序章27 別たれる偏り ②
「はい。えー、そうですねー、やっぱり競技の性質上パンツそのものに目が行きがちですが、仮に『物』だけを評価するのであればマネキンにでも着せて出せばいいわけで……しかしパンツが存在する以上それを着用する人間、つまり女の子も必ず存在するというのがこの世の真理なわけで……あっ、だからといってパンツ自体は何でもいいとかそういうわけではもちろんありませんので」
「なるほど。パンツが重要なのは大前提な上でそこからさらに深く考察をするという解釈でよろしいでしょうか?」
「よろしくないわよっ! 人のパンツ勝手に見ただけでもダメなのに、それを評価とかふざけんな!」
「はい、概ねその解釈で問題ないかと……。それでですね、今回私が特に注視した点はプレイヤーの仕草です」
「仕草――と言いますと?」
「無視すんじゃないわよっ! はなせっ、あほ弥堂っ! あいつらぶっとばす‼」
「はい。今回の種目はモデルが最初から下着姿で出てくるショーなどではなく、スカートで隠した状態から始まるパンチラ競技です。つまり秘められたものを『見せる』或いは『見られてしまう』、そういったプレイヤーのアクションが必ず存在し、そしてそのプレイヤーのパフォーマンスに我々が『魅せられる』。そのような仕組みになっています」
「それは……確かにそうですね……」
「あんたらが勝手に見たんだろうが!」
「そして今回は出場に年齢制限のあるU-18の大会です。私が重要視した女の子の反応に何を求めるべきかを熟考した結果、それは少女性……ではないかと結論しました」
「少女性――ですか」
「へんたいっ! キモオタ! どーてーっ! ばかあほーっ!」
弥堂の拘束から逃れられず、法廷院たちにやめるよう抗議しても聞いてもらえずで、打つ手がなくなった希咲はシンプルな悪口を言う方向にシフトした。
悪口を言われた彼らは希咲の方へ顔を向け、彼女の様子を見て一度ほっこりした表情を浮かべると、すぐに表情を真剣なものに改め大会の進行に戻る。
「はい。確かに白井さんの下着は……何と言えばいいか……放送法に抵触しますので詳細には言及できませんが、ドスケベであったとは謂えます。しかし先程触れたとおり今回はU-18の学生の大会ですので、やはりふさわしくはないな、と……先程彼はあえて触れませんでしたが、この点はジャッジ本田も審査するにあたって重く見ていたと思います」
法廷院が視線だけを向けてその意を問うと、正座待機中のジャッジ本田は厳かに頷いた。
「そして肝心のプレイヤーのパフォーマンスですが、白井さんはこの点に於いてもやはり暴力的なまでの『見せつけ』のプレイスタイルですので、必然的にふさわしくないと、そう判断をしました。これが痴女もの大会であればいい線いったかもしれませんが……何度も言いますが今回は制服を着たJKもの……というか現役JKバトルですし」
「西野テメーあとでわかってんだろうな」
希咲ではなく白井の方から怨念めいた野次が飛んでくるので、ジャッジ西野は堂々と胸を張って前を向いて発言することで彼女を視界に入れないようにした。
「それに対して希咲さんですが……彼女は見事なまでに年頃の少女らしさを私たちに見せてくれました。総合的に高評価なのですが、その中であえて一点だけ高く評価した部分をご紹介しますと、やはり『恥じらい』ですね。彼女の仕草に恥ずかしながら私ときめいてしまいました。これは誰に何を言われようと譲れません」
「いえ、わかりますよ! ジャッジ西野! そこに文句をつける人はいないでしょう!」
「わーっ! わーっ! わーっ‼」
悪口も通じなかったので希咲は単純な大声で封殺にかかった。成果は至近距離にいた弥堂の表情が険しくなっただけであった。
「ぼっ、僕もっ! 僕も希咲さんはすごくかわいいと思いますっ!」
瞑想でもしているかのように大人しかった本田が興奮気味に会話に入ってきた。
「おやぁ、元気いっぱいだねぇ? もしかして好きになっちゃったのかなぁ? どうなんだい? ジャッジ本田。ん?」
「そ、そんな……好きだなんて……僕なんかが…………ドビュフフフ……」
法廷院に揶揄われた正座中の本田君はそのふとましい両腿の間に両手を挿し入れてもじもじとしながら奇怪な笑い声をあげると、大きな鼻の穴からふしゅるーふしゅるーと息を噴く。
ジタバタと暴れていた希咲が急に大人しくなったので、弥堂が彼女に目を向けると、弥堂が掴んでいる希咲の襟首の彼女の髪の隙間から見える首筋にぷつぷつと鳥肌が浮かんだ。
「ジャッジ本田の気持ちもわかります。今日私たちに見せてくれたパフォーマンスが彼女の真の実力だとしたらきっと多くの男子生徒の心を掴むと思います。この実力が広く周知されれば恐らく今年度の『美景台カワイイ女子ランキング』の各部門で上位に……いや、ひょっとしたらグランプリすら射程に収めるかもしれません。それ程の逸材ですよ希咲さんは」
本田の介入により緩みかけた審査の場を締め直すように、ジャッジ西野はクレバーに自身の見解を語る。その甲斐もあって法廷院と本田は表情を真剣なものに改め、どん引きしていた希咲の表情は再び憤怒に染まった。




