お迎えに上がりましたセレナ姫(後編)
今回から少しシリアス+戦闘が入ります。
嫌だって方は申し訳ありませんが『戻る』を。
外から玄関を開けた男性は、日本人ではない事が一目で分かった。
服装もどこかセレナたち上流貴族が着ているスーツのようなもの。
「だれ?・・・・・・・でも、どこかで見たことがあるような・・・・・・」
「レーベル!・・・・・・なぜ、あなたがここに?」
後ろにいるセレナは驚いた表情で男性に向けて聞いている。
レーベル?まてよ、レーベルって・・・・・・ハッ!
「レーベル・ブレイブ!?」
「おや?私の名をご存知でしたか。これは自己紹介の手間が省けましたね」
セイクリッドの次に世界を動かしているブレイブ王国の王子で、セレナの婿候補の一人。
「セレナ姫、お向かいに上がりました」
「どーいうこと?」
「セレナ姫がこんな庶民の子供と一緒に住んでいると聞きましてね、帰りぐらいはゆっくり出来ますように、と」
「ありがとう、レーベル王子」
「セレナ姫、『レーベル』でいいですよ」
「・・・・・・」
黙って聞いていたが明らかにセレナの口調がいつもと違う。オレでもはっきりと分かる。
「ありがとうレーベル。ですが、今は高坂の家でお世話になっています。ですから───」
「今日でホームステイも終わりでしょう?それにこれは、私個人でやっていることです。余計なお世話でしたら下がりますが?」
ニッコリ笑いながらレーベルは道路に止まっている黒の高級車を手で示した。
いわゆる、私の車で空港までお送りしますよ?って遠まわしに言ってるわけだ。
「遠慮しておくわ。私は、八雲に空港まで送ってもらいますから」
「八雲ねぇ・・・・・・」
突然、レーベルの視線がこっちに向けられた。
当然のことながら相手は年上です。二十一歳・・・・・・だったかな?テレビでやってたな。
「こんな庶民のどこが良いのですか?セレナ姫?」
「・・・・・・・」
オレは黙って無視しているが、セレナは今の言葉に反応してしまった。
「少なくとも、地位や権力だけのあなたよりは断然良いわ!」
「おい、セレナ!」
「セレナ・・・・・・八雲、貴様はセレナ姫の事を呼び捨てで呼んでいるのか?」
「ん?あ、ああ。それが?」
「そうですか・・・・・・・」
オレから視線を外すとセレナに向け、またオレに視線を戻した。
「なるほど。信頼関係は出来ているようですね、セレナ姫。ですが・・・・・・」
「しょせんは庶民の出所、品が無い。ましてや何一つとりえが無いと見た。どうだ八雲?」
「とりえねぇ、確かにオレは何一つ持って無いな。だが、アンタより一つだけ勝っているものは持っているつもりだぜ」
今の台詞にレーベルは眉をピクッと動かした。
「ほう、興味深いな。教えてもらおうか。庶民の貴様が貴族の私に勝っているものとは?」
「ふっ、簡単な事だ。アンタ・・・・・・他人を見下しすぎだ。庶民がどうとか、品が無いだの、あんた何様だ!」
「ふ・・・・・ははっ・・・・・・・ははははははははっ」
「?」
突然、笑い出したレーベルに驚く。ってか、ちょっと怖いわ。
「はー・・・・・・・すまない。貴様がどんな事を言うかと思って期待してみれば、そんなふざけた事だったとはな」
一息つくとレーベルはクルッと後ろを向き、車の前で立っている使用人に何か合図をした。
「レーベル!!あなた、八雲に勝負しろというのですか!」
勝負?は?なに?
「大丈夫ですよセレナ姫。ただ・・・・・・この者に我らレーベル家の力を見せるだけです」
「なにを・・・・・・?」
すると車のトランクから、何かを取り出し使用人がオレとレーベルに何かを渡した。これは・・・・・・
「木刀?」
「なんだ?見たこと無いのか?」
「だから、ばかにしてんのか」
「貴様がいちいちバカな事を言うからだろ」
「テメェ・・・・・・」
木刀を握った手に力が入る。
「勝負だ。貴様の好きなように私を撃つがいい。だがもし、一太刀も当てられなければその時はお前の負けだ」
「上等だ・・・・・・いくぞっ!!」
「ダメっ!八雲!!あなたじゃ────」
セレナがオレを止める前にオレはでたらめに構えレーベルに突っ込む。
「貴様は私に言ったな、『アンタ何様だ』・・・・・・と」
「だったら?」
オレの振った木刀を意図も簡単に受け止めるとレーベルは顔を近づけてきた。
「教えてやるよ。極稀にだが私に歯向かう者がいる。それは、貴様のような理由でな」
「そーだろうな」
「だが、最後には私が勝つ。なぜか分かるか?」
「セレナが言ったとおり地位や権力で消したんじゃねぇの?・・・・・・・うっ!!」
レーベルの木刀がオレを後ろに後退させた。
「そんな面倒な事はしないさ。私にはな・・・・・・力があるんだよ。絶対的な力がな。剣術という絶対的力が!」
「あん?」
「知らないのか?我がブレイブ王国の特徴を?知らないのなら教えてやる。わが国では例え頭の悪い奴でも上流貴族、とまでは言わないがそれに近い存在になれる。それは剣術だ!」
遠心力を使って木刀を振りぬくが、木刀の軌道を変えられレーベルには当たらない。
「だから決まって上の者になりたがる奴は剣術を学ぶのさ。その為、わが国はどの国より剣術に長けている!私もその一人だ。最も、頭は良いほうだがな。故に、地位や権力に頼らなくてもこうやって落せる」
「く・・・・っそ!!」
「だから私は、他者を見下す。私が認めるものは私より上のものだけだ!」
一瞬の出来事だった。レーベルの持っていた木刀が消えたと思ったら自分の木刀が消えていた。
スイングが・・・・・・速い!!捉えられなかった。
いつの間にかオレは地面に背中をつけていた。目の前でレーベルがオレを見下ろしている。
「そうそう、訂正しよう。私が認めるものは私より上のものだと言ったが、剣術では誰も認めてないよ。なぜなら・・・・・・」
「私が世界最強の剣術使いだからさ」
こいつ・・・・・・
「安心しろ。今回は手加減をした。木刀を握った事の無い者に本気を出すほど大人気なくないさ」
「八雲!」
体がうごかねぇ・・・・・・やろぉ、なにが手加減だ!おもくそ体が言う事きかない。
隣でオレの名を呼んでいるセレナだが、オレの耳には何も入ってこない。それどころかオレの視界は段々と暗くなっていく。
「八雲!!レーベル・・・あなた!!」
「気を失っているだけですよ。セレナ姫、これでは一人で帰ることになります。せめて空港までは一緒に来てもらいますよ」
「ちょっとまち!」
「ん?あなたは?」
今まで黙っていた母さんがここに来て口を開いた。
「セレナ姫は今はまだ家が預かっているんでね。八雲の代わりに私がセレナ姫を送るわ。それとも、私にも勝負を挑む?」
「・・・・・・」
オレの手から木刀を奪い取るとレーベルに向けて木刀の先を向けた。
「やめておきますよ。あいにく、女性には手を出さない主義ですから。ではセレナ姫、お城で」
そう言って、レーベルは車に戻り、ここから去って行った。
「冴子さん・・・・・・・」
「ごめんねセレナちゃん」
「いいです。でも・・・・・・」
セレナはオレを見る。
「今は、部屋で寝かせておくわ」
母さんは倒れているオレを持ち上げると、自分の部屋まで運んでいった。
この後、母さんはセレナを空港まで送っていった。
オレが起きたのは次の日の昼ごろだった。
今回の反省
暇ねん「なんか、レーベルの理由が曖昧な気がする」
レーベル「良いじゃないですか、後で補足すれば」
暇ねん「レーベル!?」
レ-ベル「こんにちは」
暇ねん「なんでここに?」
レーベル「気を失っている八雲の代わりってことで」
暇ねん「さいですか。今回は八雲がいないと困るのだが・・・・・・」
レーベル「私だと役不足だと?」
暇ねん「おい、木刀を取り出すな」
レーベル「どうなんです?」
暇ねん「大丈夫です。どーせ、次の話で一旦、日本編終わりだし」
レーベル「どーゆうことですか?」
暇ねん「それは、秘密だ!」
レーベル「つまらないですね」
暇ねん「そうそう。前書きでも書いたが、これから本当に少しだけ今回みたいに戦闘が入るから」
レーベル「ふん、私に勝てるものはいないさ」
暇ねん「その驕りが足元を掬うぞ」
レーベル「させてみな」
暇ねん「頑張れ八雲!」
次回『決めた。オレ行くわ』です。




