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最強の素材はミスリルか?オリハルコンか?

 ミスリル、軽くて丈夫、物理防御は鋼の比ではない。そして、魔法耐性がこれまた高い。加工のしやすさも高ポイントだ。まさに最強の金属である。


 オリハルコン、強くて頑丈、物理防御は鋼の比ではない。魔法防御の高さは特筆に値する。そして、青白い光沢がクールだ。まさに最強の金属である。


 この二つの最強の金属の優位を巡って、ミスリル派とオリハルコン派の意見が完全に割れ、王国全土を巻き込んでの議論に発展した。酒場のからかい合いから始まった冗談が日増しにユーモアを失い、いつしか真剣勝負の様相を見せた。


 ある日、ついにその緊張が頂点に達して、挑戦状が両者に送り付けられた。事態を重く見た王が介入して、無残な私闘は回避されたが、両派の怒りは収まらなかった。そこで御前試合が催される運びとなった。王の目の前で真の最強の金属を決める戦いだ。


 ミスリル派のリーダーは若き天才金属学者兼細工師のリリアだ。


「ミスリルこそは最強の金属。重くて硬いだけのオリハルコンとは全くの別物だわ。加工のしやすさは万能性に富み、華麗な装飾を容易にさせる。野暮ったいオリハルコンとは違う!」リリアは高々と宣言した。


オリハルコン派のリーダーは代々の鍛冶屋一族の若き店主アルフレッドだ。


「オリハルコンこそは最強の金属。とにかく堅い。あまりの強度のせいで加工はシンプルになる。しかし、古来よりシンプルこそは最高で最強だ。ミスリルの加工のしやすさはもろさの言い換えに過ぎない。しかも、あちらはオリハルコンのようにかっこよく光らない。やわなミスリルとは違う!」


「おまえたちの主張は良く分かった」王は鷹揚に言った。「ならば、わしの目にその力を示せ。この戦いで最強の金属を決めよ!」


「仰せのままに」リリアはしとやかに言った。


「御意」アルフレッドは無骨に応じた。


 ミスリル派とオリハルコン派の歓声とヤジが飛び交う中、両者はそれぞれの最強の金属製の一品を取り出し、観衆と王の御前に掲げた。


 ミスリル派のリリアの手にはミスリル製の風鈴が揺らめいた。丸い形状に複雑な装飾が刻まれた壮麗な代物だ。


 他方、オリハルコン派のアルフレッドの手中にはオリハルコン製のスプーンが閃いた。先割れや溝の加工はない。無地のシンプルな代物だ。


「無粋なオリハルコン派よ、アルフレッドよ。ミスリルの華麗な鈴の音を聞け!」リリアはそう言って、風鈴をちりんちりんと鳴らした。


「軟派なミスリル派よ、リリアよ。オリハルコンの強靭な柄の硬さを見よ!」アルフレドはスプーンを逆手に持って、かちかちのアイスをがしがしやった。


「こら、おまえたちは真面目にやれ! 王の前だぞ!」王は珍妙な決闘に怒った。「なんで最強の金属を決める戦いで武器を用意せん?」


「王よ、あなたの治世のおかげでこの国はめっちゃ平和です」アルフレッドはアイスを食いながら言った。「数十年前から戦争は起こりません。武器の作り方は失われました」


「そうです、偉大な王よ。あなたの文化的政策は非常に素晴らしいものです。後世に語り継がれます」リリアはそのように一礼しながら、風鈴をちりんちりんした。


「しかし、おまえたちは決着をつけねばならないぞ」王は機嫌を良くしながら言った。「一応、それで戦ってみなさい」


 リリアとアルフレッドは顔を見合わせたが、おたがいの最強の金属の覇を賭けて、風鈴とスプーンで火花を散らした。まあ、基本的に力任せのしばき合いではあったが。無論、パンチとキックの方が手っ取り早いとかそんな無粋をほざくやつはこの場にはいない。


 激しい攻防の最中、オリハルコンのスプーンがミスリルの風鈴を打った。と、この上なき壮麗な音色が深々と響き渡り、一同を感動させた。


「私の風鈴がこんな音で鳴るなんて」リリアはうっとりした。


「オリハルコンがこんな音を奏でるとは」アルフレッドは目を見張った。


「ふむ、分かった」王は言った。「お前たちの戦いの結果は、この音色に決まった。ミスリルとオリハルコンは戦いのためのものではない。調和の音色を奏でるものだ。二人は共に仲良く歩みなさい」


「まあ、それもいいかもね」リリアは手を差し伸べた。


「きみは美人だよな」アルフレッドは女の手を握りながら、アイスを差し出した。「アイスを食うか?」


 再び風鈴とスプーンの音色が王宮に響き渡り、平和な王国は新たな時代を迎えた



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