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秒速のイカロス  作者: ほろよい
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序章 イカロスの翼

あらすじ


伊田俊介は病的に勝つことにこだわる、陸上選手。

不慮の事故で片足を失った伊田だったが、義足の陸上選手として事故の前よりもタイムを伸ばし、オリンピック出場候補の健常者選手よりタイムが早くなっていた。

やがて、義足選手としてオリンピックに出場するという前代未聞の報道も飛び交うように。


そんな伊田のスキャンダルをとってこいと命を受けた週刊ワイドスパの記者・鮫島は、伊田が義足になるために偽装事故を仕組んだのではないかと考え始める。


―――――――――――――――――――――――――――


登場人物


鮫島郁夫(34)『週刊ワイドスパ』記者

伊田俊介(21)(7)(14)(17)スプリンター

真野桜子(22)『週刊ワイドスパ』記者・鮫島の後輩


川畑春樹(21)スプリンター

桑原信之(20代)テクニカル・スポーツ社員

上妻夏海(19)伊田の彼女・読者モデル

棚橋昌哉(17)伊田の高校時代の同級生

伊田孝明(42)(30)(31)(38)伊田の父親

伊田芳江(44)(29)伊田の母親

坂上竜哉(53)『週刊ワイドスパ』編集長

谷口慶介(20)伊田の部活仲間

時本翼(21)伊田の部活仲間

堀越巧(35)伊田の高校時代の部活顧問

栗原愛(24)キャバクラ嬢

落ちてくる。




夜空に輝く無数の星。




美しい夜空には不釣り合いな鉄骨が、落ちてくる。




寂れたビルの前に横たわる伊田俊介の目は、頭上から落ちてくる鉄骨を捉えていた。

伊田は、恐怖も絶望も感じていない。ただ、空想に耽っていた。


頭の中に広がるのは、異国の地、ギリシャの風景だ。

背中に白くて大きな翼をつけた伊田は、頭上でギラギラと輝く太陽を、恍惚の表情で見つめている。

伊田は飛べると確信し、この翼で太陽に辿り着けると信じている。

伊田は飛び立とうと翼を必死に動かす。体が浮くか浮かないか――

そこで空想は途切れる。



ガッシャーーーッン!!!



鉄骨の巨大な落下音と右脚の激痛で伊田は一気に現実に引き戻された。

伊田の右脚は、無残にも巨大な鉄骨の下敷きになっている。



じわり、じわりと、赤黒い血が地面に染み渡っていく。



伊田は先程の空想の続きに思いを馳せた。

俺も飛べるはずだ。イカロスのように。



こんな夜でも、頭上の星は変わらぬ輝きを放っていた。


素知らぬ顔で輝き続ける星たちは、妖しくも、恐ろしいほどに、美しかった。


(続く)

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