準備は終わり!明日は頑張ろう
レインと出会ってから数日経ち、ついに明日はセイクリッド祭が開催される。
「いいか?当日は俺たち2年生が午前の警護。1年は午後の警護だ!」
オレたちは今、屋内広場で明日の打ち合わせをしている。
「部長。質問なんですが、もし当日になんかあったら自分で対処していいんですか?」
「できる範囲ならな。相当やっかいな出来事だと俺たちや先生方を呼べ!」
部長の答えに満足して首を振る。
「それじゃ、明日は仕事と遊びの減り張りをしっかりしろ」
「「「はい!!!」」」
話が終わり、カイウスとレグと一緒に教室に戻っていると毎度おなじみの騒がしい足音が背後から聞こえてきた。
「またかよ・・・・・・・・」
ため息を付き、大きく息をし、ダッシュしようとした時だった。
「レッグ=ウォーリー!!」
「レグ?」
呼ばれた名前は自分でもカイウスでもなく、二人の隣にいるレグだった。
「今回はオレかよ・・・・・・」
苦笑いをしたレグは先に行くぜ、と残し、目の前から消えた。
「大変だね。レグも」
「だな」
二人してレグを哀れむと足を再び動かし始める。
「そー言えば・・・・・・」
「どうした?」
隣で何かを思い出したように呟く言葉に反応する。
「どうしてヤクモはセイクリッドに来たの?」
「・・・・・・・いきなりだな」
「ちょっと気になってたんで。だって、別に日本の高校では取れない資格があるわけじゃないし・・・・・・」
「なんでって言われても・・・・・・」
セレナの手紙を読んでセイクリッドに来た!とは言えないしな・・・・・・・
「理由が無いわけ無いでしょ?遥々海を越えてきたんだから」
「あーーーー」
返答に詰まる。考えると考えるだけ自分でも思ってしまう。
あん時は、よく考えなかったけど・・・・・・今になって考えてみると何でだろうな。セレナとの約束を守るためだったら高校を卒業してからでも遅くは・・・・・ない。いや、遅いか
「もしかして・・・・何となく、とか言わないよね?」
カイウスの顔が徐々に変化していく。
「理由はあるにはあるんだが・・・・・・今は言えないんだ」
「今は?」
「そう。今は言えない。もう少ししたら話すから、その時まで待ってくれ」
「うーん・・・・ヤクモがそう言うなら」
納得していない顔だが、友達を信じてカイウスはここで話を切ったんだろう。
「もどったぞ」
「おまたせ」
「あら?二人とも速かったわね」
前と同じく委員長が最後の指示を出している中、こちらに顔を向けてきた。
「まーな」
「レグは・・・・・・追いかけられているのね」
「さすが委員長」
思わず感心してしまった。
「で?僕たちも何か手伝おうか?」
手近にあった紙を取りながらカイウスが委員長に聞いてみると、委員長は考え込む素振りを見せた。
「ん-----」
「もしかして、やること無い系?」
「あっ!ヤクモ君。あなたは生徒会長に呼ばれているわよ」
「マリナ先輩が?」
意外な事に呆気に取られた。
なんだろう・・・・・・
「んじゃ、行って来るわ。生徒会室?」
「えぇ」
場所を確認して教室から出て行こうとしたら、階段を勢いよく上ってくるレグが見えた。
「どっか・・・いくのか?」
「ちょっとな」
短く返して階段を上がる。
生徒会室のドアをノックすると返事が聞こえ中に入ってくるよう促される。
「失礼します・・・・・・えーっと、何のようでオレは呼ばれたんですか?」
中に入ると前と同じように、椅子に座り机に肘を突いて手を組んでいる。
「ヤクモ、あなたに明日のセレナ先輩の警護を頼みたいんだけど」
「っ!?」
これまた予想外。だが、これは・・・・・困る!!
「で?どう?」
「なんでオレなんですか?部長や副部長は?」
「彼らは警護をまとめるので手一杯になるでしょうからね」
たしかに、あの二人はオレたち部員をまとめるので大変そうだな
「じゃ、じゃぁレグ・・・・・レッグ=ウォーリーは?」
あの二人の他に力があるレグを出してみた。が、マリナの返事はNOだった。
「彼は確かに力があるでしょうが・・・無礼があったら困るでしょう?」
「・・・・・・・」
あいつの性格ならありそうな気が・・・・・・
「嫌なら嫌でも良いわよ」
「嫌とは言いませんが・・・・何故セレナ先輩の警護が必要なんですか?たかが文化祭で・・・・・・」
「文化祭と言っても一般の人も入場するからね。何か合ってからじゃ遅いのよ」
気圧されそう。これが、高校部の生徒会長の気迫というか仕事に対する考えか・・・・・・しかたない
「────は~、わかりました。そのお話をお請けいたします」
マリナの熱心なお願いに了承する。
「よかった!さすがはヤクモだな」
オレから『請ける』と聞くと安心したのか笑顔を浮かべるマリナ。
「うっ!?」
かわいい・・・・・・先輩の笑顔は反則だろ!っと、大事な事を忘れるとこだった!!
「マリナ先輩。そのお話はお請けますが、こちらにも少々問題があるのでセレナ先輩には誰が警護するか言わないでください。それと当日は少々変装させてもらいます!」
「ん、分かったわ。こちらの話を聞いてくれたのだからそれぐらいなら良いわ」
「どうもです」
「それじゃ、この話は私からジン君に言っておくわ」
「ありがとうございます。それじゃ、オレはこれで」
「そうね。ありがとう」
お礼に対して頭を下げ、部屋から出ると教室に向かいカイウスとレグにだけは、さっきの会話を伝えた。
あの二人は相当驚いていたな。でも・・・・・カイウスはそんな驚いてるような感じじゃなかったような・・・・・・・
こうして、前日の準備が終わった。
今回の反省
暇ねん「お~い、仕事請けちゃって?」
八雲「だ、だって、マリナ先輩があんな顔するし、威圧みたいなものが・・・・・・」
暇ねん「おいおい。か弱き(?)女性に対して威圧とか言うなよ」
八雲「と、とにかく!変装すれば大丈夫だ!」
暇ねん「失敗しない事を祈るよ」
八雲「どーも」
暇ねん「それにしてもお前・・・・ここに来た理由を考えてなかったって・・・・・・」
八雲「あっ、それは・・・よく考えれば何でこんな急いだんだろうって思ちゃって」
暇ねん「(それは・・・お前が───だからだろ)」
八雲「ん?なにかいったか?」
暇ねん「ふっ、なんでもないさ。その答えが出たときがゴールかもな」
八雲「??」
暇ねん「次回は、ちょっと変わって八雲ではなくセレナのお話です」
次回『転校生は・・・・・・だれ?』です。