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異世界生活に奴隷ハーレムを添えて ~元世界一位の最強奴隷パーティ育成術~  作者: 杏仁みかん


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第7話 最悪of最悪

「笑うなッ!!」


 少年は顔を真っ赤にしながら、勢いよく近づいてきた。


 声を張り上げながらも、その表情には恥ずかしさが滲んでいる。



「君みたいな冒険者”様”でも外すんだな。しかもあんなに真剣な顔で、あんなにじっくり構えて」


 俺があざ笑うように少年を煽ると、彼は一層顔を赤らめ始めた。



「い、今のは矢がおかしかったんだよ!じゃなきゃ確実に仕留めてた!」


「そうですか、そうですか……。じゃあ、次はちゃんと仕留めてくださいね。立派な冒険者”様”」



 俺が背を向けて歩き出した途端、後ろから彼の漏れるような声が聞こえてくる。


「くっ……うぅ……」



 大人に舐めた態度を取るからこうなるんだ。


 自分の無力さに気づけッ、ガキ。



 背中を向けて一歩踏み出したその瞬間、静まり返った森の中に鋭い声が響いた。



「待てッ!」



 思わず足を止めて振り返ると、少年が弓を片手にこちらを睨みつけていた。


「な、なに?」


「お前……ちょっと着いてこいッ!」


「え、なんで?」


「俺が矢をビシッと当てるとこを見せてやる!このままじゃ俺のプライドが許さねぇ!!」


「いや、いいよ、別に」


「なんでだよ!」


「なんでって……だって暗くなる前には村に帰りたいし?」


「て、てめぇ……」


 実際には空は澄み渡り、太陽はまだ真上にあった。


 どう見ても“日が沈む前”どころか、沈む気配すらない。



「それに俺にメリットないじゃん。君が狩りしてるところをみたところで」


 少年はピタリと足を止め、眉間に皺を寄せた後、勢いよく言い返してきた。


「だったら!もし着いてくるんなら、薬草の群生地を教えてやる!それでいいだろ!」


「群生地……?まぁ、それなら……」


 今日中に、せめて今ポーチに入っている量の倍くらいは採りたい。


 群生地に連れて行ってくれるんなら、わざわざ茂みをかき分けて薬草を探す必要も、苔に足を取られて捻挫しそうになることもない。



「なら、さっさと着いてこい」


 そう言って、彼は幹に刺さった矢を引き抜くと、ノロジカの逃げた森の奥へと静かに足を進めていった。



 それに、この世界での戦闘がどんなものかも気になる。


 攻撃をどう避けるのか。


  スキルはどう使うのか。


  倒したモンスターから、どうやってアイテムを回収するのか。


 気になることは山ほどある。



 それに、仮にあの少年でさえ弓を使ってモンスターを倒せるなら、俺だって弓を手にすればモンスターを討伐できるかもしれない。



 俺は少し遅れて少年の後をついていった。


「静かにしろよ、獲物が逃げるからな」


「分かってるって。狩るのはベルクとかでもいいのか?」


「ダメに決まってるだろ。依頼内容は”ノロジカ三頭の討伐”だからな」


「へぇ」


「お前、間違ってもベルクには手を出すなよ。俺もお前も生きて帰れないぞ」


「へぇ……冒険者”様”でも倒せないんだ」


「"今は"な!俺だってそのうち―――」


「静かにしろよ。獲物が逃げるだろ」


「うっ……」


 少年は何も喋らなかったが、その目からは静かなる殺意がひしひしと伝わってきた。



 それにしても全然ノロジカに会わない。


 コイツが矢を当てられるかどうか以前に、もう一度ノロジカに遭遇できるのかが心配になってきた。


「なぁ、先に群生地を教えてくれよ」


「なんでだよ?」


「一日中連れまわされた挙句、ノロジカに会えなかったから群生地の場所も教えてやらない、なんて絶対に嫌だから」


「安心しろ。確かにベルクと比べるとノロジカはそこまで多くは無いけど、別に珍しいわけじゃない。もう少し歩いてればいずれ見つかる」


「索敵…スキルとかはないのか?」


「そんなものない」


「索敵アイテムは?」


「ない」


「じゃあ、木の上に登って周りを見渡したりとかは?」


「うるさいなぁ……。こんな木にどうやって登れっていうんだよ。無いものはないし、出来ないものはできない」


「じゃあ、いつもはどうやって見つけてるんだよ?」


「さっきも言っただろ。歩いてれば、いずれ見つかる」


「でも、もう一時間はたってるぞ?」


「まぁ…そうだな。確かにいつもはもっと簡単に見つかるん…だ…けど……」


「けど?」


 少年は幹をじっと見つめたあと、視線を地面に落とし、静かに身をかがめた。



「どうした?」


「見てみろ、ノロジカの足跡だ。しかも新しい」


 少年が見つめる先には、二つの細長い蹄によるくっきりしたV字型の跡が残っていた。


 足跡は等間隔で規則的に森の奥まで続いている。



「これを辿っていけばノロジカに会える。いくぞ」


 少年は表情を明るくさせながら、それでいて慎重に歩き始めた。



 ゲームにも、足跡や食痕、糞などの要素は“痕跡”としてモンスターの索敵や追跡用として存在していた。


  でも、序盤から索敵スキルや専用アイテムが手に入ってたから、あまり頼る機会が無かったんだよな。


 多少は覚えてる痕跡もあるけど……やっぱり、一度ちゃんと調べる時間を作ったほうがよさそうだな。



 今の俺にとっては、生存率を高めるためにも、効率よく経験を稼ぐためにも、痕跡の知識は重要だ。


 少なくとも、この辺りに生息しているモンスターの痕跡くらいは、覚えておきたい。




 しばらく、足跡を見失わないように慎重に歩いていると、森の中にぽっかりと広がる開けた場所へと出た。


「くそっ」


「ん?どうした…って、これ……」


 視界の先に広がっていたのは、さっきまで見ていた鬱蒼とした森とはまるで違う光景だった。


 白く小さな花々が、地面一面に咲き誇っていて、それはまるで雪が静かに積もったようだった。



 間違いない、ガームショールの群生地だ。



「くそ、結局来ちまった」


「すごっ、摘み放題じゃん!」


「おいっ、後でにしろよ。今はノロジカが先だ」


「いいだろ、ちょっとだけ。結構歩いたし、休憩だよ、休憩」


 そう言いながら、俺はすぐそこに生えているガームショールから摘み始めた。


 たくさんあるからといって雑には採らず、一つ一つ丁寧に摘んでポーチへ入れる。



「はぁ……だから先に教えたくなかったんだよ」


「そんなこと言ってないでお前も手伝ってくれよ」


「……」


「これだけあったら目標も達成できそうだ。でもポーチに入りきらないかもな。お前、持っていけるか?」


「……」


「分かった、少し採ったら着いていくって―――」



 俺が振り返ると、目に入ったのは弓を構える少年。


 そして、その先にいるノロジカの姿だった。



 ノロジカはまだこちらには気づいていない。


 草むらに頭を近づけながら、食べ物か何かを食べている。



 少年は息を殺し、指先に力を込め、狙いを定める。



 一瞬の静寂、


 そして、矢が放たれた―――



 しかし、またしても矢は狙いから外れ、森の奥の草むらへと消えていった。


 ノロジカは矢が草木を通過するかすかな音に反応し、一瞬俺たちのほうに視線を向けると、すぐに逃げ出した。



「……お前本当に当てれるのか?」


「うるさい!くそっ、なんでこんなに当たらないんだ?いつもならもっと……」


 少年はブツブツと何かをつぶやきながら、左手に持った弓を隅々まで見ていた。



 先に群生地に来れてよかった。


 ノロジカを見つけることもできなければ、矢も当てられない。


 そんな中で、こいつに付き合うのなんて時間の無駄だからな。



 俺は再びしゃがみ込み、ガームショールに手を伸ばした。



 その時―――


「ガサッ」



 矢が飛んで行った方向から、草をかき分ける音がした。


 俺も、そしてきっと少年も、またノロジカが来たのかと静かに音のほうを見つめた。


 彼はゆっくりと背中の矢筒から矢を取り弓につがえた。



「ガサッ、ガサガサ」



 音が近づくにつれ、二人の間には妙な緊張が走る。


 まぁ、群生地を知れた俺からすれば、今更こいつがノロジカを仕留められるかなんてどうでもいいんだけど……、



「えっ」



 草をかき分け出てきたのは、一頭の”ベルク”だった。


 体高は二メートル、いや三メートルはあるだろうか。


 鼻息は離れた俺たちにも聞こえてくるほど荒く、その殺気だった鋭い目は俺たちを睨みつけている。



 だが、それ以上に……



 ―――矢が刺さっている



 少年が放ったであろう矢は、ベルクの右太ももに深く刺さり、血がボタボタと地面に垂れている。



「……」

「……」


 間違いなく最悪の状況だ。

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