久しぶりだな(後編)
「ん?」
テンポの良い足音が近づいてくるのが分かり、オレたちは音のする方に視線を向けてみた。
「久しぶりだな・・・・・・」
「────ッ!?」
声にならない驚きがつい、表情に出てしまった。
「そーですね。レーベルさん」
ムスッとした表情でレグはレーベルに返した。
「で、どーしてここに?」
「なに、大学・専門部の大会があるってことで、ゲストとして呼ばれたんだよ」
「あっそ」
レーベルの言い方はレグの機嫌をそこねる一方で、オレは未だに驚きつつも、どう行動するべきかを考えている。
「どうかしたのヤクモ?」
「あ、いや、なんでもないさ・・・・・・」
言葉では簡単に言えるが、カイウスは表情を読み取り心配そうにオレに瞳を向ける。
「ヤクモ・・・・・・と言ったか?君の噂は聞いたよ。初めて一ヶ月の君がチームの優勝を決めたってね」
「ッ! どうも・・・・・・」
そっけなく返すとクスッと笑うレーベル。それを聞いてつい視線を向けてしまった。
「その力を見てみたいな。どうだい?一戦、やってみないか?」
「・・・・・・・・」
このやろう・・・・・オレに合わせて知らない振りかましてやがる。まー好都合だがな
「逃げるのかい?あのときのように負けるのが怖くて?」
「あの時?負ける?」
レグの困惑した声が聞こえてくる。
人を見下したような視線。それを実行する瞳。その言葉。
「上等だ!レグ、木刀とって」
「マジでやるのか!?」
「・・・・・・」
返事はしない。レグは驚きつつも、ため息を付き木刀を投げ渡してくれた。
「勝負の方法は?」
「あの時と同じ。貴様が私に一太刀でも当てられれば貴様の勝ちだ」
「上等!」
先手必勝!!
レーベルが木刀を構えるとすぐさま木刀を振りに行った。
「見え透いた手だな」
「なら・・・・・・」
360度回転して遠心力を使い、逆側から木刀を放つ。横から迫り来る木刀を横目で見ると、縦に木刀を構え受け止める。
「貴様はあの時と何一つ変わらないな」
「アンタもだろ?」
「ふんっ!」
「うっ!?」
強引に腕を弾かれ頭の上に右腕が移動した。
「な・・・ろっ!」
上に持ってかれた右腕を行ける所まで頭の後ろに回した。その時さりげなく左腕も背中の後ろに。その為、レーベルからは木刀の半分が背中で隠れて見えなくなった。
「また力押しか!」
「五月雨」
頭の後ろから思いっきり振り下ろす。その行動に反応してレーベルも木刀を前に出すが、それはオレが振り下ろした右腕が作った風を斬るだけだった。
「木刀が・・・・・無い!?」
「・・・・・・」
つい、攻撃が決まったと思って口元を弧月にしてしまった。
後ろにいるカイウスたちも目を疑った。
背中の後ろから振り抜く左手には木刀を握っている。
「────ッ!」
「オレの勝ちだな?」
レーベルの右横腹から木刀を引く。
「ふっ、そうだな。今回は貴様の勝ちだ」
「やけにあっさりと受け入れるんだな」
「私は騎士だ。潔く受け入れるさ。次は・・・・・・本番で会おう」
武士が鞘に刀を入れるように布袋に木刀を仕舞う。
「楽しみにしているぞ」
一言言い残しレーベルは来た道を戻っていく。聞こえる足音は来た時とは違って足早だった。
「やっ・・・・・・たな!」
「うわっ!?」
レーベルがいなくなった瞬間に後ろから腕を回された。レグの表情は今まで見たことの無い、とびっきりの笑顔だった。
そーとー嫌いだったんだな。と、内心思いながら苦笑する。
「それにしても最後のどうやったの?」
横に来てたカイウスが顔を覗き込むように聞いていた。
「ん?後ろにいたんだから見てただろ?こーやって背中の後ろで左手に渡すんだよ」
オレが再現していると、二人は呆れた表情をした。
「それを本番にやるとは・・・・・・」
「なんだよ?」
「別に~~~」
「オイ!何だ今の言葉は!!──────あっ、まて!!」
二人は逃げるように前を走っていくので、慌ててその後を追っかける羽目になった。
今回の反省
八雲「かったーーーー」
暇ねん「よかったよかった」
八雲「なにその投げやり感」
暇ねん「どうせなら試合で勝てよ」
八雲「つぎはそうなるさ」
暇ねん「その自信はどこから・・・・・」
八雲「オレから」
暇ねん「ウザっ!」
次回『文化祭まであと一週間です』です。