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神に選ばれた人間異世界で王様になる  作者: ペンギン
キャメロット編
17/48

戦いの果てに得たもの

 真っ白な灰となってキメラが死んでいく。アーロットの一撃は地上を襲う災禍を未然に防いだ。

 しかしこの場にいる誰の顔にも世界を救ったー誇張ではなくーことに対する安堵も、それを成し遂げたという誇りもない。あるのは後味の悪さだけだった。

 雨が降り続ける・・・。


 キメラを倒した後アーロット達は再び基地の内部に戻っていた。

 理由は二つ、当初の目的通り基地を完全に破壊すること。そしてもう一つは基地内部の探索。

 悪魔側の機密情報でも入手できればとの目論見だったが、基地の内部はもぬけの空だった。キメラの騒ぎに乗じて、重要な情報は処分、あるいは持ち出され生き残った基地職員すら消えていた。

 アーロットはフォルスの部屋を探していたが、今後悪魔と戦う上で役に立ちそうな資料は一つとして見つかっていなかった。

 アーロットがフォルスのデスクの引き出しを開けようとすると途中でつっかえてしまった。

「?」

 引き出しを奥に戻して再度引いてみるも結果は同じだった。感触からして引き出しの中で何かが引っかかっているようだった。

 アーロットは引き出しの中に手を入れて中を探ってみる。

 すると引き出しの天井、つまり机の裏側に何かがテープで貼り付けられているのを感じた。

 それを引き剥がして取り出したアーロットは予想外の代物に目を見開いた。

「これは・・・」

 アーロットが取り出したのは闇魔法に必須の媒体である闇石(あんせき)だった。

 しかしアーロットには闇石が隠されていた理由が分からなかった。

 闇魔法は他の魔法分野とは比べ物にならない攻撃力を発揮する。引き出しに死蔵するくらいなら部下の騎士に持たせたほうが余程有効な活用法と言える。

 そうすることはなく、その上他の機密書類と一緒に持ち出すこともしなかったフォルスの意図がアーロットにはさっぱり分からなかった。

 偽物ということはあるまい。それは魔力を流して闇子(あんし)が放出されればすぐに分かることだ。

 机に置いた闇石に魔力を送り込む。すると光すら消滅させる純黒の粒子が発生した。アーロットはひとまず放出された闇子と魔力を衝突させ闇子を消した。

 これでこの闇石が本物であることは証明された。

 では闇石になにか細工が施されているのかとアーロットは考えたが、アーロットにそれを確認する技術はなかった。

 そこで行き詰ったアーロットは一通り探しつくしたフォルスの部屋を後にして、メリサたちと合流することにした。

 

 アーロットが地上に出ると雨は既に止んでおり、優しい日の光が彼を出迎えた。

 アーロットは先に待っていたメリサたちに闇石を見せた。

 この場で唯一瞳に分析の魔法陣を刻んだメリサが闇石を手に取り調べている。

「異状ないです。特に変な魔法陣が刻まれている感じではないですね」

 いつも通り淡々とした声音でメリサが鑑定の結果を報告する。

「では戦闘で使用しても問題はないな」

「はい」

 それを確認したアーロットは収納の魔法陣の中に闇石をしまった。未加工の状態でも闇魔法は使えるがフォルスのように指輪や腕輪のようにして使用するのが闇石のセオリーだ。

「それで、お前たちは何か見つけたか?」

 全員から否の回答が返ってきた。アーロットは半ばその答えを予想していたため驚きはしない。残念なことではあるがもともと自分たちの本来の目的は別にあると切り替える。

「ではこれより基地の破壊を行う。すこし離れるぞ」

「「はい」」


 四人ーログレスはキメラを倒した後に森に帰ったーとイースロンは最初にアーロットたちが隠れていた岩場まで退避した。 

 アーロットが魔法陣を描く。起爆の魔法陣だ。これを発動することで基地の魔力炉に放り込まれた水晶に閉じ込められた魔力が解き放たれ魔力炉が暴走、大爆発を引き起こして基地を破壊する。

「『起動(オン)』」 

 アーロットの詠唱とともに水晶から彼の魔力が解放される。魔力炉は一気に暴走を開始する。暴走を防ぐためのセーフティはすでに破壊されている。止めるものがない状態で制御不可の状態に置かれた魔力は行き場のないエネルギーを発散する。

 爆発が空気と大地を揺らす。爆風はアーロットたちがいる岩場にまで届いた。砂埃が基地の周囲を取り囲み、作戦が成功したのか判別できない。

 やがてどこからともなく吹いてきた風が砂を吹き飛ばし基地の様子が確認できるようになる。基地があった場所からさらに数十メートルの範囲にクレーターが出来上がる。基地は瓦礫に埋められていたが完全に破壊されていることは明らかだった。

 ガラハッドが安堵の溜息を吐く。マーリンの予知は的中率百パーセントとはいかない。彼自身気づかない不安があったのだろう。それがようやく作戦の成功を自らの目で確認したことで安心できたからこその溜息だった。

 程度の差はあれそれはこの作戦にかかわったすべての者に共通することだった。無論アーロットとて例外ではない。むしろ彼が一番不安に駆られていたかもしれない。この作戦が失敗すればキャメロットにはまた幾度となく争いの火の粉が飛び掛かることになる。それはキャメロットの王としてとても許容できることではなかった。ゆえに彼は今回の作戦を必ず成功させなければならないという使命感を誰よりも持っていた。実際に成功を目にした彼の今の気持ちは余人には到底推し量ることができないだろう。

「これで今回の作戦は終了だ。皆ご苦労だった」

 こうして長いようで短かった作戦が終了した。



 トロワ基地が破壊されてから二日が経った獅子の月の五日ー名前の違いこそあれど暦の周期はレーテルナと一致しており、獅子の月は四月に相当する。トロワ基地が破壊されたことによってトロワの街に住み着いていた悪魔は蜘蛛の子を散らすように他の国に避難していった。

 現在アーロットたちは元トロワの街の住民ー全員が人間ーと街奪還の宴を開いていた。日はとうに暮れており焚火(たきび)の光があたりを照らしている。

 街の解放を告げてロンバールに旅立とうとするアーロットたちを住民が半ば強引に誘った末、晴明との面会までまだ少しの猶予があることと、せっかくのムードに水を差すのも悪いと考え、アーロットたちは宴に参加した。

 トロワの街は明治の日本で見られた儀洋風建築(ぎようふうけんちく)のような建物が多くみられる。幸運にも街は占領された時からあまり手を加えられていなかった。

 宴は街の中心にある噴水広場で催されていた。なお飲み物や食べ物の大半は悪魔が持ち切れずに置いていったもので、足りない分はアーロットが魔性で作り出した。

 宴の輪の中から少し離れた位置でアーロットは果実のジュースを片手に大喜びではしゃぐ住人を見ていた。

 その光景をアーロットは素直に喜んだ。

 しかし少しばかりの気がかりもあった。

 いきなり住む場所を失った悪魔のことだ。

 トロワの街は元は人間の街でそれを悪魔が力にものを言わせて略奪したのだから追い出されても彼らに文句を言う資格がないことはアーロットにも十分わかっている。だが彼らとてしたくてそんなことをしたわけではない。そうするほかに選択肢がなかったのだ。

 世界を破壊されると知って悪魔を受け入れる世界はない。慈悲をもって悪魔と戦ったアーサーでさえラスティナの民の生活と悪魔の生活を天秤にかけ己の守るべき民衆の生活を選んだ。

 世界を生む神『ユニヴェル』でさえ新しい世界を生むには数万年単位の時間がかかる。それだけあれば悪魔は一つの世界をやすやすと破壊するだろう。

 気の遠くなるような数存在する世界のすべてが悪魔を受け入れない。彼らには生き残るために奪うという選択肢しか与えられていない。

 初めから滅びを、戦いを義務付けられた彼らの運命を想うとアーロットはそのたびに胸が痛くなるような気がした。

「王様も難儀な性格してますね」

 急に横から声がかけられる。

 声のしたほうをアーロットが向くとそこにはメリサが立っていた。いつもの黒ローブを脱ぎ、パーカーにスカートというラフな格好をしている。彼女の周りには魔法でたくさんの皿が料理を乗せて浮いている。細身な体からは想像もできない量をメリサが食べることは既に知っているから今更そのことにアーロットは驚かない。

 アーロットが驚いたのは何も語らずともメリサがアーロットの心中をずばり言い当てたことだ。

 少々間の抜けた顔でメリサを見るアーロットに当のメリサがさも当然と言わんばかりに口を開いた。

「付き合いは短いですけどね、こう何日も一緒に生活してたらいやでもその人の人となりはわかるし、何考えてるかくらい予想がつきますよ」

 そう言ったメリサはややあきれ気味だ。そうは言ってもメリサにごく近しい人間でもなければ普段の表情との変化に気づかないだろう。

 本人は極めて感情が読みにくいにも関わらず、メリサ自身は相手の感情の機微にとても敏感な女性だった。

「何でそこまで悪魔を気に掛けるかわたしにはわかりません。敵なんだから割り切ってしまえばいいのに」

 人の感情の機微に鋭いからと言って、その人に寄り添うことができるとは限らない。メリサはアーロットの感情を一蹴した。

「それがきっと普通なのだろうな。しかし俺にはそれができない。俺が一番に守るべきは民の命だ。だがそれは民以外の命を切り捨てていい理由にはならないと思う」

「それがたとえ自らの民の命を脅かす敵の命でも?」

「むろん彼らが俺の民に危害を加えるなら俺は迷いなく聖剣を手にする。だがそれは悪魔の命を諦める理由にはならんと俺は思う」

「中途半端ですね。いつか死にますよ」

 メリサの痛烈な指摘には答えず今度はアーロットがメリサに問う。

「メリサは悪魔を全滅させるつもりなのか?」

「別にそこまで考えてはいませんよ。ただ金輪際戦争が起こらないようにしたいだけです」

「それは悪魔の全滅、いや絶滅と同義だ。生きていくことのできる場所がなくなればやがて彼らは一人残らず死んでしまう」

「だとしても戦争という行為を見逃すわけにはいきません」

「それは俺も同じだ。これ以上この戦争を続けるわけにはいかない。一刻も早くこの戦争を終わらせなければいけない。だがもはや平和的解決の道はない。どのような結末になるにせよ終戦までには多くの犠牲が生じるだろう。叶うなら俺はその犠牲が最小となるようにこの戦いを終わりへと導きたい。そして多くの種族が納得する終わり方を探したい」

 アーロットの言葉を聞いてメリサはしばらく沈黙していた。彼女が胸中で何を考えているのかアーロットにはわからない。

「いいんじゃないですか。悩んだ先にしか見つからない答えもあるでしょう。わたしはあなたの臣下ですからね、答えがなんであれ主についていくまでです」

 返ってきたのはそんな当たり障りのない言葉だった。アーロットが見つめるメリサの横顔からは彼女のいかなる感情も読み取れない。

「そうか・・・」

 しばらく二人の間に沈黙が訪れる。アーロットの耳には宴の喧騒だけが届く。

 ふとアーロットはガラハッドとラデスの姿が見えないことに気づく。

「二人はどうした?」

 二人、というのが誰を指すのかメリサはすぐに理解した。

「ガラハッドさんは街娘の大群に押し流されていきました。ラデスさんは宿に戻ってゲームをすると言ってましたね」

「ガラハッドも苦労するな。ところでメリサ」

「何ですか?」

「お代わりに行きたいなら行ってきていいぞ」

「ではお言葉に甘えて」

 会話の途中もものすごい勢いで料理を平らげていたメリサは持ってきた十二枚の皿に乗っていた料理を残さずすべて食べていた。なおもそわそわと料理のある方向を見ていたメリサを気遣ってアーロットは彼女を解放した。

 去っていくメリサを目で追いながら、視線を街の住民達に移す。誰も彼もが燃え上がる炎よりも輝いて見える笑顔を浮かべている。それも当然、彼らはずっとこの日を夢見て辛い毎日を生活してきたのだから。


 宿ー実際に宿として機能しているわけではないーに戻ってシャワーを浴びたアーロットは寝る支度を整えて用意されたベットに横になった。

 これまでの道程では毎日が野宿でまともなベットで寝るのは久しぶりのことだった。そのせいかあまり寝付きの良くないアーロットの(まぶた)も今日は重い。

 (かすみ)がかった意識のなか思い出すのは先程のメリサとの会話。

(最小限の犠牲でこの戦争を終わらせる方法・・・)

 ふとアーロットは頭に浮かんだ考えをそのまま口に出した。

「俺の魔性・・・」

 この戦争が悪魔の資源不足に起因しているのなら、無から有を作り出すアーロットの魔性は終戦の糸口となる可能性は高い。ついさっきまで開かれていた宴の食事もいくらかはアーロットが作り出したものだ。

 通常魔法や魔性で作り出したものは非魔法的に作り出されたものと同等の性質を備える。存在の維持に魔力を要求されることはなく、品質が劣化することもない。

 故にアーロットの魔性を使えば理論上今すぐにでもこの戦争を終わらせることは可能だった。

 そこまで考えてアーロットの思考は行き詰まる。

 理論は理論としてそれを実行に移すには大きな障害があった。

 悪魔の人口と領土が広すぎること。悪魔の領土一つ一つを訪ねていては全ての領土を回り切るには一体何万年かかるのか想像もつかない。全ての領土を回り終える頃にはすでに悪魔の力で世界の一つ二つは滅ぶことになるだろう。かと言って悪魔全てを収容できるようなキャパシティを備えた世界は存在しない。

 アーロット一人で悪魔全員を養うには無理があった。

 なかなか思うように考えがまとまらない中、アーロットの意識は深い眠りの底に落ちていった。


 翌朝、獅子の月六日の昼、昨日宴の開かれた場所でアーロット達は昼食を食べていた。

「今日はこれからどうなさいますか?」

 昼食を食べながらガラハッドがアーロットに尋ねる。

「そろそろこの街を出たいが、その前にイースロンのところに行きたい」

 イースロンは現在街の南に広がる森の中にいた。人間の集団の中にいるのは落ち着かないということなので好きにさせている状態だった。ちなみにガラハッドたちの馬はこの街の厩舎につながれている。


 昼食を終えたアーロットたちは出発の準備を整えて街を出ることにした。

 町の住民が総出でアーロットたちの見送りに来てくれた。

「この度は本当にありがとうございました。人王陛下にはいくら感謝してもし足りません。トロワの街の全住民がこの御恩生涯忘れないことを誓いましょう」

 住民を代表してトロワの街の街長(まちおさ)が感謝を述べる。

「民の平和が俺の願いでもある。当然のことをしたまでだ。街を取り戻すのが終わりではない、大変なのはこれからだ。復興に励んでくれ、キャメロットからもできるだけの支援はしよう」

「ありがとうございます」

 再度感謝を口にする街長に別れを告げてアーロットたちはイースロンのいる森を目指す。


 イースロンのいる森はトロワの街からそれほど離れてはおらずほんの十分ほどで森の入り口についた。

 今日の天気は晴れだが先日の雨がの影響がいまだに残っているのか森の中はじめじめとしていて大変歩きにくい。

 それでも転ばないように慎重に森の中を歩いていくとやがて森の中にある小さな泉に出くわした。泉の畔には一頭の白馬が立っている。

 その幻想的な光景に立ち入ることにアーロットは一瞬躊躇(ちゅうちょ)してしまう。

 しかし意を決して一歩踏み出し神聖な領域に足を踏み入れる。 

 足音に気づいてイースロンがアーロットたちのほうを振り向く。

「久しぶりだなイースロン」

 アーロットとイースロンが別れていたのはほんの三日のことなので久しぶりと言うほどでもないが、アーロットはほかに言葉が思いつかなかった。

「久しぶり、アーロット」

 イースロンは特に気にした様子もなくそう言葉を返す。

「俺たちはこれからロンバールに出発することにした」

「お別れを言いに来てくれたの?」

「いいやそうじゃない。イースロン、俺と契約してくれ」

「直球ね、嫌いじゃないけど」

 人間には永らく特殊な能力はないとされてきた。悪魔のように世界を渡ることもできなければ植物のように下位の植物を操ることもできない。しかしそれは間違いだったと判明した。それを証明したのは他ならぬ先代人王であるアーサーだった。アーサーが発見した人間に隠された特性とは他種族との契約。他種族との契約によって人間はその種族しか使えない種族魔法を行使するなど多くの恩恵を受けることができる。

 その特性は王種となったアーロットにも引き継がれていた。

「私もあなたと契約してもいいと思っている。一時でもお互いの命を預けあった仲なんですもの。でもこれだけは聞かせてあなたはこの先悪魔を憎まないと誓える?」

 アーロットの回答如何によってはイースロンはアーロットと契約しないだろう。

「憎まない。俺は一人でも多くの悪魔に生きてほしいと思っている。この先も多くの悪魔をこの手で斬ることになる。矛盾しているのは自分でもよくわかっている。それでも俺は悪魔を見捨てたくない」

 アーロットは自分の偽らざる気持ちをイースロンに伝えた。

 アーロットの言葉を聞いてイースロンは心から安心したといった様子だ。

「よかった、あなたが優しい人で。そんなあなたを背に乗せることができる私は幸せ者ね」

 イースロンがアーロットの契約を了承した。

 向かい合う二人の間に枯茶(かれちゃ)色の魔法陣が出現する。契約の魔法陣だ。アーロットは魔法陣の中心に自身の右手を重ねて、イースロンは反対側から魔法陣の中心に自身の鼻を重ねる。

 魔法陣が強く輝き、契約が完了した。晴れて一人と一頭は互いの運命を共にする仲となったのだ。

「イースロンは悪魔を恨んでいないのか?」

 契約を終えたアーロットはイースロンにそう尋ねた。質問の意図にイースロンは気づいたのだろう。魔法で翻訳された彼女の言葉はどこか自嘲気味なものだった。

「本来ならそうするべきなんでしょうね。なんていったって悪魔は私の同胞を一頭残らず殺したのだから」

 トロワ基地でイースロンの名を聞いたときアーロットは彼女の名に聞き覚えがあった。それもそのはずイースロンの皇馬(おうま)属は騎乗用の馬の中で特に優れた存在としてその名を知らしめていた。皇馬属はその脚の速さもさることながら戦闘でも無類の強さを発揮する。イースロンはその中でも特に優秀な馬として知られていた。 

 しかしそんな皇馬属だからこそ恐禍(きょうか)の騎士団に目を付けられ一頭残らず殺されてしまった。

 イースロンが生きていたことは驚きだったが、アーロットには何より彼女が悪魔に対しての憎しみを感じさせないことのほうが驚きだった。

「一族が皆殺しにされてあそこに閉じ込められてからは、悪魔を恨まない日はなかった。でも、ある日気づいたの。そんな一生は嫌だって。だってそうでしょう、せっかくこの世界に生を受けたんだもの憎しみに支配されたまま終わるなんて勿体ないわ。それに本気でこの戦争を終わらせようと考えるならきっと憎しみに支配されちゃ駄目、そう思ったの」

「君は強いな」

 イースロンの言葉を聞いて感じた率直な感想をアーロットはそのまま口にする。

「さ、さあ乗って。早いところ出発しましょ」

 照れたイースロンは魔法で馬具を装着するとアーロットに騎乗を促す。

 特にこれ以上突っ込むことはなく、アーロットは言われた通りイースロンの背に乗る。

「目的地はロンバールだ、そこまで頼む」

「任せて、アーロット!」

 ロンバールに向けてアーロットたちは勢いよく駆け出した。

次回

頂の景色

ロンバールに向けて出発したアーロットたちが見た景色とは

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