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サイコテロ  作者: 心楽
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書庫の秘密

GWということもあり、うちの学校の親愛なる先生方が、大量の宿題を出しやがりまして、更新遅れました。でも、言い訳はいけませんよね? 更新遅れてすいませんでした。こんな僕の作品を読んでくれて感謝します。

 制服を着て、肩から鞄を掛けた、少年が一人歩いている。

 ふぁ〜と欠伸をし、少し長い髪を掻いている。

 至って平凡な顔つきに、平凡な体つきの少年、伊藤竜介いとうりゅうすけは、通学中だ。

 竜介の後ろから、金髪の髪に、カチューシャをつけ、八重歯が目立つ、少し背が低い不良っぽい少年が、手を振り走ってくる。

「竜ちゃ〜ん、待ってくれ〜、君の愛しの水谷光希みずたにみつきが、走ってるんだぞ〜」

「ウザッ!」

 竜介は、水谷の姿を見ると走りだした。

「なんで逃げるんだよ、待ってくれ竜ちゃん、竜くん竜さん、竜介様〜」

 水谷がスピードを上げると、すぐに竜介に追い付き竜介の背中に飛び乗った。

「重い! 降りろ!」

 竜介が振り払うと、水谷は軽やかに飛び降りた。

「おはよう、竜介」

 さわやかに挨拶する水谷。

「おはよう、光希」

 対象的に沈んだ顔をする竜介。

「何で逃げるんだよ」

「キモかったから」

 すっぱり竜介は言ったが、水谷は気にも止めてない。

「超絶平凡な竜介が、走ったところで、平凡な速さだからな〜、すぐ追い付くな」

「うるせー」

「まぁ、あれだ、一兎を追う者は一兎を得る」

 ニヤリと水谷は笑う。

「うまくねーよ、んなこと言ってないで学校行くぞ」

 竜介は早足になりながら言った。

「へいへい」

 水谷は竜介を少し走って、追いつくと足並みを合わせて、学校に行った。






「やーーーっと、終わったな終業式、校長話し長すぎだろ」

 終業式が終わり、教室に帰るやいなや、水谷は話し始めた。

「確かに長かったな」

 適当に返事をしながら、竜介は席に座った。

 教室には、明日から夏休みということで、浮かれて騒いでいる生徒がほとんどの中、竜介の前に座っている男子生徒は、静かに本を読んでいる。

 男子生徒は、スラッと伸びた手足に、肩まである黒髪を侍のようにくくって、真っ白な肌で、不思議な妖艶さまで漂わす、美しい顔をしている。

 竜介は男子生徒にも話しかける。

「拓真、竜介、明日いっしょに遊ぼうぜ」

 拓真と呼ばれた男子生徒、馬島拓真まじまたくやは本から目を離し、竜介を見る。

「悪いけど、僕は明日からばあちゃんの家に行かないといけないから」

「そっか残念だな〜、竜介は?」

「拓真が行かないなら、俺も行かない」

「何でそうなるんだよ!」

「お前と二人は嫌だからだよ!」

 二人のこんなやり取り、日常茶飯事なのだろうか、馬島は楽しそうに二人のやり取りを見ている。

「おーい、席に座れ、配るもんいっぱいあるからなー」

 そう言ってこのクラスの教師が入ってきて、竜介たちの雑談は終わった。

「じゃあ、お決まりの夏休みの心得を配るぞー」

 教師は、一番前の席にプリントを配りながら言う。

 生徒からは、またかよ〜やらこんなもん意味ね〜よ、等々、文句が飛びかう。

 一通り作業を終えた後、学校を後にし、三人はいっしょに帰っている。

「そーいやーさ、夏休みの心得って、何で十五年前に突然実行されたんだっけ?」

 馬島は答える。

「確か、十五年前に無差別連続通り魔殺人事件が起こったからだろ? 僕たちがまだ一、二歳の時だから、詳しくは知らないが一種の都市伝説にもなってる話だったはずだ」

「あっ、俺も知ってるわ、それ、確かカマイタチって呼ばれる通り魔で殺す相手に質問してから殺すんだよな、最後は警察に追い詰められて、自分の胸に使っていた凶器を突き刺して、ビルの上から飛び降りた。けど、死体は見つから無かったていう」

 水谷は少し興奮気味に話す竜介を見ながら言う。

「竜介って、そういう都市伝説とか無駄知識覚えるの好きだよな」

「てめー」

 竜介は水谷を殴ろうとするが、水谷はすぐに距離をとると、走り出しながら言う。

「鬼の顔は一度もだめか」

「うまくねーよ」

 竜介も水谷を追いかけながら言った。

 馬島はそんな二人を見ながら楽しそうに笑っている。

 そんな他愛もない会話をしながら、三人は家に帰っていった。






「ただいまー」

 竜介は玄関に入りながら言ってみるが、誰もいないようだ。

 それもそのはず、竜介が聞いた話では、父は警察庁に勤めていて、めったに帰って来ず、母は竜介が物心つく前に亡くなっている。 家に誰もいないのに挨拶をするのは、彼の儀礼的なものだ。

 運動神経、勉強、全てにいたって平凡な彼も趣味ぐらいはあった。

 それは、父の書庫にある本をひたすら読むことだ。

 竜介は鞄をリビングに投げ込むと、父の書庫に向かい、いつも通り本を読み始めた。

 ゆうに六時間以上はたっただろうか、竜介が部屋に掛かっている時計を見ると、時計の針は八時を指していた。

 書庫には窓がなく時間が経つのを忘れてしまいそうだ。

 時計を見て、竜介はお腹が空いているのに気付き、本を本棚に戻し、書庫から立ち去ろうとした時、立ち眩みがして壁に手をついた。

 すると、壁から乾いた音が鳴った。

 その音が気になった竜介は壁の至るところを叩いてみた。

 乾いた音は、ちょうどドア一つ分ぐらいの範囲から鳴っていることが分かり、竜介はその壁に向かいタックルしたが、壁に跳ね返された。

 何にもないのかよ、と少し不満に思いながら、書庫から出ようとした時、竜介の後ろから石のドアが開くような音がし、振り返ってみると壁は無くなり、代わりに下に向かう階段があった。

 少しの恐怖と不安があったものの、好奇心が勝ってしまい、竜介はその階段を降りていった……降りてしまった。

 階段の奥にはドアがあり、竜介はゆっくりとドアノブを回し、部屋に入っていった。

 部屋を見渡してみると、書庫と部屋の大きさは変わらず、左右の壁もただのコンクリートの壁で問題無いが、前方の本が置かれた長机のその先の壁には色々な写真や記事、二十人ほどの顔写真等で埋めつくされている。

 その異様な雰囲気に、竜介は思わず口が開く。

「何だよこれ」

 まだ好奇心が勝っているのか、竜介は机の上にある本を手に取り、読んでみた。

 最初は普通の日記だった。

 しかし、竜介が適当にめくっていると恐ろしい単語が目に入った。

『私は今日、人間の脳を食べた。私は脳を食べることで持ち主の記憶や経験を全てものにで』

 そこまで読むと、竜介は走りだした。

(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい! 父さんは人間じゃないのかよ!? 何か知らないけど、とにかくヤバい!ここから逃げないと)

 階段を駆け上がり、書庫を飛び出し、家を出た。

 竜介は公園のベンチに座っていた。

 もう十一時を回っており、月は雲で隠れあたりは真っ暗で、この時間に外に出る人はいない。

 竜介はベンチにずっと座り考えこんでいた。

(あれは夢だ。あれは夢だ。夢に違いない。そうだ夢しかあり得ないじゃないか! 父さんは警視庁の上層部の人間だし! 夢だ夢、家に帰ろう!)

 竜介がベンチから立ち上がり、公園を出ようとした時、黒塗りの車が目の前に止まり、黒いスーツを着た細身の男と体格のいい大男が出てきた。

「伊藤竜介君だね? 手を前に出してくれるかな?」

 細身の男にいきなり声をかけられ、竜介は何が何だか分からないまま、手を前に出した。

 細身の男は、竜介の手に手錠を掛けた。

 毎日煙草を吸ってる人が煙草を出すように、毎日料理を作る人が料理を作るように、そのあまりにも自然な動きに竜介は状況を理解できないでいた。

 細身の男が手錠の鎖を持って、車の後部座席に竜介を入れようとした時、竜介の頭はフル回転し始めた。

 逃げようとしたが、時すでに遅し、乱暴に車の後部座席に入れられ、隣に細身の男が座り、体格のいい男が車を発車させた。

「何故、君が捕まったのか解るかい?」

 竜介が心当たりがあるのは唯一つ、父の部屋。

「思い当たる節があるようだな」

 細身の男は竜介を見て続ける。

「逃げたりしてみろ、その場で君を殺す」

 平然と細身の男は言い放った。

「そんなことをしたら警察に捕まるぞ」

 竜介は力強く答えるつもりだったが、声が震えていた。

「警察に捕まる事はない。私たちは国直属の組織だからね」

「誰が俺を殺せと命令したんだ」

「それは……」

 竜介は細身の男がゆっくりと言葉を紡ぎだす口を見ている。

 背中や脇に嫌な汗が広がる。

 竜介の最悪の仮定が現実となっていく。

 思わず耳を塞ぎたくなったが、細身の男が手錠の鎖を持っているので、塞げない。

 あまりの絶望に声が出ず、心の中で、竜介は叫んだ。

(止めろ! それ以上言うな!)

「伊藤龍哉。君のお父さんだ」

 少しの沈黙が流れる。

 その時、後部座席の下から大きな破裂音が鳴り響くと共に、車は制御を失い、ガードレールにぶつかり止まった。

「どうしたんだ!?」

 細身の男が大男に聞くが、大男も状況が分からないようだ。

 大男が状況を確認しようとドアを開けようとした時、バックミラーに映るトランクの上に乗って、後部座席の細身の男に向かい、ナイフを降り下ろそうとする人影を見た。

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