第二部 来たぜセイクリッド
次の日、本来ならば新学期を迎える日なのだがオレは今、空港にいる。
「ふぁー」
ベンチで大きな口を開けあくびをして搭乗時間を待っている。
さっきまで、母さんがいたが、パスポートとチケットを持つものが通れるゲートをくぐったので、今は自分ひとりだ。
『頑張ってきなさい』
これが、母さんの最後の言葉だ。
「ん?今、遺言みたいな感じになってしまったな」
そーいや、パスポートっていつ作ったっけ?オレ記憶に無いんだが・・・・・・・
自分のパスポートの写真を見ながら考えているとアナウンスが聞こえてきた。
『セイクリッド王国行きの便のご搭乗の時間となりました』
「よし、いくか」
ベンチから腰を上げると、鞄を持ち搭乗口へと向かった。スーツケースは先に係員に渡してあるぞ。
「さすがに新学期などが始まる日だから子供はいないな」
搭乗するために並んでいると、オレは周りに視線を向けた。
「B─33は・・・・・・・っと、ここだな」
チケットの座標席を確認して窓側の席だった。オレは鞄を足元に置き腰を下ろした。
「・・・・・・・」
幸い隣は空席であった。
「ん、ラッキーだな」
誰も来ないと分かり気が楽になった。
しばらくすると飛行機が動き始めた。
徐々に速度を上げて行き、地面から車輪が離れた。
「うおっ」
初めての飛行機なため、飛ぶ瞬間のあの重力から離れる感覚に少しだけ声を出してしまった。
外の景色は晴れているため良く見える。高層ビルの群れ。少しばかりすると今度は、視界いっぱいの青い海。オレの瞳は初めての空の旅が見せる景色に夢中だった。
「たしか、セイクリッドまでは五時間ていどだっけ?」
またも大きなあくびをしながら腕時計をみる。
「すこし寝るか」
昨日は始めての海外ってこともあって、あまり寝れなかったのである。
「・・・・・さま・・・・・・・お客・・・・・・・・・お客様」
「ふぇ?」
スチュワーデスの人がオレの肩を揺らしてオレを起こした。
「機内食です。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
前に出されたのはコンビニ弁当のようなトレイにご飯などがよそわれていた。
「・・・・・・」
黙々と食べていると、ふと、隣から視線を感じた。
「?」
通路を挟んだ隣の席に視線を向けると、オレと同い年くらいの男性の外国人がいた。
「なんだぁ?」
男はオレが視線を向けると微笑み食事に戻った。
搭乗して五時間後、飛行機は無事セイクリッドの空港に到着した。
「あっちーー」
ゲートを出ると周りは外国人だらけ。とーぜんのことだが。
「・・・・・・・」
それとは別にオレは言葉を失った。なぜかと言うと、セレナ程ではなくとも皆、美形である。
「あはは」
笑うしかない。ってか、親父が迎えに来ているはずだが・・・・・・
「よう、我が息子よ」
「親父!」
五年ぶりの再会だった。紳士的な服装でいる親父。なんか・・・・・・
「にあわねぇ」
「うっさい。それより」
「あん?」
「ようこそ。セイクリッド王国へ」
親父に言われて改めて認識した。ここは日本ではなくセイクリッドだってことに。
空港から出ると親父の車で町までつれてきてもらった。
「ここが、セイクリッドの中心ともいえるところだな」
「へー」
テレビで見ていたのとは別物に感じる。町の雰囲気は日本とは違って独特な感じを漂わせている。
町の中にも木々が多く、建物の造りは近未来を漂わせている。何より印象的なのは・・・・・・
「お城が、こんなど真ん中にあって良いのかよ?」
そう、町の真ん中には王様と王妃様、それとセレナが住んでいるお城が建っている。
「いいんだよ。だからこそ────」
「あっ、シュウジだー!」
「おっ、チビすけ元気か?」
歩きながら城の話をしていると幼稚園ぐらいの男の子が親父に近寄ってきた。
「うん!」
「それは良いことだ。ママを困らせるなよ」
「うん。またね~」
手を振りながら少し離れたところにいる母親の元へ駆けていった。
「なに?今の光景」
「さっきの続きだ。こんなところに城があるから城に住むものと町の住人と仲が良いんだ」
「仲が良い?」
「そう。俺たちは王様の護衛部隊だがいつもいるわけじゃない。交代制で守っている。自由時間のときは仕事仲間や今みたいに町のちびっ子たちと遊んでいるんだ。セレナ姫や王妃様もよく遊んでいるぞ」
「セレナが!?」
王族がそんなことしてるなんて想像してなかった。
「さすがに王様は、そうそう人前に出られないがな。忙しくて」
「へー」
「ここが、お前の家だ」
「家?マンションとかアパートとかの一室じゃなくて?」
足を止めて家の前でオレは声を大きくして言った。
「あぁ、前はオレが住んでいたんだが・・・・・・いまじゃ、城で過ごしているんだ」
「なるほど」
「悪いが、これから仕事なんで夜にもう一回くるから、今日は家でおとなしくしていろ」
「わかった。そーいや、ここの人たちって日本語喋れるんだな」
城に戻ろうとする親父に聞いてみると、親父は顔だけ向けてきた。
「まー、一応小・中・高で習っているからな。だが、喋れない方が多いから、早く英語を話せるようになるんだな」
「へーい」
「んじゃな」
「おう」
そういって親父は城に向かって足を進めた。
オレはスーツケースを引きながら家の中に入った。
こうして、オレのセイクリッドでの生活が始まった。
今回の反省
暇ねん「始まりました。セイクリッド編」
八雲「これは、もしかして終わるパターン?」
暇ねん「いや、これから長くなる予定」
八雲「そっか。ってかオレ英語話せ無いじゃん!どうすんの?」
暇ねん「さぁー?」
八雲「おい!」
暇ねん「何とかなるって」
八雲「ならいいが・・・・・・」
暇ねん「ってことで・・・・・・」
暇ねん&八雲「これからもよろしく~」
次回『いや、オレ、こんなカッコいい友達持ったの初めてだわ』です。