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異世界生活に奴隷ハーレムを添えて ~元世界一位の最強奴隷パーティ育成術~  作者: 杏仁みかん


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第3話 思ってたのと違う

「…………」



 体のどこをどう動かせばゲームみたいにローリングできるんだ?


 ナイフを振るときってどうやって振るんだ?


 ロックオンはどうやって―――



 俺が困惑しているうちに、ベルクは顔だけでなく体全体を俺の方へ向けた。


 そして……



「ブルン、ブルン」



 べルクが首を左右に振り、鋭い息を鼻から吐き出した瞬間、その息が霧のように見えた。


 そして、地面をえぐるようにひづめを動かすと、その動きが小さな振動となって足元に伝わってくる。


 それは、目の前にいるのがただの草食動物ではなく、自身の命を脅かす”モンスター”だという現実を突きつけるようだった。





 まずい、突っ込んでくる―――ッ!




「……」



 ベルクは突進してこないで、のそのそと森へ歩いて行った。



 俺はただ尻もちをつくことしか出来なかった。



 ゲームでの経験を思い返しながらも、そんなベルクの態度が自分がただの無力なニートに過ぎないという現実を嫌でも突きつけられた。



「ははっ、大丈夫ですか」


 後ろから話しかけてきたのは馬車を引いていたおじいさんだった。


 おじいさんは優しい声で話しかけてくると、馬車を俺の後ろまで引いてきた。



「は、はい…大丈夫です……すいません……」


 恥ずかしすぎる!


 ”これで十分です”とか言っておいてこれかよ。


 ”世界一位の実力”ってゲームでどんなに強くても、現実じゃただのニートだろうが。


 なに調子乗ってるんだよ、俺。



 恥ずかしさから、顔がどんどん熱を帯びていってるのが分かる。



 俺は立ち上がると同時にフードを深く被り、真っ赤になっているだろう顔をできるだけ隠し、馬車の荷台へと戻った。



「まぁ…筋は良いんじゃないか」


 どこがだよ!


 変に同情しないでくれ。


 惨めになる。


 ……惨めではあるんだけど。



 俺が荷台に上がり座ると、また馬車はゆっくりと進み始めた。



 二人はその後も普通に会話をしてくれていたが、俺は少しの間恥ずかしさからうまく会話が出来なかった。



 ―――――――――



 しばらくすると、川のせせらぎが穏やかな音楽のように聞こえ、畑の新鮮な土の匂いが鼻をくすぐった。



「村が見えてきましたよ」


 フルーラさんの声を聞いて外に顔を出すと、異世界に来て初めての人工建造物が見えてきた。


 門や壁の気配は無いが、周りを流れる川がそのまま自然の防壁となっている。


 建物は大小様々なものが10軒ほどあるだろうか。


 畑が村の面積の半分以上を占めている。



 馬車は橋を渡って村の中に入ると村の中心へ向かっていった。


 建物の壁は木材の板や丸太でできていて、屋根は木材で作られているものや、藁で作られているものがある。



 それに牛も飼っているようだ。


 若い男が牛の世話をしているのが見える。


 白色の肌に黒色の模様がついている、牛乳のパッケージでよく見るような牛だ。



 あれはたぶん『ミルキーカウ』だな。


 オラトリアムオンラインでも、主に乳牛として広範囲で飼育されていた。



「あっ……」


 牛をじっと見ていると、牛の世話をしていた人と目が合ってしまい俺は反射的に視線を逸らした。



「さぁ、着きましたよ。ここがバークです」


 しばらくして馬小屋の前に馬車が止まると、俺は男と一緒に荷台から降りた。



「お前、これからどうするんだ?」


 男は荷台に積まれた荷物を降ろしながら話しかけてきた。



「そうですね……とりあえずは泊まれるところを確保したいんですけど、この村に宿泊できるところってありますか?」


「ああ、あるぞ。この道をまっすぐ行って左に曲がれば、ジョッキのマークが描かれた看板を掛けた店があるんだが、そこの一階が酒場で二階が宿になってる」


「この道をまっすぐ行って左ですね。ありがとうございます」


 ラフタスさんとも出会った時より緊張せずに話せている。


 向こうから何度も話を振って会話してくれたおかげだな。



「ああ。俺はほぼ毎晩そこの酒場で飲んでるから、なにか困ったことがあったら聞きにくるといい。俺の名前はラフタスだ」


「あっ、コウタです。ありがとうございます」


 まだ、この世界について知りたいことは山ほどある。


 次の目的づくりのためにも話は聞いておきたい。



「それで、お金って……」


「ん、宿代か?1泊2,000ペルくらいだったか?」


「あ、いや、ここまでの馬車代です」


「馬車代?」



「いいですよ、そんなの」


 一度、手綱を引いて馬を馬小屋に連れて行ったおじいさんが帰ってきた。


「ただ行き先が一緒だったから乗せただけですから。それに、旅をしているならお金は大事でしょう。冒険者になるにも」


「……はい、すみません。ありがとうございます」


 確かにその通りだ。


 今の俺の所持金はポーチに入っている5万ペル。


 日本円にすると1ペル=1円だから所持金は5万円。


 そう聞くと意外と持ってるように思うかもしれないが、ただ生きていくだけでもお金は減っていくし、そもそも稼ぐ手段が確立していないからお金は出来るだけ節約したい。



「謝る必要なんてありませんよ。頑張ってくださいね、コウタさん」


「はい、お二人とも本当にありがとうございます」


 俺はラフタスさんとおじいさんにお礼をすると、教えてもらった酒場へと向かった。



 教えてもらった通りに道を進むと、言っていた通り木製のジョッキが描かれた看板を掛けている建物を見つけた。


 建物の前にはいくつかの長机とベンチが置かれていて、その机を明るめの茶髪を後ろで結んでいるふくよかなおばさんが拭いていた。



「すいません……」


「あら、どうしたんだい」


 俺が声をかけると、おばさんは温かい笑顔で答えた。



「あのラフタスさんに、ここで泊まれるって聞いたんですけど…」


「ああ、泊まれるよ。うちは酒場と宿屋をやってるからね。何泊したいんだい」


「えっと……すみません、それって一泊した後に追加でもう一泊とかって出来ますかね?」


 一旦、村に着くっていう目標は達成したけど、次の目標をまだ決めてないんだよな。


 この村で何かできることがあるのか。


 それとも、明日にでももっと大きな街に行った方がいいのか。


 少し、この村を見回りながら考えたい。



「ああ、もちろん大丈夫だよ。この村で泊まっていく人なんてそこまで多くないからね。部屋なら空いてるよ」


「じゃあ、とりあえず一泊でお願いしてもいいですか?」


「あいよ、じゃあ中においで」


 おばさんに続くように中に入ると、手前には外に置いててあったような椅子と机がいくつか並べられており、奥にはカウンターが、右奥には二階へ上がる階段がある。



「一泊2,000ペルだけど大丈夫かい?」


「あ、はい、大丈夫です」


 2,000ペルか。


 ゲームだと比較的安い方ではあるな。


 こんな田舎だとそんなもんか?


 まぁ、部屋が汚いから安いとかじゃなければいいけど。



「じゃあ、これが鍵ね。部屋は階段を上がってすぐ目の前の部屋だから」


 おばさんはカウンターの下から俺に鍵を渡してきた。



「あと、言ってくれればご飯も出せるからね。いつでも気軽に声を掛けてちょうだい」


「分かりました、ありがとうございます」


 俺は鍵を受け取ると、階段を上り二階へと上がった。



 階段を上って直ぐの部屋……ってここだよな。



 鍵を開けて扉をゆっくりと開くと、中は意外にも綺麗に片付けられていた。



 部屋の中は少し狭い。


 三畳ほどだろうか。


 その中にベッドと机、椅子が置かれている。



 ただ一人で泊まるには別に問題ないな。


 むしろ、このくらい狭い方が安心できるかもしれない。



 俺は部屋の奥まで歩きフード付きのマントを脱ぐと、机の上に置き、片開きの木製窓を開けた。


 窓からは数軒の家と村の周りを流れる川、そして更にその奥に広がる森が見えた。


 外はまだまだ明るい。



 今は何時くらいなんだろうか。


 この世界に来て結構時間が経ったと思うけど。



 一階に下りたときにおばさんに聞いてみよう。


 まぁ、そもそもこの世界で時計が一般的に普及しているのか分からないけど。



 俺は椅子を引き、腰を掛けると靴を脱いだ。


「ふっーー」


 靴を脱ぐと今まで締め付けらていた足が解放され、足の隅々までに血が巡りだしたのを感じる。


 俺はそのまま靴下も脱ごうと思ったが、靴下はズボンと一体になっているタイプだったためベルトを外しズボンを脱いだ。


 ズボンの下にはボクサーパンツのような下着を履いていたようだ。



 足は血こそ出ていないが所々皮が剝けていて赤くなっている。



 これはしばらく走ったりしない方がいいな。


 一応、治癒系のアイテムも少しは持ってるけど……。


 いや、貴重なアイテムを靴擦れに使うのはもったいないな。



 俺はチェニックにパンツ一丁という何ともおかしな格好で椅子に座り込んだ。



 これからどうしようか。


 少し見た感じ、この村だとできることが少ない、というかほとんど無い気がする。


 だったら早めにもっと栄えてる街に行った方が良いかもしれない。


 ただ、都会に行って宿代とか飯代みたいな生活費が高くなったら、それはそれで困るんだよな。


「ん~……」


 とりあえず、少しこの村を見て周ってから考えるか。



 俺は立ち上がりズボンを履こうとした。


 しかし、おもむろにパンツを脱ぐと、チェニックすらも脱ぎ捨て全裸になった。


 そして、窓の外を眺めながら仁王立ちで立ち尽くした。


「……」


 なんか…異世界で裸になるってだけで不思議な感覚になるな。



 俺はそのまま自分の股間へと目を向けた。



 なんだろう、この感じ。


 アニメとか漫画で見てきたファンタジー世界に、こんなにもリアリティーなものがある……異物感?


 いや、ギャップか?


 でも、このギャップが更に俺が異世界に生きているということを実感させてくれる気がする。



「………」



 なにやってんだ俺。



 我に返った俺は急いでパンツを服を着てブーツを履くと、窓を閉め、鍵を持って部屋を出た。


 そして、鍵を閉め、鍵をポーチの中に入れると一階へと下りた。



 一階に下りると、おばさんが受付に立っていた。


「あら、どこか行くのかい?」


 相変わらず、おばさんの顔からは優しさがにじみ出ている。



「はい、少し村を見て周ろうかと」


「そうかい。まぁ、見て周るようなものなんてないと思うけどね」


「そうなんですね……」


 やっぱりそうなのか……。


 だったら早めに違う街に移動した方が良いかもな。


 ただその前にこの世界でどうやってお金を稼ぐか、は最低限考えておきたい。


 当初は冒険者として稼いでいこうかと思っていたが……まぁ無理だろうな。


 少なくとも今は。



「ちなみにお店とかってあるんですか?」


「まぁ、あるにはあるけど店って言えるようなものは、ココとあともう一つくらいしかないよ」


「そのもう一つって何のお店ですか?」


「フルーラさんっていう人の店なんだけどね。隣町から色々なものを買ってきて売ってくれるんだよ」



 隣町から?


「それって麦わら帽子を被っていて、白いひげを蓄えてるおじ……年配の方ですか?」


「あははっ、別にいいのよ、おじいさんで」


「あ、すみません」


「でも知ってたのね、フルーラさんのこと」



 やっぱりフルーラさんは、あのおじいさんのことらしい。


 確かに、かなりの量の積み荷を載せてたもんな。


 そういうことなら納得だ。


「はい、フルーラさんの馬車に乗せてもらってここまで来たので」


「ああ、そうだったのかい。だからラフタスさんも」


「はい、ラフタスさんも一緒に乗っていたので」


「そうなんだね。だったら馬車に乗って馬小屋に行っただろう?そこの正面から見てすぐ右にある建物がフルーラさんの店だよ」


「正面から見てすぐ右、ですね」


「ただ、多分今日は店を開かないと思うよ。今日は”ステンホルム”から帰ってきたばっかりだからね。荷物の整理も馬の世話もしないといけないだろうから」


「あ~……なるほど」


 もう、地名に関しては諦めよう。



「それに、明後日には他の村にも売りに行くだろうから開いてるのは明日、もしくは明後日以降の夕方頃だろうね」


「分かりました。そう言えば時間を知る方法とかってあるんですか?」


「そうだねぇ、こんな田舎で時計を持っているような人なんていないからね…。まぁ、空がオレンジ色になったら夕方、くらいに思っておけばいいわよ」


「なるほど……」


 どうやら時計はあるにはあるらしいが、そこまで普及はしていないらしい。


 ”田舎で”って言ってたから都会では普及してるのかもな。


 まぁ、どちらにしろ今の俺が時計を手に入れることは出来ないな。



「分かりました、色々と教えてくれてありがとうございます」


「どういたしまして。他にも聞きたいことがあったらいつでも聞いておくれ」


「はい、ありがとうございます」


 そう言うと俺は受付から離れ、出口へと向かった。



「暗くなる前には帰っておいでよ!」


「は、は~い……」


 俺を子供だと思ってるのか。


 もう27だぞ。




 ――― 30分後 ―――



「あら、もう帰って来たのかい?なにかめぼしいものはあった?」



「……いいえ」



 この村、何も無さすぎる。


 正直何も無いだろうと思いつつ、どこかで期待している自分がいた。


 だって異世界だよ。


 剣と魔法のファンタジーの世界だよ。


 これじゃあ、ただ田舎に来た人じゃないか。



「ははっ、だから言ったじゃないか、何も無いって」


「はい」


「どうする、少し早いけど夕食でも食べるかい」


「はい、そうします」


 他にすることもないし。


 それに丁度お腹も空いてきたところだ。



「あるもので作るからメニューなんてないけど大丈夫?お金は300ペルだよ」


「あ、はい。大丈夫です」


 300ペルか。


 結構、安く感じるけど……。


 まぁ、実際に食べてみないと分からないな。



「あいよ」


「……え」


 カウターに座ってしばらく待っていると、おばさんが食事を持ってきて目の前に出してくれた。


 出されたのは、薄く切られた茶色のパンに、野菜を煮込んだであろうドロドロで薄黄色のスープ、黄色く濁った泡が浮いている何らかの飲み物、そしてパッと見普通のチーズだった。



「……」



え、腐ってる?



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