最高のクリスマスだな、こりゃ
パーティーが始まって早くも一時間経とうとしているが屋内広場の盛り上がりは下がるどころかどんどん上がっていく。
ついさっきまでは卒業していく三年生(特にセレナ先輩)のためにバンドが演奏していたところだ。
ちなみに我が学園のバンドはメジャーデビューしている為、盛り上がりまくった。
「しっかし今思ったんだが、大抵の三年生は大学・専門部に上がるだろ。何でこんな盛り上がるんだ?」
「ヤクモ、それは言っちゃダメだって。作者も書いていて思い出したんだから」
「そうだぜ。知らぬが仏ってな」
いや、『知らぬが仏』って使い方違うだろ!?
*知らぬが仏*
知れば腹も立つが、知らないから仏のように平静でいられる。
また、本人だけが知らないで平然としているのを、あざけっていう語。
以上。Yahoo!辞書から抜き出し
「それはそれとして、だ」
レグはジュースが少し残っているグラスを近くのテーブルに置くと二階の窓に視線を向け、また何かを思い出している表情をする。
「わりぃ、ちょっと外に出てるわ」
「え? あ、あぁ」
「体が冷えたら戻ってきなよ」
「おう・・・・・・」
そう言ってレグは階段をに向かって外に出て行った。
その後姿をしばらく見ていたが、後ろから柔らかい物(?)が背中にプニュっと当たった。
「んなぁ!?」
驚いて振り返って見るとグラス片手にユウナがそこにいた。
頬が少し・・・いや、かなり赤くなっている。おたふくですか!?と言えるぐらいに。
酒は大学・専門部がいるから置いてあるが高・中・小は飲めない筈なんだが・・・・・
先生方がバーテンダーの格好して二十歳以上の生徒に出しているのだ。
いいのか?学園内だぞ、教師!
「ふふ~ん、ヤクモはっけ~ん!!」
「ユウナ先輩!はっけ~ん、とか言いながら胸を当てないでください!」
「あら~お姉さんの胸をしっかり感じたのね~・・・・・・えっち」
「な────っ!」
自分の顔が真っ赤になっている事が良く分かる。
恥ずかしくなって視線をユウナから視線を外し、あたりに視線を彷徨わせる。
はっと気付き、後ろにいるカイウスに助けを求めようとしたが、いたはずのカイウスはいなかった。
あいつ・・・・オレを見捨てやがった!
瞬間、カイウスを呪った。が、オレはすぐに一つの疑問が浮かんできた。
「・・・・・・オレ、ヤクモって事教えましたっけ?」
そうである。
前の文化祭では≪ルーク=フォン=ファブレ≫と名乗っていたのだが。
「そんなの知ってるわよ~。だって、大会で名を上げた人物くらい皆知っているもの~」
「大会・・・・・・あっ!ナイト部の大会か」
たしかにあれ以降からファンができたからな・・・・・・ん?まてよ、ってことはセレナも分かってたんじゃ・・・・・・
次から次に頭の中に色々な疑問が浮かんでくるが、そんなオレをユウナの声が現実に引き戻した。
「難しい顔してる~。私が楽にさせてあげるーーー」
「い、いいですよ!しかもやっぱり酔っ払ってるし!」
予想はしていたが、やっぱりそうだった。
微妙にだが、酒のにおいが鼻をくすぐる。
「どうやって酒飲んだんですか?」
「んー?先輩に貰ったの。へへ」
「そーですか・・・・・・はい!水でも飲んで休憩していてください」
なぜか近くのテーブルに置いてあったグラスには水が注がれていた。
深く考えず、オレはそれをユウナに無理やりと言って良いほどの手渡しをした。
「むっ!まぁいいや。私も眠くなってきたし」
一人呟き、ユウナは水の入ったグラスを持ってふらふらとどっかに行ってしまった。
「やれやれ・・・・・・大丈夫だよなぁ」
突如不安を感じユウナの方を見たが姿が見えなくなっていた。
無理やり大丈夫だろう、と思い込み視線を彷徨わせた。
そのとき、二階エリアから外を眺めている女性の薄紫色の髪が見えた。
「・・・・・・」
少し考えてからオレは二階に向かった。
「・・・・・・」
来たは良いがどうする?向こうはオレが八雲だってこと分かってるだろうし・・・・・・
物陰に隠れてこれからどうするかを考えるために目を瞑ると視界が暗くなった。
いや、目を閉じれば暗くなるのは当たり前だが、明かりは分かるだろ?でも、それが無くなった
変だなぁ、と思い目を開けるとオレの思考は一瞬で途切れた。
「何してるの、ルーク?」
「え、いや・・・・えーっと・・・・・あは、あはは」
目の前にセレナがいて、オレに話しかけていた。
急なことにオレはまともな返事ができず、言葉にならない声を出す。
そんな反応を見てセレナは笑った。
「もう一回聞くわよ。何してたの、ルーク?」
セレナの言葉がオレに突き刺さる。≪ルーク≫そんな偽名で呼ばれるからか?
「え・・・・あー、ちょっと外の景色が見たくて」
嘘をついた。
何でだろう?今までなら簡単にセレナが見えたから、って言えたのに
「そうなんだ。てっきり私は、逢いに来てくれたのかと思ったんだけどなぁ」
残念そうに言う。わざとらしくではなく本心から思っていたんだろう。
『条件ってのは・・・・・・姫さんとは絶対に合わない事。それが条件だ』
あの時と同じく、親父の言葉が頭の中で反響する。
「? どうかしたの、ルーク?」
下を向いて黙っているオレを心配してかセレナは両手をオレの頬に当てる。
そして、無理やり顔を上げさせる。
視線がぶつかる。だが、オレはすぐに視線をセレナから外す。
「私の目が見れないの?どうして?」
「どうしてって・・・・・そりゃ、恥ずかしいでしょ」
やっと口から声が出た。
「うそ。何か隠してるでしょルーク・・・・・・いえ、高坂 八雲」
優しい声でオレの名を呼ぶ。
無意識にオレは反応する。その優しい声に。強い意志を持つ瞳に。
「セ・・・レナ」
「なに?」
「ごめん」
「────え?」
いきなり謝られた本人はビックリするだろう。その証拠にセレナはポカンとしている。
構わずオレは頬に当てられている両手を外し、窓に近づいた。
「いや、謝る必要は無いんだけど・・・・・・いや、あったか。まぁ、いいや。今のはあの時、嘘をついた事。それと・・・・・・今ついた嘘に対して」
「うそ?一つは私が文化祭の時に聞いた事でしょ?それなら良いけど、今ついた嘘って?」
「あー」
外の白いグラウンドを見下ろしながら言葉に詰まる。
セレナが見えたから、なんて今更恥ずかしくて言えないからな
「ふふ、いいわ。言いにくいんでしょ?」
「まぁ、言い難いって言うより恥ずかしいんだが・・・・・・」
「? なんか言った?」
どうやら聞こえていなかったらしい。
だが、オレは心の重荷が無くなったようで少し・・・・いや、結構楽になった。
それからオレたちは久しぶりに楽しい話をした。
親父に言われた条件もセレナに話した。だが、その話を聞いてセレナは腑に落ちない顔をした。
「なんで、私と八雲が会っちゃいけなかったのかしら?」
「なんでって、婿候補だってバレたら大変だし、他の候補者に対しても不公平だろ?」
「それが変だっていうの! だって、八雲以外の家にもホームステイしたし、レーベルは国は違うけどたまに会いに来るし、サバナだって学園にいるじゃない。それなのに何で八雲だけ会っちゃいけないの?」
「・・・・・・・・・・」
何も言い返せなかった。と言うより、どれも筋が通っていて否定する部分が無い。
サバナもレーベルも普通にセレナと話している。サバナに関しては学園にいる。
それなのにオレだけ会っちゃいけないってどーゆうことだよ!?
「てーことは、オレは今までどおりセレナに会って言いわけ?」
「えぇ!」
嬉しそうに肯定する。
その返事にオレもつい、笑みを浮かべてしまう。それを見てセレナが何かを思いついたような子供の笑みを浮かべる。
「・・・・・・な、なに?」
「そんなに私と会えることが嬉しい?」
「───っ!」
どうなの?と顔を近づけ聞いてくるセレナから視線を外して口を開く。
「そりゃ・・・・・まぁ、嬉しいさ。 その為にセイクリッドに来たんだからな」
「────っ」
あれ?返事が返って来ない。もしかして外した?
恐る恐る視線を向けると嬉しいのか恥ずかしいのか分からない表情をしているセレナが視界に入る。
こうして、三年生(セレナ主役)のクリスマスパーティーは無事終わり、残りの冬休みの日常に戻る事となった。
今回の反省
暇ねん「すいません!高校最後のテストが近くて(来週)更新が遅れました」
八雲「つっても勉強して無いだろ?」
暇ねん「んーまぁ、いつもどおり?」
八雲「しってるよ。こんなんで4月までに終わるのか?」
暇ねん「ムリかもな~」
八雲「男に二言はないんだろ?」
暇ねん「ふっ、オレは過去を振り返らない男」
八雲「流石はミスターうそつき」
暇ねん「はっは」
八雲「褒めてねぇよ!」
次回『はやっ! 新年開始 え?修学旅行?しかも全学年で? いや、それはムリだろ』