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サイコテロ  作者: 心楽
9/39

フードの男

今日、朝から小指ぶつけました。めちゃくちゃへこみました。小指ぶつけたら何であんなにへこむんだろ?言いたい事は、そんなことじゃないや。小説に修正しなければいけない場所があり、修正しました。すいません。

「気をつけろ! 後ろだ!」

 振り返りながら叫ぶ大男の声を聞き、素早く細身の男が竜介を抱え、ドアを開け、飛び出すと同時に、後部座席の後ろのガラスが割れた。

 細身の男の頬にナイフが掠めたが、細身の男は竜介を抱えながら、ナイフを避けた。

 後輪のタイヤには、ナイフが刺さっていて、パンクしている。

 フードを被り顔が見えない男が、車から軽やかに飛び降り、ゆっくりと細身の男に近づいてくる。

「何が目的だ!」

 細身の男は竜介が逃げないように、竜介の首を左腕で軽くしめ、空いている右腕でスーツの内側のポケットから銃を取り出そうとする。

 その瞬間、フードの男が何かを投げた。

 暗闇の中で銀の閃きが迷うこと無く、銃を取り出そうとした右手に刺さる。

 細身の男は痛みで、足元に銃を取り落とした。

 急いで銃を拾おうと下を向いた時、フードの男は十数メートルはあった距離を縮め、細身の男の懐に入っていた。

 フードの男は、細身の男の足元にある銃を蹴り飛ばし、手に持ったナイフで細身の男の首を掻き切ろうとしたが、横から大男が現れ、五メートルほど吹っ飛ばされた。

 大男は素早く細長い銃を構え、フードの男に向かい狙いをつけ、フードの男が着地すると同時に引き金を引いたが、フードの男は人間離れした横っ飛びでかわした。

 フードの男が居た地面には無数の小さな穴が空いている。

(ショットガンだ。あんな物を持ってんのかよ! それにあいつ誰なんだ? 何のためにこいつらと戦おうとしているんだ? そもそも銃をかわすなんて、人間じゃないだろ)

 混乱しながらも、竜介は今の状況を必死に理解しようとしている。

 フードの男は体制を立て直し、ナイフを両手に持って構え、体を左右に小刻みに動かしている。

 大男がショットガンの引き金に力を込めた瞬間、フードの男はまたもや人間離れした横っ飛びでかわしながら、大男にナイフを投げつけ、茂みの中に入った。

 大男は自分の左胸に狙いをつけ、飛んでくるナイフの横っ腹をショットガンで叩きつけ、茂みから何かが駆けてくる音で位置を察知し、茂みに狙いをつけ何発もショットガンを放つが、音は止まらない。

 しかし、大男が自分の横の茂みに、ショットガンを放った瞬間音は止まった。

 大男は用心深いのか、ショットガンを何発も茂みに向かい撃った後、何の音もしなくなったのを確認する。

 そして、自分たちをナイフだけで殺そうとした哀れな男の顔を見ようと茂みに近づいた時、茂みの近くの木から一つの影が飛び出した。

 大男は上空にある影、フードの男に向かい銃口を向けるが、フードの男は銃を蹴り飛ばし、手に持つ銀の閃きを、自分を殺したと思い込んだ哀れな大男の左胸に広がるスーツの暗闇に優しく溶け込ませていった。

 大男は薄れる意識の中で信じられなかった。

 身体能力が強化された自分の耳にも聞こえないように木に登り、数々の人間と戦い、時には超能力者と対峙したことのある自分に悟られないように、気配を消し、達人さながらの技を見せ、今、自分の左胸にナイフを突き立てている男の、フードから見えたその顔がまだ少年であることに。

 細身の男はその光景を見ながら呆然としていた。

 大男は黒犬の中でも戦闘能力だけを取れば、四百人中上位五十に入るぐらいだった。

 それ故に信じられなかった。

 ナイフしか持たない男に負けるなど。

 竜介は細身の男の腕の力が弱まっているのを感じた。

 今なら逃げられる、そう判断したのか竜介は、自分より少し背の高い細身の男の顎に頭突きを食らわせた。

 不意を突いたその一撃に、男は竜介の首に回していた腕を放してしまった。

 竜介は全力で駆け出した。

 この異常な一日から逃げるかのように。 細身の男はすぐに竜介を追おうとしたが止めた。

 大男からナイフを抜き終えたフードの男がこちらを向いてるのに気付いたからだ。

 細身の男は竜介ならばすぐに追いつけると考え、全ての身体器官、髪の毛の先から足の爪に至るまで、全てをフードの男を殺す為に費やすことにした。

 雲に隠れていた月がその姿を現した時、二つの影は駆け出した。

 その頃、竜介は走っていた。

 何故、何故自分がこんな目にあわなければならないか、他の誰かじゃダメだったのか、他より得意なことがない自分に何故、何故。

 世の中の不条理を感じながら、つまらぬ運命のいたづらを恨みながら、彼は叫ぶ。

「何で……何でこんなことになっちゃったんだよ!」 叫んでも、叫んでも、彼の動き出した運命の歯車は止まらない。










 空き地で竜介が、肩で息をしながら、何とか腕に掛けられた手錠を外そうとしていた。

 地面に置いた石に、手錠を何度もぶつけるが、ひびすら入らない。

 竜介が一息つこうと空き地の土管に背を預けた時、土管の上から影が降りている。

 竜介がゆっくりと後ろを向くと、月光を背にフードの男が土管の上に立っていた。

 竜介が慌てて距離を取って逃げようとすると、あまりにも気楽な声を男はフードの中から出した。

「待てよ。俺だよ、俺。分かんね?」

 その聞き覚えがある声に竜介は足を止めた。

「まさか……光希?」

「そうそう。何だ分かってんじゃん。あいつらさー、銃持って少し運動神経いいからって、ナイフしか持たない俺を舐めすぎだね! と・く・に、あの鯨見たいにデケー奴。えーと、つまりあれだ、大海の鯨、陸の毒蜂を知らず! あっ、毒蜂って俺のことね」

 フードを取り、ニヤリと笑った、水谷光希のその口にある八重歯を見ながら、竜介は少しだけ、ほんの少しだけ、平和な日常を取りもどした気がした。

 そして気がつけば、いつもの言葉を言い、自然と笑っていた。

「うまくねーよ」

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