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ハジ×マリ  作者: 森俊輔
3/9

第一章 学校転入編 B

藤原一フジワラハジメ

この物語の主人公の少女。

幼い頃から霊が見えたびたびイタズラをされていることを見兼ね

転校することに


齋藤真理サイトウマリ

はじめのクラスメイトになる少女

校舎を案内している


花子さん

学校で遭遇してしまった霊

第一章 学校転入編 B


「人間を一人を殺して私に捧げろ。」


「タイムリミットは今日だ」




「いやいや、私まだこの学校に転校してないし、今日夏休みだから生徒なんているわけないじゃん」


強気に言っているが、本心はビクビクしていた。

霊が考えていることなんてわからない。もしママが消えた時のように自分が何かされたら・・・


「トイレを出たところに一人いるぞ。どうやらお前を待っているようだ」


え?まさか葛城先生?でもなんで・・・


「そいつを殺せ」

そういうと花子さんは姿を消した。


息を吐き、心を落ち着けて手を洗う。

鏡を見ると顔は自分が思っていた以上に真っ青になっていた。


きっと今までにない恐怖を感じてたんだ。



しっかりしなきゃ。

外で葛城先生がいるんだったら相談してみよう。


手をハンカチで拭いて外に出ると葛城先生ではなく黒髪の綺麗な生徒が立っていた。


「あ、」


「?」


「あの、、何か聞こえました?」


「いえ、安心してください。お手洗いの音に聞き耳を立てるような趣味は私にはありませんよ」

ニコッとしながら言う齋藤は冗談でも言ったつもりなのだろうか。


「いや、そう言う意味じゃないんだけど」


「あれ、長かったのでそう言うことかと思ったのですが・・・間違っていたらすいません」

冗談じゃなくて勘違いされてるみたいだ・・・まぁ霊との会話が聞かれていないことはわかった。


「藤原さん、ご挨拶遅れました。初めましてあなたのクラスメイトになる齋藤真理さいとうまりです。担任の葛城先生からあなたを校舎案内するようにお願いされまして」


礼儀正しく話す齋藤は同性ながら綺麗で見惚れてしまう。


「藤原一です。よろしく。あ、あのじゃあ校舎案内を是非お願いします」


花子さんのことが気がかりだがひとまず齋藤さんに校舎を案内してもらいながらこの学校から出る方法を考えることにしよう。


「それでは三階から・・・」


「はい!」

藤原は齋藤の後ろをついて歩き出した。


——————————————————————————————————


校舎の中を一通り案内してもらい、この学校がかなり広いことがわかった。

夏休みで校舎内に生徒が全くいないこともあり、その広さはおそらくいつも以上に広く見えているのだろうが

それにしても今日一日では回りきれない。



「こんなに校舎が大きいなんて驚きです・・・」

藤原がキョロキョロしながらそう伝えると齋藤は中庭のベンチを指差した


「少し休みましょうか?」


藤原はベンチに腰を下ろすと齋藤は目の前の自販機で飲み物を買おうとしていた


「お茶でいいでしょうか?」


「あ、なんかすいません。案内してもらったのに飲み物まで・・・」


齋藤は自販機からガタンと出てきた飲み物を取り出す。

そして取り出した際にサラッサラッと顔にかかった黒い綺麗な髪を耳にかける。


「いえ、私も喉が渇きましたのでお気になさらず」

そう言って飲み物を手渡してくれた。


素敵な子だなー。

普段は霊が見える自分と関わることで他の人に危害が及んだら嫌だなってクラスメイトとの会話も必要最低限だったから誰かとこんなに長時間も話をしたのも初めてかもしれない。


「実はこんなに長時間、同世代の女の子と話をするの初めてで・・・」


きょとんとした顔をした齋藤だったが、クスッと笑う

「そんな貴重な経験が私で良かったのでしょうか?退屈させてませんか?」


また少し冗談っぽく言うが、その冗談も彼女の真面目な性格を知るとなんだか愛らしく思えてくる。


「あの・・・とっても楽しいです」

素直に感想を言い、少し恥ずかしくなりお茶をゴクゴク飲んだ。


それを見た齋藤は笑い出した。

「藤原さんってとても素直なんですね」


「自分でもこんなこと言うの初めてで・・・」

普段心を許して話をする人なんてお父さんと、たまに会うおばあちゃんくらいだし・・・


こういうのを友達って言うのかな・・・

楽しい・・・


もし、霊が見えなかったら

こんな日常が当たり前だったのかもしれない。


霊が見えてるのは私だけ、危害が及ぶかもしれないなんて私の勝手な憶測。

私が霊を無視さえしてれば友達を作ったりしても許されるんじゃないかな・・・


言ってみよう、齋藤さんと友達になりたい。


「あの、齋藤さん・・・もしよかったら私と」










「ソイツを殺セ」









齋藤と楽しい時間を過ごしてすっかり忘れていた。

藤原はずっと見られていたのだ。



無視しよう。


無視していれば、今はやり過ごせる。



「あ、齋藤さん。次はどこを案内してくれるんですか?」

とにかく移動しよう。


「え、今何か言いかけていましたが」


「いや、いいんです。次行きましょう!」


「ええ・・・わかりました」


こんなに親切にしてくれる齋藤に迷惑はかけられない。


やっぱりダメだ、友達なんて。


「今日一日で全てを案内することは難しいので・・・もう日も暮れてきますし最後に屋上を見て終わりにしましょうか?」


「はい、行きましょう!」


「では教員室で鍵を借りてきますね、普段は教員の許可がないと入れない場所なのですが裏山などが見れてすごく景色がいいんです」


教員室で鍵を貸して欲しいと齋藤さんが葛城先生にお願いをするとポンッと鍵を投げて渡してくれた。

それだけ齋藤さんは葛城先生に信頼されているのだろう。


——————————————————————————————————————-

屋上は三階の一つ上に上がったところにある。

藤原と齋藤は階段を登り屋上のドアの前についた。


ガチャ。


ドアを開けると風が吹き抜けた。


一面に広がる空、裏山の緑

凄く綺麗な景色が一面に広がる。


夏の暑さが吹き飛ぶような、気持ちのいい風が吹き

開放感に溢れている。


「すごい景色!!気持ちいーーー」

藤原は両腕をあげた。



「はい」

風で靡く黒髪を抑えながら藤原の前へ出て端の柵の方へと歩いていく。



「私、映画が好きなんですが作品の一つに『シャンクジョーンズの空』と言う映画があるんです。不当に占拠されて地下に閉じ込められた人々がもう一度空の下で暮らせるように戦うと言う映画なのですが」


藤原は話をじっと聞く。


「耐えて戦ってようやく勝利を掴んだ人たちが何十年かぶりに空を見て歓喜するって言うラストシーンに思わず涙したんです。空って凄いですよね。誰にでも平等にあるものでいつでも触れることができる日常なのに、こうして私たちに感動をくれる」


話終わると齋藤は柵に手をかけて空を見上げた。




「あのさ、さらっとネタバレしてない?」


藤原はニヤニヤしている。


「す、すみません。つい・・・私も普段はあまり趣味の話などはしないもので・・・どうやってこの感動を伝えようかと迷った末にオチまで話してしまいました・・・」


こちらを振り向き本当に申し訳なさそうに謝罪している。



「私ネタバレ気にしないタイプだから!今度その映画見てみる!」



「本当ですか!?他にもオススメの映画がありますので見終わったら是非教えてください!」








楽しい時間も束の間、またあの声が聞こえてきた。




「突キ落とセ」



「突キ落とセ」



「突キ落とセ、持ち上ゲて下に落とシて殺セ」


頭の中に声がたくさん聞こえてくる。



うるさい・・・

できるわけないじゃんか



そして藤原は決意した。


もう逃げないよ。




「齋藤さん、すいません!私、トイレ行きたいかも!お茶飲みすぎたみたい」



「あら、では私は鍵を教員室に返してきますね」


「うん。とりあえず校舎に入ろうか!」




もう一度三階のトイレに行こう。

花子さんに会って話をする。




またもう一度、齋藤さんとこの空を楽しく見るために




ハジ×マリ 学校転入編B)終

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