1.トラック
俺はうんざりしていた。
いつもと変わらない風景、いつもと同じ家族・友達、いつもと同じ学校…
そんなただ繰り返す日常に俺、神田樫太郎はうんざりしていた。
そんな平凡で退屈な毎日は突然終わりを告げた。
ある日学校に登校中だった俺の目の前にトラックが飛び込んできたのだ。
…目を覚ました。布団の上だった。
だが布団とはいっても現代のベッドのようなものではなく、草で作られたようなものだった。
周りを見渡した限りでは、俺は洞窟の中にいるようだった。
普通ありえない状況だが、なぜか俺は冷静だった。
「…なんだここ、夢か?
でも俺はさっきトラックに…」
「やっと起きたのか!」
聞き覚えのない、男の大きな声が聞こえる。
「草原でぶっ倒れてたお前を拾ってやったんだ、感謝してくれよ!ワシがいなかったら死んでたかもしれねぇ!」
声の聞こえる方を見ると、肌が緑色なことと耳が尖っていること以外は人間とほとんど変わらない、白い服を着たガタイのいい青年が立っていた。
「…助けてくれてありがとうございます。」
俺はとりあえず感謝の言葉を述べる。
「おう!なかなか素直じゃねえか!ワシは素直なやつは嫌いじゃないぞ!」
男はそのまま続ける。
「ワシはブリンっていうんだ!お前の名前はなんて言うんだ?」
「ブリン…さんですか。俺は樫太郎といいます。」
「そうか!カシタロウか!それで?なんでお前はあんなところで寝てたんだ?」
「…自分でも分からないんです。」
そうして、俺は自分の身に起こったことを記憶の限り説明した。
「ふーん、カシタロウは元々ここじゃない世界にいたってことか…
ってことは、お前は勇者ってやつじゃないか?」
「勇者?…俺が?」
RPGくらいでしか聞かない単語に俺は困惑をあらわにした。
「勇者ってのはだな!この世界の人間が他の世界から召喚した強い人間のことだ!」
…あまりにも大雑把な説明だが、ブリンさんはそれ以上のことを知らなそうだったから、深くは追及しないことにした。
「カシタロウはマナが多いからな!勇者特有の能力があるかもな!早速やってみよう!」
「勝手に話が進んでる…。」
こうしてブリンさんに外に連れ出されることとなった。
暗い洞窟を抜けた先には草原が広がっていた。周囲は木々に囲まれており、その木々は風に吹かれて揺れている。
そこでブリンさんは先ほど同じ大きな声で喋りだした。
「まずマナっていうのは力の源だ!この世界の生き物にはマナが体を巡っているんだ!お前はそのマナがたくさん体を巡っているんだ!感じてみろ!」
ブリンさんは自信満々にそう説明したが、致命的に説明が下手だ。
「…何にも分からないです…。」
ブリンさんはよっぽど説明に自信があったのか、伝わらなかったことに驚き、不安気な表情でこちらを見てくる。
「うーん、そうだなぁ…
あ!なんか前の世界よりも体が軽いとかないか!」
しばらく考えた後にブリンさんはそう言い放つ。
「そう言われれば、体の動きが素早くなったような気がします。」
「それだ!それがマナが巡っている証だ!マナがたくさん巡っている生き物は身体能力が高いんだ!」
「なるほど、何となくマナについて分かってきました。」
「フフン!そうだろう!」
ブリンさんの表情は一転して自信に満ち溢れたものになった。
「マナは生き物の心臓から巡るものだ!だから自分の心臓に意識を集中してみろ!」
ブリンさんの言う通りに自分の心臓に意識を集中する…。
鼓動の音が段々と大きく聞こえてきて、今まで耳に触れていた風の音が聞こえなくなる。段々と体が熱くなるのを感じる…。これが…マナ…?
そのとき、頭の中に一つのイメージが浮かんだ。
「これは…、トラック?」
それは、元の世界で自分の目の前に飛び込んできた、あのトラックだった。
「なんで…、あのトラックが…。」
その瞬間、体の力がどっと抜け、その場に倒れ込む。
「おいおい…一体どうなってんだ…?」
ブリンさんの声が聞こえ、顔を上げてみる。
ただの頭の中のイメージだったはずのトラックがそこにはあった。
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拙い文章ですが、よろしくお願いします。




