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俺は普通の高校生なので、 【序章】  作者: 雨ノ千雨
序章 俺は普通の高校生なので。
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序章15 箱の中の猫 ②


「んんっ、失礼したね。えーっとなんだっけ? ……そうそう! どう責任とるのさって話だ! さぁ! どうなんだい⁉ 希咲 七海さん‼」


 もう大分ぐだぐだだったが法廷院はとりあえず勢いでいった。


「どうするって言われても……でもさ、悲しいけど終わっちゃったものは仕方ないし、切り替えて次の恋を――「終わってないから」――え?」


「まだ……終わってないから」


 即死級の痴態を晒したが、この恋はまだ終わってはいないのだと白井さんは主張した。彼女の目はマジだった。


 希咲は気まずくて目線を彷徨わせながら「だって……でも……」と彼女のために精一杯言葉を選ぼうとしたが、結局適切な表現を見つけることが出来ずにお口をもにょもにょさせて、やがてただ彼女へと痛ましい目を向けた。


「そんな目で見るんじゃないわよおおっ! 見下さないでっ!」

「ご、ごめんなさい……」

「ふん。自分が男であれば相手は誰でもいいからって他の女まで同じだと思わないでちょうだい。私は一途なの。こんなことくらいで気持ちを変えたりなんかしないわ」

「だから別にあたしそんな遊んでなんか――」

「言い訳なんて聞きたくないわ! どうせ毎晩別の男の上でスクワットしているのでしょう! このセックスアスリートめ!」

「そんなアホいるわけないでしょうが! ……誰がアスリートよ。くっそこの女ぁ……」


 白井への同情で下手に出ていたが、あんまりな濡れ衣にいい加減怒りの方が勝ってきた。


「私は一つも諦めてなんかいない。むしろもうこれ以下はないと思ってある意味開き直れたわ。今も毎朝彼へとアピールをし続けているもの」

「白井さんメンタルどうなってるの? アスリートなの? そこは素直に尊敬するわ」

「これは戦いなのよ。私はね、失ってしまった自分自身の名誉を取り戻すために、この生命をかけて彼へと自分がちょっと地味めだけど清楚で可憐な普通の女子であると証明しなければならない……でもね、それにはとてもお金がかかるの……そう、私の地獄は今もまだ続いているのよ」

「は? お金? え、えと……白井さん一体何してるわけ?」


 また突然話が飛躍して希咲は嫌な予感がしたが聞かないわけにもいかなかった。


「ふっ、よくぞ聞いてくれたわね。私は黒のローライズTバックを穿いているところを彼に見られてしまった。そしてあのババアの洗脳教育により『黒パンツだからいやらしい女である』とレッテルを貼られてしまった。そうよね?」

「え、えと、まぁ、うん」

「だからね、あの惨劇の日の翌日から……毎朝彼の前でわざと転んで純白の清純な下着に包まれた清楚なお尻を彼に見せつけることで私のイメージの回復を図っているのよ! あの日はたまたま黒だっただけで、基本は毎日白しか穿かない清廉潔白な女であると証明し続けているの‼」

「頭おかしいんじゃないの?」

「あなたにはわからないでしょうね! 私の苦しみなんて!」

「うん、ごめん。なんでその結論に辿り着いたのかさっぱりわかんないわ」

「だからあなたは淫乱なのよ!」

「淫乱はおめーだろーが」


 この騒ぎが終わったらID交換して友達になろうと思っていたが、希咲は考えを改めた。


「てか、さ。なんでそれでお金がかかるわけ?」

「私だって女なのよ!」

「はぁ……」


 何を訊いても異次元な答えしか返ってこないこの連中から早く解放されたいと、希咲は心からそう願った。


「私にだって見栄はあるの……毎日毎日パンツを見せていけば白パンツのバリエーションなんてすぐに尽きるわ。彼だって何週間も何ヶ月もに渡って毎日パンツを見せられればそのうち覚えてしまって『あ、このパンツ前に見たな。最近もう見たことあるやつしか穿いてないけどこの女パンツのローテ回転早くね? スタメン弱すぎ』って飽きられてしまうかもしれないじゃない! だから私はバイト漬けの日々よ。常に新たな白パンツを用意するためにね。私の家の家庭環境ではバイトの許可が学園から降りないから、内緒でパンツ買う為にバイトをしてるの!」

「なんか目的変わってきてない?」

「そ、それに――どうせなら彼の目を飽きさせずに楽しませてあげたいしぃ、もしかしたら彼が私のお尻にムラムラきちゃったりとかして、そうしたらワンチャンあるかもしれないじゃない……」


 急にもじもじして本音を吐露し始めた白井さんを尻目に希咲は「ねぇ」と、西野へと声をかける。


 まさか自分に直接声がかかるとは思っていなかった西野君はビクっとすると「……な、なんですか?」と激しく視線を彷徨わせながら挙動不審に自分の肘から肩にかけて擦り上げた。


「あんたがさっき言ってた『男に媚びるしか能のないクソビッチ』ってこういうのを言うんじゃないの?」


 ジト目でそう言う希咲さんはビッチ呼ばわりされたことをしっかりと根に持っていたのだ。


 西野君はギクっとするとしばし反論の言葉を探したが、


「…………ぼ、僕の口からはなんとも……」


 西野君は仲間のことを慮り明言を避けた。



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