表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

公開処刑で婚約破棄された私を拾った女嫌い公爵様、実は私を救うため何十周もループ済みの重すぎる溺愛勢でした。『白い結婚』のはずが「二度と死なせない」と過保護にされ、今さら震える元婚約者はもう手遅れです

作者: 夢見叶
掲載日:2025/12/06

指示書とプロットに基づき、ご要望の「甘々ハッピーエンド(A案)」にて執筆いたしました。


ご指定の構成案をベースに、読みやすさとテンポ、そして後半の感情の盛り上がりを重視しています。


***


**タイトル:公開処刑みたいに婚約破棄された私、問題あり公爵様に拾われて「白い結婚」したら、実は何度も私を喪ってきた旦那様の最終周回でした**



「リゼリア・ノクトラム。おまえとの婚約を、この場をもって破棄する」


王太子カルナード・ヴェルセインの声が響いた瞬間、夜会会場の空気が凍りついた。


グラスの触れ合う音も、楽団の奏でる旋律も、何もかもが途切れる。

集まった貴族たちの視線が、一斉に私へと突き刺さる。


それでも、私の頭の中には、ひどく冷静な言葉だけが浮かんでいた。


(ああ、来ましたね。婚約破棄イベント)


前世の記憶がある私にとって、これはある意味で予想通りの展開だった。

王太子の隣には、儚げな表情をした聖女エリュシアが寄り添っている。


「リゼリア、おまえは聖女エリュシアに対し、数々の陰湿な嫌がらせを行ったそうだな」


身に覚えのない罪状が読み上げられる。

教科書通りの断罪劇だ。

反論したところで、すでに根回しは済んでいるのだろう。


「……身に覚えがございません」


一応、形式的な反論だけは口にする。

けれど、カルナード殿下は勝ち誇ったように鼻を鳴らした。


「ふん、往生際が悪い。このような毒婦を王家に迎えるわけにはいかない。衛兵、こいつを地下牢へ……」


その時だった。


「待たれよ」


低く、けれどよく通る声が広間を制した。

ざわめきが波のように広がる。


人垣が割れ、一人の男性が歩み出てきた。

漆黒の髪に、凍てつくような氷蒼の瞳。

若くして広大な領地を治め、国一番の資産家でもあるヴァルシュ公爵だ。


彼は「女嫌い」で有名で、夜会に顔を出すことすら珍しいはずなのに。


「ヴァルシュ公爵……何の用だ?」


不機嫌そうに問う王太子に、公爵は表情一つ変えずに告げた。


「ならば、その不要になった婚約者を、私に譲っていただきたい」


「は?」


会場中が呆気にとられた。もちろん、私もだ。


ヴァルシュ公爵は王太子を一瞥もしないまま、淡々と続ける。


「ノクトラム家の名誉は私が保証する。王家にとって彼女が邪魔だと言うのなら、私が引き取りましょう。……もちろん、相応の“寄付”を王家に納めさせていただく」


それは提案ではなく、取引だった。

王太子の顔色が、侮蔑から強欲なものへと変わる。

厄介払いができて、しかも金が入るなら好都合だと判断したのだろう。


「……好きにしろ。そんな傷物を拾うとは、公爵も物好きだな」


許可が出た瞬間、ヴァルシュ公爵が私の前へと歩み寄ってきた。

間近で見ると、息を呑むほど整った顔立ちをしている。

けれど、その瞳には何の感情も映っていないように見えた。


「リゼリア嬢」


「は、はい」


「君の命が惜しい。私との婚姻は『白い結婚』にする。手も出さない」


あまりに事務的な囁きに、私は瞬きをした。

初対面の男性に、いきなり初夜拒否宣言をされたわけだ。


「……どうして、そこまで?」


思わず問い返すと、彼は一瞬だけ目を伏せた。


「もう、君を失いたくないからだ」


その声が、泣きたくなるほど切なく聞こえたのは、私の気のせいだったのだろうか。


          ◇


書類上の手続きは、驚くほどあっさりと終わった。

私はその日のうちに、公爵邸へと移り住むことになったのだ。


「君の部屋はこちらだ。私の部屋は、廊下の向こうにある」


案内されたのは、最高級の客間だった。

ふかふかの絨毯に、天蓋付きのベッド。

けれど、彼の部屋とは随分と距離が離されている。


「本当に、別々なのですね」


「約束しただろう。白い結婚だ」


彼は頑なだった。

使用人たちにも「奥様には指一本触れるな」「夜は絶対に部屋を近づけるな」と厳命しているらしい。


けれど、冷遇されているわけではなかった。

むしろ、その逆だ。


「寒くないか? 君は冷え性だから」


移動中、彼は当然のように自分のマントを私の肩にかけてくれた。


「この茶葉を用意させた。君の好みだろう?」


ティータイムに出てきたのは、私が一番好きな、けれどあまり流通していない銘柄の紅茶だった。


「……どうして、ご存じなのですか?」


「君に似合うと思っただけだ」


彼はいつもそう言って誤魔化す。


朝食の卵の焼き加減も、枕の高さの好みも、読みかけの本の趣味も。

ヴァルシュ公爵は、私のことを何もかも知っていた。

まるで、何年も連れ添った夫婦のように。


ある日、私が執務室で書類仕事を手伝っていた時のことだ。

紙の端で、指先を少し切ってしまった。


「っ、痛……」


「リゼリア!」


血が滲んだ指を見た瞬間、ヴァルシュ様が椅子を蹴倒す勢いで駆け寄ってきた。


「見せてくれ。……ああ、なんてことだ」


「あ、あの、ただの紙で切った傷です。唾をつけておけば治る程度で……」


「駄目だ。すぐに手当てを」


彼は真っ青な顔で、私の指をハンカチで包み込む。

その手は、小刻みに震えていた。


「血を見たくないんだ。……君が傷つくところなんて、もう二度と見たくない」


その必死な様子に、私は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

この人は、誰を見ているのだろう。

私を通して、誰か別の「大切な人」を重ねているのだろうか。


「白い結婚」は私のためだと言った。

けれど時々、彼はとても苦しそうに私を見るのだ。


          ◇


穏やかな日々は、1通の招待状によって破られた。

差出人は王太子カルナード。

『公爵夫妻の仲睦まじい姿を披露する舞踏会』という名目の、悪意ある呼び出しだ。


「……行きたくありません」


「断れば、君の実家に難癖をつけられる。私だけで行く」


「いいえ。妻として、私も参ります」


私が引かないとわかると、ヴァルシュ様は深く溜息をついた。

その夜、私は偶然、侍女たちの噂話を耳にしてしまった。


「やっぱり、旦那様は奥様を愛していらっしゃらないのかしら」

「違うわよ。公爵家の呪いのせいだって」

「ああ……愛し合った伴侶の命を奪うっていう……」


背筋が冷たくなった。

呪い。歴代当主が短命か、あるいは独身を貫いている理由。


その夜、私は彼の部屋の扉越しに問いかけた。


「ヴァルシュ様。……白い結婚は、私のためですか? それとも、公爵様のためですか?」


長い沈黙の後、扉の向こうから声が届く。


「……君の命を守るためだ」


それ以上の言葉はなかった。


          ◇


舞踏会の会場は、予想通りのアウェーだった。

王太子と聖女エリュシアが、私たちを見つけて嘲笑を浮かべる。


「やあ、公爵。噂によると、まだ夜の務めを果たしていないそうじゃないか。枯れているのか?」


周囲の貴族たちがクスクスと笑う。

ヴァルシュ様は私の腰に手を回すことさえせず、ただ無言で立っていた。

それが「愛がない証拠」だと、周囲は思ったのだろう。


「おいリゼリア。本当は寂しいんだろう? 元婚約者のよしみで、私が慰めてやろうか」


王太子が私の腕を掴み、強引に引き寄せようとした。

下卑た笑みを浮かべた顔が近づいてくる。


「やめ……っ!」


その時だった。

ガシッ、と王太子の腕が掴まれた。


「リゼリアに触れるな」


ヴァルシュ様だった。

普段の冷静さからは考えられないほどの殺気。

彼は王太子を突き飛ばすと、私を強く抱き寄せた。


「きゃっ……」


勢い余って、私たちの体が密着する。

額と額が触れ合うほどの距離。


ドクンッ。


心臓を鷲掴みにされたような、激痛が走った。

喉が焼けるように熱い。

視界がぐらりと揺らぐ。


「ぁ……、ぐ……っ」


「……っ、しまった!」


ヴァルシュ様が私の体を支えながら、血の気を失った顔で叫んだ。


「またここか……。あと1日で、呪いの期限が切れるはずだったのに……っ!」


「……え?」


薄れゆく意識の中で、彼の悲痛な声が聞こえた。


「どうして君は、毎回、毎回ここで僕を庇うんだ。リゼリア……ッ!」


          ◇


目が覚めると、私は人気のない休憩室のソファに寝かされていた。

痛みは引いている。

傍らには、術式を使ったのか、ひどく消耗した様子のヴァルシュ様が座り込んでいた。


「……ヴァルシュ様」


「気がついたか。……すまない、一時的に痛みを散らしただけだ」


彼は今にも泣き出しそうな顔で、私の手を握りしめていた。

もう、隠し事はできないと悟ったのだろう。

彼はぽつりぽつりと話し始めた。


「私は、何度も時間を繰り返している」


「時間、を……?」


「君と結婚し、そして君が死ぬ運命を変えるために」


彼は語った。

1度目の人生でも、2度目も、3度目も。

私たちは恋に落ち、結婚した。

けれど、初夜を迎えて愛を確かめ合うたびに、呪いが発動して私が死んでしまったこと。


国が滅ぶルートもあった。

私が処刑されるルートもあった。

それでも彼は、そのたびに時間を巻き戻し、私を選び続けてくれたのだという。


「今回は、完璧だと思った。期限が来る明日まで、君に指一本触れずにいれば、呪いは解けるはずだったんだ」


彼は悔しげに拳を握りしめる。


「君を巻き込みたくなかった。だから『白い結婚』を装ったのに」


私は、溢れ出る涙を止められなかった。

この人が、どうして私の好みを全て知っていたのか。

どうして、あんなに切ない目で私を見ていたのか。

すべての辻褄が合った。


「……そんなの、ずるいです」


「リゼリア?」


「私だけ、何も知らない顔で。あなたに助けられて、優しくされて……」


私は身を起こし、彼に向き直った。

胸の痛みはまだ残っている。けれど、そんなことはどうでもよかった。


「何度も私を好きになって、何度も私を失って、それでもまた……私を選んでくださったんですか?」


「……何度君を喪っても、次の周回で君を見つけるたびに、また恋に落ちるんだ」


彼は力なく笑った。


「それが呪いなのか、私の愚かさなのかも、もう分からないけれど」


ああ、この人は。

どれだけ孤独な時間を過ごしてきたのだろう。

私は彼の手を取り、自分の頬に寄せた。


「もうすぐ日付が変わります。呪いの期限ですよね」


「だめだ、離れてくれ。今近づけば、君の心臓が止まってしまう」


彼は手を引こうとした。

けれど、私は離さなかった。


「もう、白いままでは嫌です」


「リゼリア!」


「私も、ちゃんとあなたを好きになりました。……何周分もの片思い、今ここで受け取ってください」


私は彼の首に腕を回し、その唇を塞いだ。


一瞬、彼が息を呑むのがわかった。

心臓が大きく跳ねる。

けれど、そこに痛みはなかった。


代わりに、体の中から重い鎖が弾け飛ぶような、温かな感覚が広がっていく。

窓の外で、深夜を告げる鐘が鳴り響いた。


          ◇


恐る恐る目を開けると、そこには驚愕に目を見開いたヴァルシュ様がいた。


「……痛くない、のか?」


「はい。むしろ、体が軽いくらいです」


彼は震える手で私の頬に触れ、それから肩を、背中を確かめるように撫でた。

呪いの反応はない。

私は生きている。


「解けた……本当に、解けたのか……」


「みたいですね」


私が微笑むと、彼は糸が切れたように私を抱きしめた。

今までで一番強く、けれど優しい抱擁だった。


「やっとだ。……やっと、君に触れられる」


耳元で震える声を聞きながら、私は彼の背中に手を回す。

長い長い、彼の孤独な戦いが終わったのだ。


「ヴァルシュ様」


「なんだ」


「これからは、白い結婚じゃなくていいんですよね?」


彼は顔を上げ、少し照れくさそうに、でも今までにないほど幸せそうに笑った。


「もちろんだ。……覚悟しておいてくれ」


「はい?」


「何周も我慢してきた分の『好き』を、まとめて返させてもらうからな」


その瞳の熱っぽさに、私は顔が熱くなるのを感じた。

でも、負けじと言い返す。


「望むところです。……これからは、ずっと一緒ですよ、旦那様」


その夜、公爵邸の一室の灯りは、いつまでも消えることはなかった。


世間的には、私たちは相変わらず「不仲な白い結婚」ということになっているらしい。

けれど、本当のところは当人たちしか知らない。


私たちの結婚生活は、確かに「白」から始まった。

でも今はもう、どんな色よりもあたたかい色に染まっている。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!


何周しても、何度失っても、それでも君が好き。

そんな一途で重すぎる執着溺愛公爵様のお話でした。


もし少しでも「面白かった!」「ハッピーエンドでよかった!」と思っていただけたら、

ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価&ブックマーク登録をしていただけると嬉しいです。


皆様の応援が執筆の何よりの力になります。ぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
呪いが解けた理由、死んでしまう理由、周回できる理由、を知りたいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ