしたのですかぁ!?」
「そうですわ、セレナさん!教えてくれますか!」
聞くからに相当なことが起きているようだな。
質問する方なんて只ならぬ気配をだして・・・・・なぜだろ、オレ、関係ないのに背筋が寒くなるような感じが・・・・・・
見えない恐怖(?)に警戒していると肩に手が置かれる。
「おはよう八雲。こうして話すのは久しぶりだな」
「サバナ先輩、おはようございます。しかし、この騒ぎは何ですか?」
誰かと思えばサバナである。
そーいや、サバナ先輩が出てくるのって久しぶりのような・・・・・・・
「あぁ、誰かさんがセレナ姫にとんでもない物をあげた為にこうなってしまったんだが・・・・・それは八雲の所為だとボクは思うね」
「オレ? 特にコレって物をあげたつもりは・・・・・・・・っま、まさか・・・・・・」
次第に自分でも分かるほどに顔色が悪くなっていく。
それを見たサバナはやっぱり、と小さくこぼし哀れみに似た表情を向けてくる。
「ちょっ、ちょっとスイマセン!!」
慌てて人ごみを掻き分け、中心に向かう。
中心に入ると質問攻めのセレナが視界に入り、向こうもオレに気付きオレの腕を引っ張る。
「うぉっ」
「遅かったわね八雲」
「あはは・・・・・・」
笑うしかない状況。今の状況を分かりやすく、尚且つ簡単に説明しよう。
数十人の人ごみの中心にオレとセレナはいる。しかも、セレナはオレの腕を掴んだまま。
周りの目から見れば“誰だよ?”や“何で一年がそんなに仲が良いんだよ!”と訴えるような鋭く痛い視線がオレに突き刺さる。
そして、多分、コレが一番の問題だろう。
セレナの左薬指にはまっている少し控えめなデザインの指輪。これはオレが昨日買った“ある物”である。見間違えるわけが無い!と言える状況じゃない。
以上、分かり易く且つ簡単な説明でした。
「セ、セレナさん・・・・その一年生は一体?」
一人の男子生徒がオレを指差しながら聞きたそうで聞きたくなさそうな声でセレナに聞いてくる。
周りの連中もじーっと視線を向けながらも、しっかりと耳にも意識を向ける。
そんな状況でオレは不安しか感じられない。
「八雲の事?そーね・・・・・・分かり易く言えばこの指輪を私に贈ってくれた人よ」
「・・・・・・・」
その場が凍りつく音が聞こえた・・・・気がした。
しかもなんですか!そのちょっと頬を赤くしながら恥ずかしいって言う様な表情は!?
気のせいかもしれないが指輪をやけに強調して言っていたような気もする。
それよりどうして左薬指にはめてるわけ!?確かにいつかはそうなったら・・・・・コホン、コホン!!!
最初はセレナを、次に恐る恐る周りの人たちを右から左に視線を滑らしていく。
「───────今のうちに逃げ・・・・・・」
「・・・・・がさねぇよ」
「ははは」
乾いた笑い声しか口から出てこなかった。
周りの連中(特に男子生徒)からの殺気のこもった声と鬼の形相がオレを取り囲む。
ここは鬼ヶ島かーーーーーーーーー!!??
「追えーーーーーーーーー!!!!」
「ふっざけるなーーーーーーーーーーー!!!」
鬼の様な生徒から逃げるようにオレは到着したバスにいち早く乗り込んだ。
しかし、それは他学年から逃げられただけでうちのクラスにいる鬼たちに食われかけた、もとい、質問攻め、軽い嫌がらせがセイクリッドに着くまで続いた。
今回の反省
暇ねん「修学旅行終わったーーーー」
八雲「あ、ああ。そうだな」
暇ねん「・・・・・・お疲れだな」
八雲「お、おう?そんなこと・・・・・・あるな」
暇ねん「あはは、だが安心しろ!次回からはもっと凄い展開になるぜ」
八雲「凄い展開ぃ?」
暇ねん「おうよ!終幕に突入だ」
八雲「しゅう・・・・まく・・・・・!」
暇ねん「ああ、頑張れよ主人公」
次回『最終章 動き出す計画』です。